11・階層ボス。
勇者・ガングはあっさりアリィの同行を認めた。
一応、「見学だ!」と念押しはしてたけどね。
コイツに甘い顔をするとつけあがるだけだと思うんだけど。
このダンジョンは特に名前が付いてる訳じゃあないけれど場所が田舎のくせに
王家の直轄地なので「王領のダンジョン」と呼ばれている。
このダンジョンがあるから直轄地にしたんだろう。
ダンジョンは儲けの元だからな。
第一層に居るのはスライムだった。
第五層くらいまでいろんな種類のスライムが入れ替わり立ち替わり現れる。
スライムはトラウマだ。
パーティの仲間達とオレの全身の毛という毛の全てを奪っていったんだ。
もっともアレは巨大なヤツではあったんだけどね。
「あれほどの大きさのヤツはココに出たことは無い。
ココに出るのは大きくても犬くらいの大きさだな。
まあ端から叩いてトラウマの解消にでも使ったらいいさ」
ガングはアイテムボックスから何やら白い粉をとりだしてスライムに掛けた。
聞けばあの巨大スライムに掛けて退治したんだと言う。
一体なんなんだ? と思ったらタダの「塩」だそうだ。
『ケンジのヤツがなぜか大量に持ってたんだよ。
試しに振りかけてみたらあっという間に退治できちまったんだ。
だからちょっと普通のヤツにも効くかどうか試してみたくなったんだ」
うん・・効いたよ。
ほとんどの種類のスライムに効果があったね。
効かないヤツもいたけどソレラはメタル系のスライムだった。
ドロップ品が良いので皆が狙ったりするけど逃げ足の速いヤツが多い。
塩が効かないなら一体何が効くんだろう?
まあ、オレはどんな種類でも打撃一発だけなんだけどさ。
アリィは見学のはずだったのに魔法でメタルスライムを押さえ込んでたりする。
ドロップ品が希少金属だったりするので小遣い稼ぎがしたくなったらしい。
「手は出してないから良いでしょ。
スライムに魔法を掛けたくらいで目くじら立てないでほしいなぁ。
ドロップ品は山分けでいいからちょっとくらい大目にみてよ」
トドメを刺してるのはオレとレオなんだけど・・
まあ、まだこれくらいならワガママと言うほどでも無い。
それにしても見事にスライムだけしか出て来ないな。
他の魔物はどうしたんだよ。
「スタンピードの前は五階ごとくらい同じ系統の魔物が出てたんだ。
ソレはどうやら変わってないみたいだな。
でも前は最初はゴブリンだった。
スライムは五階以降だったんだが。
五階ごとに階層のボスが出てくる仕掛けだったな。
転移陣は階層ボスの部屋の先の小部屋だった。
全体の造りは変わっていないみたいだな」
ということはゴブリンとスライムが入れ替わっただけ・・なのか?
まあ、これから階層ボスの部屋に突入だからスグに分かるだろう。
スライムのボスか・・でっかいヤツでなければドンと来い! だな。
でも階層ボスはそのでっかいスライムだったんです。
「大きいのは出ない」って言ったよな? 言ったよな?
嘆いても皆視線をそらしてました。
頑張れ! ギル君! ココでトラウマを克服するんだ!
絶好の機会だと思うんだけどねぇ(笑。)