10・ダンジョン。
勇者・ガングから呼び出された。
「田舎の闘技場のあるアノ街に行くから付いて来い!」
と言われた。
スタンピードの後で閉じていたダンジョンが開いたんだそうだ。
ガングは何度もあのダンジョンをクリアしている。
もっともダンジョンコアには手を出していない。
ダンジョンが無くなると困る連中は多いからな。
勝手に壊すと罪になる国まであるそうだ。
「スタンピードが済んだ後のダンジョンはオレも初めてだ。
お前もレオ(ひねた元兵士)も結構レベルが上がって来たからな。
実戦を試してみても良い頃だと思うゾ」
あー・・勇者の思ってる「実戦」って多分オレの思ってるのとは
段違いなんだろうってコトは分かる。
アリィと一緒にギルドの依頼を受けてるんだよ。
コイツにも話してあるから知ってるのにソレは「実戦」には入ってないようだ。
「アリィと一緒に依頼を受けてたようだけどアレが一緒じゃあ思いっきりって
訳にゃあいかないだろ?。
ダンジョンは階層で出てくるヤツのレベルが違うから自分の実力を見極めるのには
丁度良いからな。
ギルドの認定レベルと違うなんてコトはよくあることだしな」
なんだかんだと言いながらオレ達に拒否権は無い。
無いと言っていい。
ギルマスでさえ拒否してる所を見たことが無いもんな。
居候に近いオレなんかにそんなもんが有る訳もないやな。
神殿の転移陣を使って闘技場の街まで飛んだ。
貴族の方々でもオイソレと使わせて貰えないというのに勇者は気軽に
使いまくっている。
魔力も普通の魔法なんかより沢山使うはずなんだけど・・
「あー・・気にしなくてイイですよ。
勇者は魔力量が多いですからタップリ補充させてもらってます。
魔石とかの寄進も過分なくらいしてくれてますしね。
まあ、勇者でなくても寄進は受け付けてます。
遠慮無くして頂いて良いですよ。(笑。)」
この神官は魔王討伐の時の勇者パーティのメンバーだそうだ。
一見強そうには見えないけど勇者と手合わせしてたからな。
オレなんか足下にも及ばない実力者だってのは分かったよ。
・・や・・やっぱりちょっとは寄進をしてた方が良さそうな気がする・・
レオは元は王都の警備兵だったそうだ。
なにやらやらかして闘技場のある田舎のアノ街に飛ばされたらしい。
アノ街でも上司ともめてクビになった。
勇者・ケンジはその時に知り合ったようで仲良く王都まで旅をしたそうだ。
今は勇者・ガングの従者ということになっている。
実力はオレより遙かに強いし従者のくせにガングに遠慮もなにも無いヤツだ。
名目は従者でも対等な仲間扱いだな。
オレはまだまだ居候な立場でしかないんだがアリィ無しでもレオと同じ扱いに
してくれてるようでちょっと嬉しかった。
いざダンジョンに突入! となったら「おんぶオバケ」が飛んできた。
コイツはオレが何処にいるのか完全に把握してるらしい。
「オレ抜きでダンジョンに行くなんてズルイ!
見学でイイから連れてってよ!
前世だってダンジョンはほんの少ししか経験無かったんだよ。
連れてってくれないなら泣くよ!」
どうせウソ泣きのくせに!
でもコイツが泣くとなぜかみんな本気だと思っちゃうんだよなぁ。
ガング・・なんとかしてくれよぉ・・