四話
「き、君は…?」
「あなた…は?」
男女がそう言うので私は答えた。小声で。人が沢山いたのであまり堂々と貴族ですとは言わない方がいいかなと思ったのだ。まあ、なんとなくわかる人もいるかもしれないが。
「私はベルティア。とにかく家に来なさい」
「え?」
二人は驚いているがそんな事は知ったことではない。
私ベルティアは強引なんだよ!
「親はいないのよね?」
念の為確認する。聞くのは酷かもしれないがいたら誘拐犯になってしまう。
「死んじゃった」
「私とレイだけ生き残っちゃった」
「っ!そんな悲しいこと言わないで!」
とても悲しい言葉が聞こえてきてつい怒ってしまったがこの二人にとってはそれほど辛かったのだろう。
「ごめんなさい、あなた達のことよく知らないのに怒鳴ってしまって。でもね、そんな事言わないで」
私と同じくらいの子どもがそんな事を言う事が悲しくて泣きそうになる。
この二人だけでも幸せになれるように。自己満足かもしれない。それでもそう思わずにはいられなかった。
私は二人をそっと抱き締めた。
「ティア…」
父様がやってきて私を呼ぶ。
私は父様の目を真っ直ぐ見て言った。
「この二人が私の元で働く許可をください」
「ティア…」
「全ての人にこんな事は出来ないのはわかっています。でもせめてこの二人だけでも」
私は本気だと訴えた。いいと言うまでここから動かない。そんなつもりで父様を見る。
しばらくするとため息を吐きながら一言
「わかったよ、ティアの思うようにしてみなさい」
仕方ないと言いながら許可してくれた。意外とすんなり許可が出て拍子抜けしたが。まあ、いいなら気が変わらぬうちにそうしてしまおう。
「ありがとうございます!」
私はお礼を言って二人に行きましょうと促した。
「ティアは可愛いからね、私は娘には甘いんだ。父様大好き!と言ってくれてもいいんだよ」
横で場の空気を壊す発言をしている父様は無視した。