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三十一話



次の日レイに教室まで送ってもらう。


「勉強についていけるかな」

「わからないところがあれば是非僕に聞いてくださいね。僕にですよ」


何故だかすごい念をおされた。しかし昨日寮の食堂で聞いたところによるとレイもルミも成績上位らしい。やはりな。

特にレイは貴族の一員となったことで狙っている令嬢もかなりいるとのことだ。

しかし、レイ本人は女の子たちのアプローチを軽く受け流しているそうだが。

冷たくはないが一定以上は踏み込んで来ないし踏み込ませない。誰にでも平等に接してきたらしい。

そのため入学式の日私に親密そうに笑いかけているレイを見たときは誰もが驚いたそうだ。

私とレイ、ルミの関係を知った者はそれなら仕方がないと納得した者、それでもあんなにレイ様に近付いてと嫉妬するもので分かれたそうだが。

まあ、そんなレイに教えてもらうのは怖いが家にいた時もレイの教え方は上手かった。教えてもらいたいが女の子たちが怖い。

しかしなんだろう…。レイは断らないですよねと表情で語っている。怖い。


「わかりましたか」

「わ、わかりました」


最近のレイには逆らえない、何故だ。

教室に着くとレイはではまたと自分の教室に戻って行く。

レイを見た女生徒は頬を赤く染めていた。本当に人気なんだなと改めて思う。そしてその後にくる視線が怖い。気が滅入りそう。

自分の席に着くと手紙が置いてあった。

こ、これはラブレターか。前世合わせて初のラブレターだろうかとドキドキしながら見ると“放課後個室サロンにて待つ。一人で来るべし。部屋番号5。セルフィーナ・ファイス”

果たし状だろうか。見なかったことにしたいのだが視線を感じる。そちらを見てみると手紙の主のセルフィーナ・ファイス嬢が来いよとガンを飛ばしていたので行くしかないだろう。

放課後レイが来てくれた。


「ごめん!今日クラスご令嬢とお茶をするの。迎えに来てくれたのに本当にごめん、じゃあ!」

「ちょっ、ベルティア様」


早口でまくしたてて口を挟む隙を与えない。そしてポカンとしたレイを放置して急いでサロンへ向かった。少し道に迷ったのは内緒だ。

レイを残して来たのは気になるが一人で来いと書いてあったので仕方がない。

目的の部屋に行くと入った良いと言われたので入室する。




「待っていたわ、ベルティア・リズナール!単刀直入に言うわ。あなた前世の記憶があるんじゃない」

「え…」


前世…いや、あるけどそんな事を聞くと言う事はもしかして


「あなたもあるの?」

「あるわよ!というかあなたもってことはやっぱりあるのね」


すごい、初めて会った。いや、そう何人もいるわけないか。いたら混沌と化しているだろう。


「すごい、私日本人だったの」


前世仲間がいたことに感動するし親しみを覚えるがどこの人だったのだろうと考えを巡らせているとセルフィーナ様はダン!と机を叩いた。びっくりした。


「そんな事をどうでもいいのよ!あなたそれよりどういうつもりなの」

「な、何がでしょう…」


何かとてつもなく怒っている。しかし怒らせる事をしただろうかと胸に手を当て考えてみるが心当たりがない。


「とぼけないでよ!ここが“光の乙女〜貴方とともに〜”の世界だと分かっているんでしょう」


「え、光の…?」

「光の乙女〜貴方とともに〜よ!」


本当にわからない。何だそれは、聞いたことすらないんだけど。


「あの、本当にわかりません」

「じゃあ何!?偶然ストーリーを変えたって事」


ストーリーを変えたって何の話をしているのかさっぱりわからない。あれかここは何かのストーリーの中的な…。そういう事ならセルフィーナ様が言ってる事が何となく分かってくる。


「何かの世界だったんでしょうか」

「乙女ゲームよ」


乙女ゲームでしたか、そうですか。本当にそういう展開だったのか。私も前世で乙女ゲームはやってはいたがその、光の乙女〜貴方とともに〜は知らない。そう話せば驚いた顔をした後信じられないという。


「あんなに有名だったのに…20XX年に大ヒットしたのよ」


20XX年か前世を思い出してみる。うーん。


「私その辺生きてた記憶ないかも」

「…あなたが亡くなった後に出たのかしら」

「それでどういう話なんですか、ヒロインは?」


まあ、タイトルからしてヒロインの予想はつくが一応聞いておく。きっとあの子だろう。


「ルミよ」

「ですよね」


予想通りの回答ありがとうございます。光のとか言っているのでそれしかないと思ったが。じゃあ私はなんなんだろう。


「私たちはモブよ。モブ」


心を読めるのか。そういった魔法はあっただろうかと驚く私に呆れたようにセルフィーナ様が言う。


「全部顔に出てるわよ」


左様でございましたか。あれそれにしてもストーリーを変えたとか言っていなかったか?もしや私…


「ルミの恋路邪魔しちゃった!?だから昔馬に蹴られそうになったの」


あれはそう言う事だったのか、納得だ。しかしあの時はレイが助けてくれたから良かったけど。もしかしたらまた蹴られる機会があるかもしれないので馬には気をつけておこう。

それはそうとレイは。


「あの、レイは?双子だから攻略対象ではないですよね」


もしそうだったら年齢制限がかかりそうだ。それか家庭用ゲーム機じゃなくてPCゲームとかになるのかな。

レイはお助けキャラとかかな。


「レイは悪役よ」

「えっ」



その言葉を理解するのに少し時間がかかった。

レイが悪役ってどう言う事だとセルフィーナ様に詰め寄る。


「あのね…」




レイとルミは親を亡くし野垂れ死にそうになっているところを孤児院の人間に保護される。しばらくするとルミは商人の家にレイは貴族の家に引き取られる。ルミは新しい家族の手伝いをしながらもとても大切にされ幸せに暮らす事が出来た。

逆にレイは貴族の家という事で手伝いなどはしなくてよかった。


「レイが悪役になる要素あります?というより私が手を貸さなくても良かった!?」


どちらも幸せそうだが。まあ、離れ離れになってしまったのは悲しいかもしれないが。


「話は最後まで聞きなさいよ!」

「すみません」



でもレイを引き取った当主の男は美少年、美青年が大好きだった。レイを引き取ったのも自分の欲求を満たすためだった。最初こそ親切にされたけどだんだん色々な事をされたそうだ。あまり言えないような事を。

レイは絶望した。でも、魔力鑑定で闇の魔力があると分かって当主も怯えて近付かなくなった。しかしレイの美しさを諦めきれなかった。そして妹のルミを人質にとった。

言うことを聞かなければルミの家ごとルミを潰すと。そこからまた地獄が始まった。

そうして学園に入る歳になり逃げ込むように入学した。しかしそこでも闇の魔力を持っているということで孤立する。

妹のルミも光の魔力を持っていたという事で入学していたことを知り会いに行くのだがそこで見たものは、自分とは全然違う生活を送っていたルミだった。

幸せそうに笑い友人に囲まれ輝いていた。

そこでレイはルミを憎んでしまった。自分が守ってやったのに、自分ばかり酷い目にあっている。許せなかった。

そしてルミは攻略対象達と近づきそれぞれの悩みとぶつかりながらも幸せになっていく、それを邪魔して最終的に死んでしまう。

もちろんレイがいる事を知ったルミはレイに歩み寄ろうと必死にはなったのだが届かなかった。


「…っ」


話を聞いて涙が頬を伝っていた。

レイがそんな目に合うなんて冗談じゃない。ルミの恋は邪魔しちゃったかもしれないがレイの悲惨な運命は変えられた様だ。

それにルミは可愛くて優しくてすごく良い子だ。私がストーリーを変えてしまったとしてもルミなら大丈夫だと自信を持って言えるような人だ。でもストーリー通りになってしまったレイはどうすることも出来ないだろう。

私は前世の記憶を思い出しけど全然役に立っていなかったしなんで思い出したのかも分からなかった。

でもあの時思い出したから街に出かけようと思った。ちゃんと意味はあったのだろうか、正解はわからないが良かったと思う。


「よかった…レイ」


私が号泣しているとセルフィーナ様が空気を読まずに口を開いた。


「でね、せっかく記憶が戻ったわけだから私はルミが選ばなかった攻略対象を狙おうと思ったわけ」


そういう話でしたか。涙をなんとか引っ込めてセルフィーナ様に聞く。


「ルミは誰のルートに?」


そもそも攻略対象は誰でいつから物語が始まるのか。答えは生徒会長などの生徒会役員の一部プラス担任の先生と私たちの学年の男の子らしい。物語開始は今年から。

出会い編がありそこから個別ルートに入るらしいが私のせいでどうなるかわからないという事だ。


「一応生スチルは見られるかなと思ってルミの観察はしておいたわ」


ルミには背後には気をつけろと言った方がいいだろうか。ある意味ストーカーである。


「出会い編はちゃんと起こっていたわ!眼福だった」

「それは良かったです」


ルミも攻略対象達も綺麗だから少し私も見てみたかったなと思わなくもなかったがこれ以上うっかり邪魔したくないのでやめておく。

それで選ばれなかった人をセルフィーナ様が攻略すると…肉食系だね。


「セルフィーナ様は誰狙いなのですか」

「レイよ」

「え、レイ?」


レイは攻略対象じゃないのではなかったか。私が疑問に思っているとセルフィーナ様は人差し指を立てて言う。


「レイはね悪役ではあったけど人気キャラだったんだのよ、レイが最推しなんて人もいたわ」


まさにあなたがそうではないのかと思った。

まあ、レイって見た目すごく良いしも性格も穏やかだしそりゃ人気にもなるよね。

レイの悪役になった経緯は同情するし、子どもながらに必死にルミを守ろうとした姿に心打たれたそうだ。


「ファンはみな製作者にレイを幸せにしてほしいと問い合わせたわ」

「幸せにしてもらえたんですか」


ここは非常に気になる所だ。レイが不幸だけの物語なんていやだ。レイはとっても優しいのだ。


「ファンディスクで和解するストーリーも追加されたわ」

「本当!よかった」


和解の言葉にホッとしていた私にセルフィーナ様は悲しそうにする。


「でも、死んじゃうけどね」

「何で!」

「ルミを苦しめようと魔物を使おうとして用意するんだけどね。使う前になんとか仲直りしたんだけど、魔物が暴走してね」


セルフィーナ様は下を向いてポツリと言った。


「かばって死んじゃうの」


そのシーンやばくてねと興奮しだした。今までごめん。ルミが羨ましかったんだ。でも、本当は妹の君が大好きだった。本当にごめんね。

その時のレイのなんと尊きことか!初めて見る笑顔にみんな心撃ち抜かれたそうだ。


「でも心は救われたかもしれないけど」


死んじゃったらやっぱり悲しいよ。落ち込む私にセルフィーナ様はふふと笑う。


「だからこの世界では幸せになってもらうわ!いえ、私がするのよ!」

「えっ」

「私もレイに近付けて一石二鳥よ!」


まあ、たしかに好きな人が出来てその人と一緒になれたら幸せになれるかもしれない。でも、それをするのは…


「ということで協力よろしく!」

「でも…」

「でもじゃない!あなたはレイを悪役になることを防いだ。それがあなたの役目だったのよ!そして私がレイを幸せにするの!」


だから私は記憶を思い出したんだわと一人で盛り上がるセルフィーナ様に押し切られ協力する事になってしまった。


「そうね、まずは寮への行き帰り。私も一緒に行くわ。仲良くなってきたらあなたは遠慮してね」

「は、はい」


モヤモヤするけどレイが幸せになるための手助けならいくらでもしたい一瞬抱いた感情を無視して協力すると決意した。

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