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二十七話 レイ



「さて、もうすぐ夜会が始まるがレイ頼んだよ。陛下は私の大切な幼なじみでね。仕える前に大切な友人なのだよ」

「ちなみに俺の母上は陛下の妹なんだ。王太子のヨハンは俺の従兄弟で仲が良いんだよ」

「そうなんですか」


重要な情報ではあるがさほど興味は湧かない。僕にとってはベルティア様以外どうでもいいのだ。

もちろん肉親であるルミも大切だ。


「だからさ、お前が活躍した場合は俺と一緒にヨハンを支えていけるようになればなって思ってるんだけど」

「え、いやだよ」


即答すればエドは落ち込んだ様子を見せる。するとカルロスが口を挟んできた。


「エド…リズナール家にお前と同じくらいの…」

「ちょっと、そこは話には入っていないじゃないですか」

「いやいや、王太子の臣下になるっていうのは君にはいい話だと思うけどね」


それはそうかも知れないが、そもそも僕は平民だ。平民である人間が王太子の臣下にはなれないだろう。指摘すればまたいやな笑いをする。


「だからこその今日の夜会なのだよ」


口に指を当てて片目を瞑る。行動一つ一つに腹が立つ。


「君が今日、良い仕事をすれば我がナルファス家の養子にしてあげよう」

「は?」

「俺の兄弟になるわけだね」


驚いて呆然と立ち尽くししている僕をよそに話を続けるカルロス。


「その後君をリズナール家のベルティア嬢の婚約者にしてあげようかなと思ってね」


陛下にも頼んで断れないようにしてあげようと付け加えた。

ベルティア様が僕の婚約者に、でも…


「僕はベルティア様の心は自分で手に入れたい。それに養子になったらベルティア様に簡単に会えなくなる」


そんな形だけベルティア様を手に入れるという事はしたくない。そんな事ではベルティア様を本当の意味で手に入れたことにはならないだろう。僕は心から全て自分だけに向けたいのだ。もし、ベルティア様がほかの男を選んでしまったら何をするかわからないが…。

それにベルティア様に簡単に会えなくなるのは無理だ。今でもかなりきついのに。


「ははは。ではこうしようか。君が学園に入ると同時に養子に入ってもらう」


学園では寮生活になるのでどのみち簡単には会えなくなる。そして在学中にベルティア様を自分のものにしろということか。


「それに君の力が本物なら他の家には渡したくないのだよ」


条件は悪くないはずだよと僕をみる。

学園に入った最初の一年間はほとんどベルティア様に会えないだろう。彼女は一つ下の学年になるから。それなのに長期休暇に帰れなくなるのは辛い。でもベルティア様を手にするためにはそこそこの地位も必要だ。多少の我慢も必要だろう。

ならば…


「わかりました。その話お受けします」


利用できるものは利用しなくては。


「それでいい。君の欲望に忠実な所嫌いではないよ」


話は成立した。これから貴族としての振る舞いや常識なども学ばなければならないだろうと覚悟した。


「でもまあ、レイが上手くやったらの話だけどね」

そうエドが言ったが問題ない

「大丈夫だよ。上手くやるから」


僕は笑顔で答えた。





結果からすると成功した。

僕はカルロスの側で陛下の元にやってくる人間に魔法で探知していった。数名引っかかるものが見つかった。顔と名前は事前に覚えさせられていたのですぐに一致する。

この人間は悪意を、この人間はやましい心を。

そう後からカルロスに報告する。

後日それらの人間を注意していたらやはり王家を陥れる計画書が見つかったりと悪業が発見された。


「良くやったね、レイ」

「すごいよ」


カルロスとエドが賞賛の声を口にする。

まあ、僕は探知しただけなのでそれを参考に悪事を見つけ出すカルロスもすごいと素直に思った。


「そんな事より家に帰してくれませんか」


それよりも早くベルティア様に会いたいという気持ちが強い。なんだかんだで1カ月は帰っていない。正直限界だ、学園に入るのさえ嫌になる。


「まあ、そう言わずに。陛下も感謝していたし今度私的に会いたいとおっしゃっていたよ」

「遠慮したいですね」

「ナルファス家の養子になったら多分会わされるけどね」


エドが恐ろしいことを言うがそうならない事を祈るばかりだ。


「これからもよろしく頼むよ、レイ」

「わかりましたよ」


カルロスに言われ嫌々ながらも頷く。きっとこれからもこの様な仕事をしなくてはならないだろう。しかしこれも良い地位を築いくためと思えば仕方がない。


「ああ。だがこの仕事については誰にも言わない様にね。知られると君がいるだけで警戒されるから」

「わかりました」


この仕事…この様な魔法の使用法は一部の人間のみに知らされる様だ。


「あと、陛下が闇の魔法も正しく使えば人々の役に立つものと明言してくれるそうだ。すぐには無理だろうが少しずつ闇の魔法についても認識が変わっていくだろう」


そしてこれから闇の魔法も必要とされる様になるだろうと断言していた。


「そうしてくださいよ」


そうすればベルティア様に迷惑もかけなくなるだろう。闇の魔力でどれだけ迷惑をかけたかわからない。でもベルティア様は迷惑とかそんな事思っていないんだろうなと思う。


「それはそうと家に帰りたいんですけど」

「わかったよ。でも仕事が出来た時はまた呼ぶからね」


仕事が来ない事を祈るばかりだ。

さあ帰ろうとしたらカルロスに止められた。

なんだよと振り返る。


「もう遅いから明日にしなさい」

「ちっ」



早くベルティア様に会いたい。


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