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二十五話 レイ



今日から城へ行く。

ベルティア様とルミに挨拶をして馬車に乗り込む。

しばらく馬車に揺られると到着したのか止まる。

城をみるととても大きかった。リズナール家も大きいがそれ以上に大きく少し立ち尽くしてしまった。

カルロスの従者が迎えにきて案内をしてくれた。


「こちらです。無礼な事をしないように…」


平民である僕を警戒しているのが相手の態度でよくわかる。


「案内ありがとうございます」


頭を下げ入室の許可を求めた。すぐに中から返事がくる。


「入るといい」


許可も出たのでさっさと入る。用事を済ませてベルティア様の元へ早く帰りたい。


「失礼します」

「おお、レイ待っていたよ」


嫌な笑顔を向けこちらにこちらにこちらに来いと手招きする。

正直行きたくないが行かないわけにもいかないので僕は嫌そうな表情を隠す事なく近づいた。


「そんな顔をしなくてもいいじゃないか。悪いようにはしないよ」

「ここに呼ばれた時点で悪いようにされてるんですけど」

「ははは、そう言わずに。私にも君と同じ歳の息子がいてね」


聞いてもいない事を話し出したカルロスに僕はため息をついた。無駄話をするくらいなら早く話を進めてほしい。


「その話必要ですか」

「ああ、いつか息子にも会ってもらいたいなと思ってね」


まだこのカルロスという男とそれほど関わった訳ではないがわかる。良い性格をしていると、もちろん悪い意味でだ。その息子だ…会いたくはない。


「さて、無駄話はこの辺にして本題に入ろうじゃないか」

「あなたが勝手に話していただけですけど」


結局無駄話だったのかとカルロスを睨む。

そんな僕を無視して続ける。


「半月後、国王主催の夜会がある。君にはそれに参加してもらいたい」

「無理ですけど」

「即答かい」

「僕は平民ですし、夜会のマナーなども多少の知識はありましても実践経験はない」


だから無理といえばカルロスは首をふる。


「普通に出席してもらうわけではない。君にはやってほしいことがあるんだ」


まあ、そうだろう。それは分かってはいた。普通に出るだけなら僕じゃなくてもいい。むしろもっと適任の者がいるはずだ。何をやらされるのかと億劫な気持ちになる。


「君は私の側に控えていればいい。もちろん多少のマナーや立ち振る舞いの訓練はしてもらうがね」


面倒なことを言うものだと嫌な顔をすればニッと笑って「そうだ…」となにか閃いたように口にする。


「私の息子とベルティア嬢は歳が近い。リズナール公爵に婚約の打診でもしようかな。息子は三人いるし誰かしら合うものがいるだろう」


それはいいと一人頷くカルロス。


「ベルティア嬢は素行に問題ありとも聞かないし」


一息ついてこちらを見る。とても嫌な顔だ。


「君には耐えられるのかい?ベルティア嬢が他の人間のものになることが」


腹が立つ、分かって言っているに違いない。

そんな事耐えられるはずがない。ベルティア様が他の誰かのものになる、想像しただけで腸が煮えくり返る。

僕は彼女の全てを自分のものにしたい。他の誰かに渡すなんて無理だ…そう思ってしまった。そう気づいたら手に入れたい、他の誰にも渡したくないそんな欲望でいっぱいになっていた。

いや、最初は側にいられるだけでいいと思っていた。いや、隣に立つ事など無理だと諦めていた。

だが…


「約束が違うじゃないですか」


この男が僕のそんなドロドロした感情を、彼女を手に入れたいという欲望を表に出した。





それに…

君が手を貸せばベルティア嬢の隣に立てる資格を与えようじゃないか。欲しいのだろう、彼女が。私にはそれができる…

あの時耳打ちされた言葉…。

僕は迷った。彼女にこんなにも黒くて重い感情をぶつけてもいいのか。

でもすぐにベルティア様の笑った顔が浮かんで我慢できなかった。

ベルティア様を自分だけのものにしたいと。


「君が協力的ではないからこんな提案をするしかなかったんだが」

「はあ…で僕は何をすればいいんですか」


本当にめんどくさいなと思うが目的のためにはやれる事はやる…そう決めた。


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