二十四話
次の日ルミの光魔法特訓について考える。
だが特に思いつかない。
「え、どうしましょう…」
「流石に、さあ私を傷つけて実験しなさい!とは言えないわ」
そう言うと当たり前ですと返された。
レイの時は使っていいよと言えたが怪我は嫌だ。きっとルミのことだろう。すぐに習得してさっさと傷を治してくれるだろうが痛い思いは絶対にする。
私は痛いのは嫌いだ。
はてどうしようか…。
あ、そうだと思いついた。
「募集しよう」
「街の病院とかそういうところでですか」
「そう!」
話が早くて助かる。病院などで許可をくれた人達に練習台になってもらうのだ。
そうと決まれば父様に…父様はいないので母様に聞きに行く。
母様は話を聞くとそれは良いんじゃないかしらとあっさり許可を出した。
「光の魔法は貴重だもの。積極的に使えるようにならなきゃ」
そう言って街の医者に願い出ればどうぞと快く引き受けてくれた。
有難い。患者をとってしまわないかと心配していたが何より回復してもらう事が大事だと言ってくれたようだ。良い医者だ。
ということで早速次の日その医者の元へ向かう。
「おお、君がその光の魔法を使うというルミくんか。私はコナドだ。」
「はい。よろしくお願いします」
ルミは丁寧なお辞儀をしてお世話になると挨拶をした。
「でも今は怪我の患者はいないのだよ。だからしばらくこの本を読んでおいてくれ」
そう言って渡されたのは医学書だ。随分読み込まれたのかボロボロだった。
魔法で治すとはいえ多少の知識は必要ではないかとコナドさんの意見だ。
ルミはわかりましたと本を受け取ると熱心に読み始めた。
私もする事がないので別の本を手に取りページをめくる。
そっと閉じた。
私にはレベルが高すぎた。何が書いてあるのかさっぱりわからなかったよ。
しかしルミは理解しているのかどんどん読み進めていた。この差は一体…。
というか私は必要か…?と自問自答しながらこの日は何もなかったので帰宅した。
「あの本はとても勉強になりました!」
「そ…そう…」
嬉しそうに次はあの本をと語る。
本で学んだことを私に話してくれるが全く頭には入ってこなかった。
そして今日もレイは帰ってこなかった。
泊まり込みとは相当大変なのだろう。
「レイ…怒ってそう…」
ルミが顔を青くして言う。
「レイはそんなに怒るタイプじゃないんじゃない」
と私が言えばルミは困った顔をする。
なんでそんな表情になるのか。私はまた変なことを言ったのだろうか。
「最近は一定の条件を満たせば短気になりますから…」
「え、そうなの?」
レイも短気になるのかと勝手に親近感が湧いていた。
「まあ、ベルティアさま関連だけど…」
「え?」
何やらボソボソ言っていたが聞こえなかったので聞き返したらルミは急いで答えた。
「なんでもありません!」
みんなして最近秘密が多いな。
ごほんと咳払いをしてルミが話題をかえる。
「それより今日も付き合ってもらえますか?」
「もちろんよー」
そうは言ったが私にできることは何もないのだが…。
コナドさんの元に行くと来たかねと迎えてくれた。
「君たちいいタイミングだよ」
そう言って私たちを治療室に招き入れた。
「今ちょうど軽傷を負った患者が来てね」
見ると腕に怪我を負った男性が目に入った。仕事中刃物で誤って切ってしまったらしい。
布で覆っているが血が滲んでいる。結構出血しているようだ。
ちょっと怖いがそうも言ってられないので顔を上げればルミは男性に近づいていた。強い。
「あの、私光の魔力を持つものなのですが…」
そう言って事情を説明すると男性はどうぞと引き受けてくれた。
「ありがとうございます。ではお願いします」
頭を下げて布を取ってもらう。パクリと開いた傷が目に入った。やっぱり怖いよ…と目をそらす。
そんな中ルミは手をかざし魔法を発動させた。
幸い光の魔法は使い方が記された書物が少ないながらも存在していた。
傷を治す方法もしっかり載っていたのでルミはそれを試す。
白い淡い光がルミと男性を包み込む。
すると…
「治っ…た?」
男性は自身の腕を見て驚く。腕を動かしたりして色々試している。
「痛くもない…すごい!一瞬で!」
成功したらしい。
やはり手探りだったレイの時とは違いやり方がわかっていると言うのはかなり違うようだ。
だが本を読んだだけで一発で成功させるのはさすがとしか言いようがない。
私は風の魔力なので普通に魔法について書かれた本が存在しているが読んだだけでは成功した事がない。
「すごいわ、ルミ!」
私はルミの元に駆け寄る。レイもそうだがこの兄妹は本当にすごいな。見た目良し、頭脳良し、魔法の才もあり…私が霞んでいる。
「やりました、ベルティア様!」
二人で喜びあうと男性が声をかけてくる。
「本当にありがとう。しばらく仕事が出来なくなると心配していたんだ」
「いえ」
感謝されたルミは照れくさそうにしている。その姿はとても可愛らしかった。
そのあと二人は握手を交わしていた。
「いや、すごかったよルミくん」
「いえ、先生が本で勉強しておくように言ってくれたおかげでイメージもしやすかったんだです」
あれがなかったらもう少し時間がかかったし、もしかしたら上手くいかなかったかもしれないとルミは語る。
「ありがとうございます」
頭を下げたルミはその後こちらを振り返って笑顔で私に言う。
「ベルティア様付き合ってくれてありがとうござます」
「いえいえ、その場にいただけで何もしてないし」
「一人だと心細くて。それにベルティア様は自分の時間を割いてまで私といてくれて…ありがとうございます」
その笑顔は全てを魅了する神の領域だった。
本当にすごいなと感心した。
「これからもよろしくお願いします」
「ええ!まだまだ付き合うわよー」
先生もよろしくお願いします。
その日から私たちは傷を治したり本で勉強したりと頑張った。
まあ、私は患者さんの誘導くらいしかしていなかったが。
私は必要なのだろうかとまた思ったがルミがいるだけで安心するの言っていたのでそれで納得することにした。




