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二十二話


家のもののレイに対する態度が変わってしばらく経ったある日。

魔法師協会にも報告したら一度見せてほしいと連絡がきた。

ということで協会に向かう。

到着すると協会の人がたくさんおり少し怖かった。興味深そうな視線を投げかけていた。


レイは私についてきてほしいと言ったのでお供した。


「よ、ようこそ。闇の魔力を持つ者よ」


ちょっと怯えているじゃないか。大丈夫だと言っているのに。その態度に少し腹を立てながらもどうもと挨拶をする。


「早速だが魔法を見せてほしい」


そう言って連れてこられたのは外だった。騎士なども待機していた。嫌な予感がする…。


「さあ、これを鎮めて見せよ」


魔法で結界が張ってありその中には怒り狂う獰猛な魔物だった。

魔物は魔力を持つ生き物で、大人しいものから人間を襲うようなものまで様々だ。

魔物は森奥深くなどに生息しているがたまに人里に現れて人を襲うことがある。

そうなると討伐の対象になる。魔法を使ってくるものもいるので危険だ。

とは言っても魔石を落とすこともあるし肉なども大変美味であることから魔物退治専門の職もある。

魔物退治は専門の人でもかなり苦戦することもあるそうだがそんな魔物を鎮めろとは無茶な事を言う。


「ちょっと…なんてものを出してくるのよ!」


私が抗議すると魔法師協会の人間は、おや?と首をかしげる。


「できるのだろう…?」


クスクス笑いながらさあやってみろと言う。こいら成功しても失敗してもどちらでも良いと思っているな…。

失敗すれば危険なものを排除でき成功すれば儲けものと。

ぐぬぬ…私は悔しくて協会の人間を睨むが向こうはそんなもの痛くも痒くもないと余裕そうだ。


「ベルティア様、応援していてくれますか?」


レイが私の横に並んで聞く。

その言葉にハッとした私はすぐに頷いた。


「もちろん!」


そうだレイなら出来る…そう信じなくては。

そう言うとレイは微笑んでみていて下さいと結界の中に入っていった。

レイの存在に気付いた魔物は大きな牙を向けてレイに襲い掛かろうとする。

その寸前でレイは魔法を使った。


「止まって…怒りを鎮めて」


レイが魔法を発動すると途端に魔物が大人しくなった。


「そこに座って…」


そう命じると魔物は座る。魔物に命令を出せるとは驚きだ。魔物は人間の言うことなど聞かないはずなのに。いや、聞いているというよりは聞かせているのかもしれないが。


「な、なんだと…」

「魔物が…」


見ていた人たちはざわつき始めた。

どういう事だ、何をやった…様々な言葉が行き交う。すると…


「素晴らしい…実に素晴らしいよ」


どよめく人達の間からひとりの男が声を上げた。

声がした方を見れば四十代ぐらいの男性だった。いや、もっと若いだろうか…。よくわからない。


「カルロス。私は王に仕える者…その力是非王家のために使わないか?」

「へ?」


何か凄い事を言われた気がする。レイも何を言われたかわからないと言った顔だ。


「君にも悪い話ではない。君の力を…闇の魔力を悪いものではないと証明も出来る」


どうだねとレイを見据える。


「僕はベルティア様のお側を離れる気はありません」


レイはそう言い切ると話はそれだけですかと会話を打ち切ろうとする。

ちょっと待て、流石にそれはまずいぞ。ただの貴族の私より王家を優先させた方が良いじゃないか。というかそうだろう。


「レイ…その流石にもう少し考えた方がいいんじゃない?というよりこれ命令みたいなものだと思うのだけれど」


私はレイに考え直せという意味も込めて言うとカルロスはうむと頷く。


「君の主人の言う通りだ。これは提案ではなく命令と思ってほしい」


カルロスはレイに逃げられはしないと笑う。その笑みが少し怖い。




「ちっ…」


ん?小さく舌打ちのようなものが聞こえた気がするけど気のせいだと思いたい。王家の関係者にそのような態度は大変いただけない。恐る恐る相手を伺うと何も反応していなかったので私の気のせいだろうと思うことにした。というより思い込む。

そもそもレイってそういう態度をとるような子だっけ…。

カルロスは続ける。思案しているとカルロスの声が聞こえて急いで意識を戻す。

いけない、話を聞かないと…。


「使うと言って必要な時に来てもらう、そういう形だ」


しばらくは城に毎日通ってもらうが、と補足した。

毎日と聞いてレイがすごく嫌そうな顔をしたのを私は見逃さなかった。そんなに嫌か…。

カルロスはニコリと笑いレイに近づく。




「それに……」



耳元で何かを囁くように言うとレイはすごく不愉快そうな顔をした。その後表情を隠すように下を向いてしばらく考え込んだ後わかりましたと頷いた。すごく悔しそうにしていた。


「僕がお役に立てるかわかりませんがやるだけやってみますよ」


なんか本当に態度悪くないか、大丈夫?

世間の荒波にもまれて強くなったか…。

それにしても大丈夫だろうか、その人きっと偉い人だよ…。



後から聞くとこの国の宰相だった。政治的偉い人だよ!というかなんで名前聞いて気が付かなかったんだと嘆いた。

爵位も同じである。

…嫌な汗が伝った。

まあ、君はなかなか面白い子だね気に入ったよ。とかなんとか言っていたので大丈夫だろう…。別の意味とかないよね?


私が心配しているとレイは優しく微笑んでくれた。


「ベルティア様は何も心配しなくてもいいんですよ」

「う、うん」

「僕はあなたの…」


何やらレイがボソボソ言っていたが声が小さすぎてよく聞こえなかった。


「何か言った?」


と問えば「いいえ、何も言ってませんよ」とかわされた。

そういえばカルロスに何かを言われていたが何を言われてたんだろう…。

それも聞いたら気にしないでくださいと返された。

秘密が多い年頃なのだろう…。



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