十七話
それから毎日特訓したが良い結果は出ない。
どうしたものかと考えていると通りがかった部屋の扉が少し開いていたのでダメじゃないかと閉めようと手を伸ばす。
すると中から何やら話し声が聞こえてきた。その会話の中に気になる単語が出てきたので思わず手を止める。
「ベルティアお嬢様もおかしな方ですわよね、あんな恐ろしい子を側におくんだから」
「案外もう精神をどうにかされて操られてたりして」
あり得るわねーと可笑しそうに笑う使用人達。
そんな事ないのに。何でみんなわかってくれないのかな。
レイはすごく優しいって、頑張ってるって。
「ベルティア様どうしたんですか?」
後ろから声をかけられる。振り返ると予想通りの人物がいた。レイとルミだ。
「ど、どうもしてないわよ」
これは聞かせられない。特にレイには。
この場をさっさと離れなくてはと移動しようとしたがその前にレイが近くに来てしまった。
「何かあるんですか?」
そう言って扉の前に立つ。
「ベルティアお嬢様がもしすでに操られてたらどうする?」
「え、どうしよう。ベルティアお嬢様にも近付かない方がいいんじゃない」
間違いない!と笑っている。
「…っ。そんな事…」
ま、まずい!と思いレイを見ると悔しそうに顔を歪めている。綺麗なお顔が台無しよと場違いな事を思ってしまった。
そして今にも乱入しそうな勢いだったので急いで止める。
「だ、だめよ!私は気にしてないから」
「そうよ。今何か問題を起こすのは良くないわ」
レイの立場がさらに悪くなるとルミも止める。
とにかくこの場を離れなければとルミと協力してレイを宥めて移動する。
私たち三人は部屋に戻った。
「何でベルティア様まで悪く言われなきゃいけないんだ!」
部屋に入るとレイは大きな声を出す。
何で、何で!と…。
「レイ…落ち着いて」
ルミが落ち着かせようとそっと触れる。
「全部僕のせいで」
「レイ…」
「うるさい!」
レイはルミの手を乱暴に振り払う。
振り払われたルミは少し悲しそうな顔をしたが構わず落ち着いてよと声をかける。
「ねえ、レイのせいじゃないでしょ!ベルティア様だってそんな事一言も言ってないわ」
「ルミには…ルミには分からないよ!」
「レイ…」
「ルミはいいさ。光の魔力があってみんなに歓迎されて」
頭に血がのぼっているのかかなり興奮したレイは普段言わないような事も言う。
むしろ今まで我慢していたことが爆発したようだった。
「もう、嫌なんだ!みんなからバケモノを見るような目を向けられて、さらにはベルティア様まで悪く言われた」
「レイ!だから今から…」
「もう放っておいてよ!」
そう言うと部屋から出て行ってしまった。
「レイ!」
ルミが追いかけようとするが止める。
「待って、私が行くよ。今ルミが追いかけてもさっきと変わらないと思うの」
そう言うと「そう…ですね。お願いします」と任された。
正直私で元気を取り戻してくれるか分からないがやるだけやる。
私はレイを探す。人がいないところだよな、どこだろう…。
レイが行きそうな場所か…。
こういう時あの場所に違いないってなればいいんだけど正直さっぱりわからない。
でも今はその方がいいのかもしれない。かなり興奮していたので少し頭を冷やす時間も必要だろう。
しばらくあちこち探すと目的の人物を見つけた。
人目のつかない庭の端の方にいた。ちょうど木に囲まれて見つけにくい。
よく見つけたと自分を褒めながらレイに近付いた。
 




