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十五話



人の情報網はすごく家の者全てにレイの魔力が闇だと知れ渡った。

今まで気さくに話しかけてきた人も怯えるようになってしまった。


父様がいつも通りにするようにと言ったのであからさまに嫌な事を言ってきたり逃げるような人はいない。

それでもヒソヒソと怖ろしいとか言っている。



「ベルティア様、僕やっぱりここにいない方がいいんじゃ…」


無言で睨めつける。

ルミは叩いていた。意外と手が早い。


「なんでレイはそんなに後ろ向きなの?」

「そうよ!私たちが必死に良い方法を考えているのに」


レイも何か考えなさいよ!と女二人に言われてはいと弱々しく返事をした。というより頷くほかなかったのかもしれないが。

とりあえず作戦会議のため私の部屋に行こうとすると母様がやってきた。


「あっ、いたわ。ルミあなたにお客様よ」

「私にですか…」


母様はレイに怯えない貴重な人だ。有難い。


「まあ、光魔法関係でしょうね」

「ですよね…」


ルミはレイとは反対に誰からも歓迎されている。

魔力鑑定の場にいなかった貴族たちがこぞってルミを養女に迎えたいとやってくる。

基本的にその場で追い返しているがどうにもそれが出来ない者たちもいる。

ルミはため息を吐きながらもお客様が待つという客室に向かった。


「ルミは、いいな…」


ポツリとレイが呟く。悲しげに目を伏せながら自分とは全然違う、どうして双子なのにこんなにも差が出てしまったのだろう…そう言いたげだ。


「ルミはルミ。レイはレイだよ」


それはどうやっても変えられないし変える必要もないと私は思う。


「ねえ、ルミは一旦抜けちゃったけど作戦会議しましょうよ」


気持ちを入れ替えるようにレイに提案する。ここで悩んでいても仕方がない。


「はい」


私はレイの手を掴んで引きずるように部屋に向かった。

扉は少し開けておく。子どもとはいえ一応男女二人きりになるからだ。





「でも、僕に何ができるんでしょうか」


部屋に着くなりまた弱気な事を言う。そんなレイの頬を両手でペシッと軽く叩く。


「もう!だからそんな弱気にならないで!」


レイは最近どうにも考えが後ろ向きになる。

そんな事では出来ることも出来なくなると思う。


「私はね、絶対に闇の魔法も悪いものではないと思うわ。いやない!」


私は断言する。


「そもそもどんな力だって使い方と加減なのよ」

「使い方、加減…?」



そうと頷くと私は例えばと続ける。


「薬。あれって病気や怪我を治してくれる有難いものだけどそれって正しい使い方と量を守った場合よね」

「はい」

「それと同じだと思うの」


毒とされているものその使い方によっては病気の治療に使われているものもある。量を調節する事で薬にも毒にもなるのだ。

それは他の分野でも言える事ではないか。

体に良いとされる食べ物でも食べ過ぎは良くないし睡眠は良い事だが寝すぎると立ちくらみを起こしたりする。

全ては使う人次第だと強く言うとなんとか納得する。


「でも、そうだとしても闇の魔法の使い方なんて」

「ねえ、精神を壊すとかなんとか言ってたじゃない?」


怖ろしい力ですとレイは落ち込む。

精神を壊すと言うことは精神に関与できるということだ。


「それってつまり使い方を変えれば気持ちをを落ち着かせたり、元気にしてあげられるんじゃないかな」

「え?」

「つまり精神…心の治癒よ!」


精神と心って一緒の意味といえば一緒だしちょっと違うといえば違う、難しいね。

まあ、それはいいんだ。


心が弱っていたらどんな事にも負けてしまう。病は気からとも言うし。

その他にも使い方次第ではかなり様々な事ができるのではないだろうか。

今は特に思いつかないけど。



「どうかな」

「たしかに…それなら」


できるかもしれないと少し希望が見えたのか表情に明るさが戻る。

レイもやる気になった事だしそれならば!


「早速特訓よ!ささ、私を落ち着かせてみなさい」

「え、ベルティア様に?」


何を言っているんだと、正気かと驚きの目を向けている。

正気である。


「いや、だって実験台は必要でしょう?」

「だからってベルティア様がなる事ないです!」


レイは突然声を荒らげる。びっくりした、レイがこんなに大きな声を出すのは滅多にない。というより見たことないかもしれない。


「だいたい失敗したらどうするんですか!」


もっと自分のことを大切にしろと今まで見たこのないくらいに怒っている。正直怖い。


「ご、ごめんなさい」


素直に謝るとハッとしたレイは悲しげな表情をして大きな声を出してすみませんと頭を下げた。


「ベルティア様に何かあったら僕は…」

「もう言わないからそんな顔しないで?」


なんとか機嫌を戻してもらおうと必死になる。笑ってくれ、怖いのだ。悲しそうな顔をしないで辛いんだよ。

一発芸でも披露するか?そんなものないわ。

と一人思案しているとレイが顔を上げた。


「本当にもう言いません?」

「もちろん」


絶対ですよと念を押されたがなんとか納得してくれたようだ。よかった。


「でも、何かしらは必要よね」



もうあれしかないなと思いレイの手を引っ張って移動した。



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