十話
とても充実した日々を過ごしていたらいつのまにか誕生パーティーの日になった。
今日のパーティーは私がまだ八歳ということで身内だけだ。
といっても人は多いけど。
侍女に綺麗に着飾られる。ルミも勉強のためと手伝ってくれた。
今回のドレスは私の瞳と同じ緑色のプリンセスラインの可愛らしい物だ。
我ながら結構いけると思うのだがどうだろうとルミを見れば
「ベルティア様とっても可愛いです!私何処かに攫いたくなりました!」
…何を言っているんだ。
その後レイもやって来て私を見ると固まったと思ったら照れながら一言
「すごく、可愛いです」
…照れるレイは可愛かった。
でもありがとう。私にやけちゃう。褒めれると調子に乗っちゃうよ、えへへ。
今日は二人は連れてけないという事で私一人で会場に向かう。
父様と合流するとそれはもう褒めちぎられた。
会場に入ると人がたくさんいた。主役の登場という事で注目も集まる。
もうこの時点で疲れた私は意識をどこか別の世界に旅立たせた。
私や父様に挨拶に来てくれる方達に笑顔で対応しさらに疲れる。
もう、駄目だ…と思っていたところでやっと解放された。ご飯!と浮かれていたがもうそれどころではない。
しかし、胃が食物を欲していたのでフラフラと食事の元へ向かった。ビュッフェ式なので皿をもらい取り分けようとしたら給仕の人が取り分けてくれた。ありがとう。
もぐもぐと食べているととても美味しく疲れも飛んだ私は単純だ。
レイとルミにも食べさてあげたいなと思っていたら後ろから声をかけらた。
「ベルティア!あなた何やら拾い物をしたとかなんとか」
振り返るとそこには母方の従姉妹、エルザ・フィリードが指を指して立っていた。
会うたびにやたらと突っかかってくる従姉妹である。
目立つからやめてほしい。ほら見よ、大人達は忙しそうであまり見ている人は少ないが同じくらいの歳の子達は興味津々といった様子でこちらを見ている。
うーん。どうしたものか。私は所詮凡人。こういう時に上手く躱せる人間ではない。
「下賤な者を側に置いてるとか聞いたわよ。ふんっ、あなたにはお似合いね!」
腹は立ったが放っておこう、相手にするだけ損だ。無駄吠えする犬には無視がいいと言うし。
「ちょっと聞いてるの?」
「いえいえ。私のような小者、エルザ様が相手になさる事はありませんわ。どうぞ私の事などお気になさらず」
そう言ってその場から立ち去る。その前に一言。
「エルザ様は遊んでばかりで字もまだ読めるかあやしいと…あらあら、あの二人は完璧なのに」
どちらが下なのかしらね〜とバカにしながら去った。
後ろからそれくらい出来るわよ!!と半泣きで喚いていたが本当かな?
根は悪い子ではないはずなんだが口が悪い。
男兄弟の中にできた一番下の女の子だからかなり甘やかされているらしい。ちょっと痛い目見るくらいがちょうどいいだろう。
ちょっといざこざはあったもののパーティーは無事終わり、疲れたと部屋に戻ってベッドに倒れ込めば後ろからルミがお行儀が悪いですよと声をかけてきた。
夜なのでレイは入って来ない。といっても20時過ぎくらいだが。いや、子どもにはそこそこの時間か。
「あの、ベルティア様少しお時間よろしいでしょうか?」
ルミがどこか緊張した面持ちで話しかけてきた。
もちろん良いとも。
「どうしたの?」
「えっと、あの。レイも呼んできても良いですか?」
良いよと頷けばすぐに部屋から出て行きレイと戻ってきた。
夜なのにすみませんとレイは言うが夜中に二人の部屋に入り込んだ私にとやかく言う権利はあるのだろうか…。ないだろうな。
「あの、これ…安物なんですけど私たちからベルティア様に誕生日プレゼントです」
「もう、お給料出してもらえたんでそれで買ったんです」
まだ全然働けてないのにすみませんと言うが母様はティアの良い子守役ができたわ、それだけでとても助かると喜んでいたのを私は知っている。二人は子守をしているのだよ。フッ…。
「その受け取ってくれますか?」
そう言ってくれたのは小さな箱だった。開けても良いか問えばどうぞと返事が来たので早速開ける。
「わわ!可愛い!」
中には可愛らしい花をモチーフにした首飾りが入っていた。
「旦那様に聞いたら街で売っている首飾りを欲しがっていたと聞いたので…」
「気に入っていただけましたか?」
「ええ!私お花結構好きなの、嬉しい。早速つけてみるわ」
そう言って着けようとするが中々上手く出来ない。どうやら手先は不器用なようだ。
悪戦苦闘しているとやりますよとレイが近付く。
私の前に立ち首飾りを着ける。
ち、近い…。
何故前から?後ろからではいけないのか。たまたま前に立っていたからか。
綺麗な顔が間近にあって怖ろしい。
これ子どもだからいいけど大人だったら危ない。将来たらしになるな、女の子達気をつけて。
「出来ましたよ」
「うぐ…」
そう言うレイはとても眩しかった。とても大切なものを見るような目をしていた。これはやはり私を神格化してるよね。私は凡人だよー、と目で訴えれば微笑み返された。
ぐぬぬ。これは将来恐ろしいことになるに違いない。
「もう、レイ!ベルティア様を独り占めしないで」
そう言うと私の前にやってきたルミは着けてくれてありがとうございます、よく似合ってますと微笑んでくれた。こちらも美しい。
女の私でも惚れそうだ。
「もっと良い品を買えたらよかったのですが」
そうこぼした二人に私は抱きついた。
「私はこれがいいのよ!レイ、ルミありがとう。宝物にするわ」
二人は目を丸くしたが私の言葉に嬉しそうにした。
「ありがとうございます」
「ベルティア様に会えて良かったです」
「そう言ってくれると嬉しいわ!」
私たちは笑いあった。




