六花の家におじゃましま~す
VRは次回から始めたいと思います。
現在、アタシ達は六花の家へと来ていた。隣にある家と大差ない大きさ。どう見ても、一般庶民の家なんだけど。間違いなくこれが六花の家。
代々お金持ちの家系である石動家はむやみやたらと高い物を買うってことはない。というか、そういう家系の人達こそ散財をしないんだと思う。だから、何代もお金持ちであり続けるという私なりの意見。
まあそんなことはどうでもよくて。とりあえず、アタシ達は六花の家にお邪魔する。
「ただいま帰りました」
「「おじゃましまーす」」
三人同時に靴を脱いで綺麗に並べる。他所様の家で靴を脱ぎ散らかす人って碌な人じゃないと思う。だからアタシはしっかりと揃える。
「それじゃあお茶を持っていくから先に私の部屋に行っててください」
「お構いなく~」
「ありがとね六花ちゃん」
アタシも四葉も中学の頃から六花の家に何度もお邪魔して慣れ親しんだもの。スリッパを履いておじゃまします。階段を上がって正面の部屋が六花の私室。
六花の部屋には、ベッドの上やら棚の上やらにたくさんのぬいぐるみが飾られている。いやぁ~、女の子の部屋だなぁ。
「久しぶりだねぇ。六花ちゃんのお家」
「アタシは一昨日来たし」
「えぇ!? ズルいよ! 何で私を誘ってくれなかったの!?」
「一昨日は用事あるからって四葉が断ったんじゃない」
「ぅ……そういえばそうだった」
「結局何の用事だったの?」
「親戚の結婚式」
「なるほどね」
まあ予め確定した用事があったんだったら、そりゃ断るわな。アタシだって、先約がある時は無理して後から言ってきた方を優先することはないし。相応の理由があるなら別の話だけど、友達と遊びたいからっていうのは、まあ理由にできないよね。
「あれ? じゃあ優先購入は?」
「昨日買ったの。優先購入の分は最初っからお店の方に言って取ってもらってたからね」
「なるほどね。βテストのプレイヤーデータもあるし、慌てる必要もなかったわけか」
「そゆこと」
こういうところはβテスターとビギナーの間で地味にイヤな差だと思う。初購入者は朝早くから並んで買わないと売り切れるし、買えたとしてもとっとと帰ってしまわないと、好きなプレイヤーネームが使えなくなるかもなんて心配もしなくちゃいけなくなるし。アタシなんて運がよかった方だ。
「お茶が入りましたよ」
「お、ありがとう」
「いただきまーす」
丁度話が切れたタイミングで、狙いすましたかのようにお茶とお茶菓子を持ってきた六花。お礼を言って緑茶を飲みつつ、煎餅をポリポリする。六花は緑茶好き、だから茶請けは大抵和菓子。
「何の話をしていたんですか?」
「一昨日どうしてたのかって話」
「あぁ。四葉さんが遊びに来られなかったことですか?」
「そうそう。まあ私のことはともかく、二人は何してたの?」
何をしてたって言っても、大したことはしてない。
「六花が優先購入で《GO》を買いに行くのに付き合ったくらい?」
「六花ちゃん。星ちゃんに対してなんて酷なことを……」
「えぇ、今でも鮮明に思い出せますよ。星さんの呪詛の声……」
そりゃあね。悠々と目の前で自分が欲しいと思ってるものを買われたら、呪いの一つでも掛けたくなるでしょう? これ人間として普通のことだと思うんだよね。
「「普通じゃないから(ありませんよ)」」
「心を読んでのツッコミは禁足事項よ?」
「いやいやいや、すごく声に出してたから!」
「?」
今でこそ購入できて穏やかになってますけど、一昨日は本当に酷かったんですから……。と六花は言って暗い表情を見せる。下手したら暗黒面に落ちたと錯覚させる画だ。
そこからは流れに乗って色々と訊いていく。そして驚き。
「四葉もレア種族だったの!?」
「そうだよ。私の種族は〈白狼〉」
ほう。結構気になってた種族じゃん。
「〈白狼〉って何? 種族に狼とかはなかったよね?」
「基本的には〈犬〉の派生って感じかな? 種族特性で〈嗅覚強化〉は普通にあるよ」
それ以外にもう一つ。〈極寒耐性〉っていうエクストラスキルがある。これは極寒地帯に行っても地形的影響によるステータス減少や凍結の状態異常とかを無効化するスキルだって。凍結自体は状態異常の一種だから、多分だけど〈神聖〉でも無効化できると思う。凍結を無効化すれば寒さも感じないんだとか。
「それって検証したの?」
「ううん。ヘルプに書いてあった」
「さいですか……」
そもそもβ期間では極寒地帯なんて見つかってないんだって。だから、四葉が手に入れた〈極寒耐性〉も凍結耐性と大差ない扱いになったみたい。
「それでも、パラメーターはかなり高かったよ? しかも、〈水魔法〉を習得できたからね」
「マジで!?」
獣人系種族は、初期の物理的パラメーターがかなり高く設定されてる分、魔法的パラメーターが低くなってる。それプラスで、魔法スキルを習得することができない。つまり、魔法使いのケモ耳っ娘というのは存在しない。普通なら。
その常識を打ち破った最初の例が、獣人種で初めてにして唯一の魔法使い〈フィオーリ〉。四葉だったらしい。そのせいか、四葉は結構有名なプレーヤーだったとか。
「六花は?」
「言ってしまうと、レア種族です」
「アタシの身近にはレア種族しかいないわけ?」
ちょっとこの比率はどうなわけ? βテストにいたレア種族が当たった六人の内、半分がアタシの傍に常日頃からいる妹や友達って。
「まあなんとなくわかるよ。六花ちゃんも星ちゃんと同じくらいはViLi使ってるからね」
「はい。発売当初から光さんを含めて、四人で一緒にいっぱい使ったんですから、当たる確率も相応に上がっていたんだと思います」
まあそうなんだけどね。じゃあなんでアタシだけβテストに外れちゃうのかと。あの時はホント神様を真面目に呪ったね。
「それで、六花の種族は?」
「〈堕天使〉です」
「すごく似合わない……」
「自覚しています……」
堕天使と言えば高慢で高圧的な唯我独尊を地で行くような種族だと思う。それが蓋を開ければ、物腰丁寧でしかも和な感じ漂う〈堕天使〉。
「ぷっ」
「笑わないでください……」
「ごめんって六花」
「あははは! ――ふぐっ!?」
アタシのはっけいが四葉を襲う。
「愛と正義のブレザー服平凡少女戦士ブレザースター! 六花に代わっておしおきよ!」
「そこは…星に代わって…なんじゃ……」
「状況的にはこれが合ってるのよ」
「反論できない……」
正義は必ず勝つのだ。
「っていうか、星ちゃん。まだ自分のこと平凡少女とか言ってるの?」
「事実を言ってるまでよ」
「そろそろその思い込み、直さないとマズいんじゃない?」
「なんの話?」
何を言ってるのこの娘は? 何が思い込みなのか全くわからないんだけど?
「六花ちゃんどうする? このままだと社会に出ても治らないよこれ?」
「私に言われましても。星さんのこれは今に始まった事ではありませんし」
「でも、光ちゃんにもどうにかしてほしいって頼まれてるし……」
「私達よりも一緒にいる時間が長い光さんができないことを、私達ができると思いますか?」
「確かに……」
「何二人でこそこそしてるの?」
「「何でもないよ(ありませんよ)」」
「?」
変な二人……。
「それで六花。〈堕天使〉ってどんな感じなの?」
「あ、教えていませんでしたね。〈堕天使〉は、読んで字の如くな見た目をしてます。ViLiでいつも使っているアバターに黒い翼と暗く光る頭上の輪が付いただけです」
エクストラスキルは〈奈落魔法〉と〈魅了〉の二つ。大仰な種族名のわりに意外と少なかった。
〈奈落魔法〉は、闇魔法の上位互換って感じらしい。属性は当然闇。威力、攻撃範囲共に通常の闇魔法を凌駕する魔法。ただし、相応にMP消費も激しい。βではよっぽど必要に迫られない限り、あまり使わなかったんだって。というか、近接戦闘タイプだったみたいだし。
〈魅了〉は文字通りのスキル。使うとプレイヤー・モンスター問わずに魅了の隠し状態異常にしてしまう堕天使専用のエクストラスキル。魅了されると、このスキルを使った相手に対して攻撃が通らなくなる。多分だけど、堕天使ルシファーが美しい天使だったっていうのが元じゃないかな? ルシファーって男だったと思うけど。
堕天使〈アマリリス〉。βでは四葉の〈フィオーリ〉同様、めちゃくちゃ注目されてたプレイヤーだったと。〈アマリリス〉は六花のプレイヤーネームね。で、二人共データはそのまんまらしい。いずれにしたって。
「アタシの〈星魔〉程強くはないわね」
「「星ちゃん(さん)は例外も例外なんだよ(なんですよ)!」」
その後も色々と三人で談笑していったのだった。
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