は~や~く こ~いこ~い なつや~すみ~
今話含めて後二話くらいリアルサイドです。
有意義な休日が終わり、学校へと登校することになった月曜日。
昨日の夜九時くらいからは大分憂鬱だったなあ。まあでも、今日は終業式だし気にしなくてもいい。アタシは期末試験で赤点なんて取ってないから、赤点補習は参加しなくて済む。
教室に到着。クラス内はGOの話題で持ち切りだね。ま、昨日発売されたばかりだし、キャラクリとかで話したいこともあるんじゃないかな?
「お~い、星ちゃ~ん」
教室に入ると教室の奥の方からアタシを呼ぶ声が聞こえてきた。うん、いつも通り過ぎてビックリだね。
目を向ければ、美少女二人がアタシを見てる。約一名、「おーい」って腕ごと大きく手を振ってるけど。ヤダすっごい目立ってる。いつものことだけど。鞄を机の横に引っかけて二人の傍までいく。
「おはよう四葉、六花」
「おはよ~。星ちゃ~ん」
「おはようございます。星さん」
最初におっとりした感じの挨拶をしてきたのは、小野宮四葉。小学の時から一番仲の良い親友。この娘の方が付き合いが長い。言っとくと、大きく手を振ってたのはこの娘ね。
アタシ達三人の中では一番小柄で百四十後半くらいしかない。ゆるふわウェーブのロング茶髪。ふわふわした印象を受ける容姿で、性格も印象通りにふわふわでかなりおっとりしてる。
ただ間違っちゃいけないのは、動きが緩慢というわけじゃないってこと。むしろ同年代女子の中じゃトップクラスの身体能力じゃないかな。前述したように美少女である。
次に丁寧な挨拶をしてきたのは、石動六花。中学の時に知り合って、四葉と同じくらいに仲良くなった親友。
身長は百六十後半。女子にしては結構長身だけど本人は全く気にしてない。背中まで真っ直ぐに伸びている癖のない綺麗な黒髪。キリッとしてて大人な女性って感じかな。
大和撫子然とした佇まいと丁寧な物腰がどことなくお嬢様っぽい。まあぽいじゃなくて正真正銘のお嬢様なんだけどね。
運動は女子平均並み、その代わりに成績が半端ない。中学時代含め、六花の成績順位が二位以下になったところを見た人間は存在しない。
「星ちゃん。GO買えた~?」
「当然よ。朝三時に並んだからね」
「ゲームのことになると他のことを一切考慮しなくなるのは前から全然変わらないね~」
「GOを手に入れるためならなんでもする。GOのためなら、所持者を背後からトマトケチャップで襲って奪い取るくらいはやってのける!」
「それで奪えるのは相手の清潔感だけだよ~」
ごもっとも。とまあいつも通りのアホな会話を挟みつつも、話題はやっぱりGOについてだった。
「キャラクリは済ませたの~?」
「四葉。それは愚問というものよ。買った当日にキャラクリ済ませないでいつ済ませるのよ」
「星ちゃんだったら、レア種族当てるために平然とキャラクターデリートとかしそうだし~」
「…………あり得なくもないか」
「というか絶対するよね~」
否定できないね。これはもう仕方ない。レアとか特別って単語に弱いんだよ、アタシって。
「むしろ星さんなら、キャラクタークリエイト一発目からレア種族を引き当てそうですけどね」
「~~~~~~♪」
「え、星さん? なんで明後日の方向を向いて口笛を吹いてるんですか?」
「ちょっと待って星ちゃん。ホントに当たっちゃったの~?」
「アタッテナイヨー。アタシ、イツデモ、ヘイボンダカラネー」
「すっごく棒読み! それにカタコト! しかも平凡関係ない!」
「ホントに引き当てたんですね。星さん」
バカな!? 何でバレちゃうわけ!? 誤魔化しが甘かったとでも言うのか!?
「それ以前に誤魔化せてないからね~?」
「ウソォッ!?」
「ホントに誤魔化せてると思ってたの!?」
いやまあ冗談だけど。四葉もちゃんと声量は考えてくれてるから周りにはバレてないし。どうせ光にも喋っちゃったし、ずっとプレイしてればいずれわかることだし、四葉達なら話しても大丈夫そうかな。
ってなわけで、光に話したのと全く同じことを説明する。当然、光と同じように難しい顔になる四葉。アタシや光よりもゲーマーだからね四葉は。今のアタシがキツイ状況に置かれていることはすぐに理解したはず。
「星ちゃんはそれで納得したの~?」
「まあやるだけやってみようとは思ってるかな」
「……そっか。星ちゃんがそれでいいなら私が言うことは何もないよ~。すっごい茨の道だと思うけど頑張ってね~」
「もち!」
「私達もサポートしますから一緒に頑張りましょう。星さん」
やはり持つべきものは優しい友達。二人共ホントに優し過ぎてアタシの友達にしておくには勿体ないくらいだよ。
「こう見えても私達、βじゃ攻略組の一員だったからね~」
「知り得る情報は何でもお話しますよ?」
あ、なんか唐突に二人との距離が開いた気がする。
「惜しい友達をなくしたわ」
「なんでいきなり絶交宣言!?」
「そりゃあだって、ねぇ?」
「理不尽だよ!」
いやあ、清々しいくらいにいつも通りだ。うん。
「まあ冗談はともかく」
「冗談!?」
「この手の話で星さんが冗談を言うのはいつものことじゃないですか」
「そうよ。むしろ六花以上に四葉との付き合いが長いはずなのに気付かない方がおかしい……はっ。まさか」
「星さん。それ以上言ってはいけませんよ。星さんの心が耐えられません……」
「今度は私の方が裏切者みたくなってるよ!?」
その後も騒ぎ続けるアタシ達。クラスメイトはそれを遠巻きに生暖かく見守っていたりする。このクラスは皆仲良しだからね。
まあそんな中でもアタシ達三人に向けられる皆の目は、普通よりもぽかぽか成分が多いように感じるけど。
終業式も校長の話が長くて四葉が居眠りして、担任の先生から怒られたこと以外は無事に終わり今日の午後から早速夏休み。
四葉と六花とアタシの三人でその辺の適当なファミレスに入ってランチタイム。昼食を食べて三人で駄弁る。
「うぅ……。まさか、最後の最後で怒られて憂鬱な下校になるだなんてぇ……」
「自業自得じゃない」
「こればかりは、私でも庇いきれませんよ」
「でも、だからって何も皆の前で怒らなくたっていいと思わない~?」
まあ確かに人の目があるところでわざわざ怒るっていうのは、精神的にダメージが入りやすくてアタシ個人としては好きじゃない行動だけど。
「居眠り常習犯に慈悲はないってだけでしょ」
「うぐぅ……」
「授業中も平気な顔して寝てますもんね」
「良くもまあ、あれだけ寝られるものよね」
「ひ、人によって適切な睡眠時間っていうものがあってね~。私の場合はそれが人より長いんだよ~」
「ゲームで徹夜してるだけでしょうが」
「はい……」
「まあ、四葉さんのこれは今に始まったことではありませんけどね」
小学生の時は純真無垢で素直な可愛らしい女の子だったっていうのに。何がこの子をここまで変えてしまったのか。
「ところで、星ちゃんは夏季休暇の課題終わったの~?」
「後は読書感想文だけかな。もう課題図書は借りてきたし、サッと読んで感想をテキトーに書くだけだからもう終わったも同然ね」
「いいな~。私まだ数学がちょっと残ってるんだよね~。六花ちゃんは~?」
「私は全部終わらせました」
「「はや……」」
アタシ達は三人揃って面倒なことは先に終わらせたい性格だから、課題配られたらその日の内に手をつける。場合によってはその日の内に終わっちゃうのもある。
これまでもずっとそんな感じで、長期休暇の前半に何もかもを終わらせて後半に遊び尽くすっていうサイクルを続けてるんだよね。
で、高校生になってからは終業式が終わった後、適当な店に入って、お互いの状況を教え合ってる。毎年恒例の報告会みたいになっちゃってるけど、今年は特に課題を終わらせるペースが早い。まあGOをするためだろうけどね。
「もしよければ、これから家に来ますか? 星さんも四葉さんも残り一つだけみたいですし、そのまま遊ぶこともできると思うのですが」
「アタシ課題は朝にするって決めてるし、今から読書ってのはパス。単純に遊ぶためにお邪魔するわ」
「私もお喋りするくらいがいいかな~。課題は朝の方が捗るし~」
「わかりました。では、課題の話はなしにしてこれから三人で遊びましょうか」
この後、アタシ達は六花の家に行くことが決まった。
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※2019/01/25 内容変更
・ファミレスでの会話を追加
・その他細部の言い回し変更