イベントクエスト
ツヴァイトに到着し、最初に寄ったのは冒険者組合。フィーとリリスが別の街で依頼を受けて、それを合流する前に暇潰しでやってたらしい。
二人が受付まで行って依頼達成の報告をする。へぇ~、別の街の組合で受けた依頼でも処理してくれるんだね。
そのことをフィー達に聞くと、
「達成報告だけは処理してくれるよ~」
「依頼内容自体はそれぞれの組合で異なっていますけどね」
って教えてもらった。限りなくリアルに近付けてる分、地域による多少の違いがあるってことかな。依頼は組合として出してるから、報酬の受け渡しくらいはできると。
「あっ。ステラさん! ステラさんですよね!?」
「え? アタシ?」
なんかいきなり男の人に呼ばれた。えっと、確か受付の職員さんだっけ? 二回くらいしか話しかけたことないはずだけど、普通に名前覚えられてるんだね。
「組合長からの指示で、ステラさんが組合に来たら応接室へ案内するように言われてるんです」
「なぜアタシ……」
「いえ、そこまではわかりませんが……。とにかく、応接室まで来てもらっていいですか?」
「三人も一緒でいい?」
明らかに楽しそうなイベントが起こりそうではあるけど、同時に面倒そうな感じがするから三人も巻き込んであげようという魂胆。
「大丈夫だと思います」
「じゃあお願い」
そして、男性職員さんに連れられて応接室へと向かうことに。
「絶対面倒事に私達を巻き込もうとしてるよね~?」
「今に始まったことではありませんし、良いんですけどね」
「お姉ちゃんってば、基本巻き込み体質なので」
「あれは体質じゃなくて性格だと思うよ~?」
「ですね」
後ろ、ちょっとうるさいよ。
「アタシ達は運命共同体。一心同体でしょ?」
「いや~、この場合は二心同体って感じだよね~」
アタシとアタシ以外で違うとでも言いたいのか。
「『よし、やったる!』と『しゃーない、手伝うわ』くらい違うね」
「冷静に考えたら、双方の考えに結構隔たりがあるわね」
「最初からわかってたでしょ~」
「まあね。けど、どの道巻き込まざるを得なくなると思ったから、最初から巻き込ませてもらったの」
アタシを名指しで呼んだってことは、間違いなくゴブリン関連だからね。現実みたいに色々と物事が動いてるけど、ここはゲームの中でもあるから多分だけどイベントフラグだと思うんだよ。なら、この街にいる以上間違いなく巻き込まれる。
職員さんが応接室まで案内した後、組合長を呼ぶために一旦退室する。
「にしても、まさか一支部の組合長とはいえ、立場の高い人から直接呼び出されるなんてすごいね~」
「クラリス達と一緒に来たからね。感謝とかそういうの含めて色々評価されてるんでしょ」
「普通、高い評価を得るのって相当時間かかるんだけどね~」
「そうですよ。そもそも評価される前に目に留めてもらうことから始めるものなんですから」
「いやね。それはクラリス達がいたからで――堂々巡りになりそうだから止めましょう、この話題」
その後すぐに組合長が来て、話を聞くことに。
「えっと、ステラさん。そちらのお二人は?」
「獣人の子がフィオーリ」
「よろしくお願いしま~す」
「そっちの堕天使の子がアマリリス」
「よろしくお願いします」
「二人共アタシやルーチェと同じ加護者よ」
「おお。それは何とも頼もしい」
実際かなり頼りになると思うよ。
「それで、アタシを呼んだのはどういう理由で?」
「はい。先日お伝えした調査の件、覚えていますか?」
「異変を調べるために斥候に行ってもらうって言ってたやつ?」
「それです。その斥候が今朝戻ってきたので報告を聞いたのですが……」
「ですが?」
「とんでもないことになっていました」
うん、それを早く説明してほしいんですけど。なんで要職についてる人ってこういう時に勿体ぶるような言動が多いんだろうか。
「実は、森の奥にゴブリンの集落を発見。戦闘準備をしていると」
「うわぁ……」
「そういう反応になるのもわかります……」
「数は把握してるの?」
「斥候の報告では、少なく見積もっても三百はいるだろうと」
結構いるなあ。これってイベントかなんか? ゴブリンの集団を討伐せよ、みたいな。
「斥候がそれを発見したのは二日前です。もしかすれば」
「もう進行してるかもってことね」
「はい」
本当に面倒なことになっちゃってた。
二日前ってなると、アタシがソロでのレベリングに夢中になった後、ちょっとしたミスで地面と大激突した日か。
「それで、その話をしたってことはアタシにそれをどうにかしてほしいって依頼?」
「あの数を一人で相手取るのは無理でしょう」
「でしょうね」
「進行してきてる可能性を考慮し、防衛隊を組織しようと考えています。その防衛戦力としてステラさんにはこの戦闘に加わってもらいたいのです」
「いいの? 実力不明なアタシをいきなり戦場に放り込んで」
「ラウム迷宮を踏破できるほどの実力をお持ちなら、充分過ぎる戦力ですよ」
ダンジョン攻略と防衛戦って全然違うものを求められると思うんだけど。常に一対一で戦うのとは違うし、荷が重い気が。
なんて悩んでいたら、目の前にウィンドウが表示される。
『イベントクエストが発生しました』
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ゴブリンの軍隊からツヴァイトを守れ!
亜人の森奥地にゴブリンが集落を形成。戦をするために武器や防具を集めた。
しかし、斥候部隊として森の表層部に送ったゴブリン・ソーズマン、ゴブリン・キャバルリー、ゴブリン・アーチャーが多く狩られたため、情報収集は諦めて攻勢に打って出ることに。現在進軍中。
三日後に到達するゴブリンの軍隊から街を守れ。
成功条件:ゴブリン軍隊の殲滅、もしくは撃退
失敗条件:防衛部隊の全滅
YES/NO
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アタシとルーチェのせいかあああああああああああああ!
「お、お姉ちゃん……」
「ルーチェのところにも同じウィンドウが出たのね?」
「うん……」
「私のところにも来たよ~」
「私もですね」
パーティを組んでれば防衛戦力の一つとして戦ってもらうってことね。結局どうあってもフィーとリリスは巻き込まれてたみたい。
「わかった。全力で防衛させてもらうわ」
「ありがとうございます! 防衛には領主軍も力を貸してくれるそうなので、冒険者達と共に頑張りましょう!」
「パシアンさんも参加するの?」
「ええ。どの道防衛に失敗すれば、私も殺されてしまうことになるでしょう。であれば、どこで何をしても同じです」
え、そうかな? 普通要職の人って後ろにいない?
「ご安心を別に陣頭指揮を取ろうというわけではありません。あくまで冒険者達に言うことを聞かせるために参加するだけです」
「言うこと聞かない人がいるの?」
「良くも悪くも荒くれ者の集まりですから。それに、中には軍を嫌ってる者もいるんですよ。たまに言い争いまでしているほどなので」
仮にも軍の肩書きを持ってる人相手にそんなことをする猛者がいるのか、冒険者には。
「冒険者をバカにする彼奴らには、いつか鉄槌を下すのです」
「アンタが筆頭なんじゃないの」
あれおかしいなあ。これまで感じてたナイスミドルって印象が完全に消えちゃったんだけど。軍となんかあったのかこの人は。
「もう既にクラリスさんとクララさんには伝えております。もしお二人と会うのであれば、同じチームとして動けるように手配しましょう」
「あの子達も戦力なんだ」
「実力はありますからね。少なくともツヴァイトの組合内ではトップクラスの実力者です」
「何となくわかるわ」
まあ散々見てきたからね。
何はともあれ、参加しないって選択肢はない。元々アタシとルーチェのせいみたいなものだし。もっとも、何もしなくてもこのイベントは起きそうだったけど。
とりあえず、まだ表示されてるウィンドウでYESを押してイベントクエストを受ける。
「ゴブリンが来るまでは色々と準備させてもらうわね」
「ええ。ぜひよろしくお願いします」
「また何かあったら呼んで」
「わかりました。では、またお会いしましょう」
そのまま組合を後にしてクラリスの店へと向かう。これからのことを少し話さないといけなさそうだし。
「結局巻き込まれちゃったね~」
「良いじゃないですか。楽しいですよ、こういうのも」
「そうだね~」
「今日ほど連帯責任って言葉をありがたく思った日はないわ」
「うん。連帯責任って言葉、すごく素敵だよね!」
「えーっと、こういう場合は連帯責任にはならないと思うな~」
「ステラさんとルーチェさんの自業自得みたいなものですからね」
「「ごめんなさい……」」
いやもうホントね。経験値効率が良いからってゴブリンを倒し過ぎたのは悪かったと思ってますよ。まさか、あれが斥候の役目を果たす奴らだったなんて誰が想像できるのさ。
「防衛戦終わるまではシリーズ防具のことクラリスちゃんにお願いしない方が良さそうだね~」
「まあ領主軍が参加するって話だから、ひょっとしたら武器の大量生産とか依頼されてそうだしね」
「そうなってると大変だね~。手伝えることがあったら手伝おっか~」
「そう言われても、できるのは素材集めくらいだけどね」
「鍛冶についてはなにもわからないもんね~」
話してる内にクラリス鍛冶屋に到着。四人でできることは何でもしようかと頷き合って店の中に入っていく。
「ん? あ、ステラちゃんにルーちゃん。おかえりー」
「おかえりなさいませ、ルーチェ、ステラ様。――と、もしかしてフィオーリ様とアマリリス様? お久しぶりです」
…………これは、なんて言えばいいんだろうか。
「ねえ、ステラちゃん。気のせいかな? 戦いの日が近いかもしれないって時に暢気に紅茶を飲んでる人が二人もいるんだけど」
「そうね。ちょっと疲れてるのよ。また出直したら予想通りの光景が広がってると思うわ」
「二人とも何言ってるの?」
「入り口で固まらず、一緒にお茶でも飲みませんか?」
気のせいじゃなかったみたいです。
店の中に入ると、真っ白で汚れ一つない丸テーブルにティーセットとケーキを乗せ、それを楽しんでいるクラリスとクララの姿があった。
「アンタ達ねえ。戦う準備とかそういうのはしないわけ?」
「慌てて何かすると色々失敗しちゃうっていうのが経験上わかってるからね」
「それに、大群と言ってもゴブリンですから」
「基本的にクララちゃんの魔法で三十体は一気に殲滅できるんだよ」
「その魔法の威力と規模に驚けば良いのか、アンタ達の楽観的な思考に突っ込めば良いのか……」
アタシが考えている以上に二人は大物なのかもしれないと思った。




