四人で
「ほへぇ~。おっきいね~」
「話には聞いていましたが、ここまでとは」
ラウム迷宮が内部にある大樹を見上げてフィーとリリスが驚嘆していた。二回の私闘を終えてからパーティを組み、イーストウッズを進みだして半日ほど。既に中間地点であるラウム迷宮の大樹が目の前に見えている。
あ、ちゃんとフィーにお店を聞いてポップコーンは確保したよ。
ここに来るまでの道中、特に問題は起こらなかった。アタシ達は四人揃って現状トップクラスと言えるほどのレベルと装備を持ってるから、道中の白兎なんて相手にすらなってない。
「あれが、ステラちゃんが見つけた新ダンジョンだね!」
「プレイヤーっていう括りの中だけで言うならそうかもね」
そもそもクララに案内してもらっただけ。自力で見つけたわけじゃないし、そう自慢できることじゃないと思う。
「いやいや、こういうのを見つけるフラグを立てられるだけすごいよ~」
「そんなものかな?」
「そんなものだよ~」
そうやって話してる内に大樹の根元へ辿り着いた。
「ここでちょっと休憩しましょうか」
「そうですね。装備を外して楽にしたいです」
「安心して武装解除していいわよ。全部フィーが対処してくれるみたいだから」
「誰もそんなこと言ってないよね!?」
「今アタシが言った」
「横暴! すごく横暴だよ!」
見張りはフィーに任せてストックポップコーンを一つ食べさせてもらおうかな。ストレージから出したそれに四つの手が伸びる。
「あれ? フィー、見張りは?」
「本気でやらせる気だったの!?」
「冗談なんだから本気にしなくていいんだよ?」
「わかってるよ!」
まあわかってなかったら、おやつに手を伸ばしたりはしないか。
「ところでリリス」
「何ですか?」
「ルーチェの炎天魔術を喰らった時にHPが回復してたのは何?」
「ああ。説明していませんでしたね」
「私も気になってました。差し支えなければ」
「もちろん、教えますよ」
こういうのを隠すつもりがないところが、よっぽどアタシ達のこと信頼してくれてるんだなあって、ちょっと嬉しくなる。
「あれは、偶然手に入れた装備の特殊効果です」
「特殊効果?」
「はい。私が持っている盾の特殊効果。魔力転換」
「響きがちょっとカッコいい気がする」
「あ、それわかる~」
魔力転換。盾に当たった魔法の魔力を奪い、装備者のHPかMPを任意に回復できる特殊効果。
「つまり、あの時はルーチェが放ったレーザーを吸収してHPに全部変換しちゃったわけね」
「そうなりますね」
「それ強過ぎない?」
「もちろん、無制限に使えるわけではありません。使えるのは一日一回のみです」
「一回使えるだけで充分脅威だから」
リリスと戦う時は、場合によっては魔法使わない方が良いね。下手に強力な魔法発動したら、無効化された挙句にリリスの糧になっちゃうし。
「これ、正式サービスが始まってから手に入れた盾なんですよ」
「βから引き継いだわけじゃないのね」
「まあ途中で攻略どころじゃなくなっちゃったからね。リリスちゃんの盾が見つかったのは、βでは行けなかった先の方にあるダンジョンだから」
「ああ。人壊の鎌?」
「あれ? ステラちゃん知ってたの?」
「ルーチェに聞いた」
「そっか」
休憩がてらにお互いの情報を色々と交換していく。まあ基本フィー達から出るのは新フィールドの情報だけで、それ以外だと二人のステータスを晒してもらったくらい。それ以外は大概掲示板で把握してたからね。
ちなみに、フィーのレベルは32、リリスのレベルは31らしい。予想よりは低かったなあ。30半ばくらいはいってるのかと思ってた。
そして、アタシ達からの情報量は半端ない。イベントストーリーから始まり、そこから掲示板にすら載せてない情報までステータスと一緒に伝えていく。聞いてる間に驚きの表情が段々と諦めたような感じのものになっていく二人を見るのは、ちょっと楽しかった。
「まあステラちゃんは何かしらやってくれるとは思ってたけど~」
「まさか、イベントストーリー絡みで防具だったり、確認されていなかった派生スキルだったりだとは。本当に色々と見つけましたね」
「流れに身を任せてたら、いつの間にかね」
何となくで行動してる内に何かを得るって結構あるよね。がむしゃらに剣振ってたらあれ? 新しいアーツが使えるようになってる、みたいな感じで。さっき確認したら新しいのが使えるようになってた。
「知った情報のすごさは理解してるけど、その過程は完全に軽視してるよね~」
「ステラさんなら良くあることですよ」
「お姉ちゃんは、自覚せずにえげつない努力をするような人なので……」
「自覚してないっていうか、当たり前のことだと思ってるだけじゃないかな~?」
「アンタ達三人で何の話してんの?」
「「「別に何でも……」」」
むぅ……。なんかすごく疎外感を感じる。そういうのかなりモヤッとするなあ。
「それよりさ~。シリーズ防具ってすっごく良いね~。私も作ってもらっちゃおうかな~?」
「私も、作ってもらいたいですね。この防具も限界を感じてきたので」
「そこら辺はツヴァイトに着いてからクラリスに相談してみれば?」
クラリスで思い出したけど、そろそろ宿探してそっちに泊まった方が良いかもしれない。いつまでもクラリス達の家にお邪魔し続けるのは迷惑になるかもだし。
「ところで、フィー達はギルドの方で活動しなくていいの?」
「当分は自由に行動していいってリーダーに言われたからね~」
「おそらくですが、新しく見つかったダンジョンで攻略の目途が立つまでは、メンバー個々人にレベリングや探索を求めるために自由行動にしてるのかと」
「それでこっちに来れたわけね」
「もちろん、招集がかかったら戻ることになっちゃうけどね~」
「その時は申し訳ありませんが、パーティを抜けることになります」
「大丈夫よ。ちょっとでも一緒に遊べれば充分満足だから」
本音を言えばずっと一緒に遊びたいんだけど、二人にだって色々やりたいことがあるだろうし、ギルドだって蔑ろにできるわけないし。遊べる時にだけ遊べればそれで良い。
「よしっ! ポップコーンもなくなったし、時間も有限だし。さっさと先に進めて一緒に楽しみましょう」
アタシの休憩終了宣言に三人は首肯し、再びイーストウッズを抜けるために歩き出す。
「リリス、お願い!」
「はい!」
リリスの盾が琥珀色の光を放ち、盾にぶつかって一瞬動きが止まった白狼をノックバックさせる。
「〈星落とし〉!」
星空を使って展開した満天の星が輝く夜空から、白金に煌く光が白狼へ向けて落ちていく。ノックバックで動けなくなってる白狼は回避行動すら取れずにアタシが放った魔法の餌食となった。まあ自動追尾だから避けても意味ないんだけど。
戦闘終了を知らせるリザルト画面がポップし、それぞれが構えてた武器を鞘に納める。
「どうステラちゃん? 今、星魔法のマスタリーどれくらいいった~?」
「さっきので93。ごめんね、マスタリー上げに付き合ってもらっちゃって」
「そういうのは言いっこなしだよ、ステラちゃん」
「そうですよ。むしろこういう時にこそ上げておくべきです」
「気にしなくていいんだよ、お姉ちゃん?」
イーストウッズの探索を再開してしばらく、もう少しでフィールドボスの闘争兎が出てくる場所に着くんだけど。
休憩を終わらせて大樹から離れる時、フィーの提案で攻略ついでに星魔法のマスタリー上げをしようという話になって、星空スキルと星魔法を何度も使っている。
星魔法のキャストタイムとリキャストタイムが長いせいか、一度の戦闘にかかる時間は大幅に伸びちゃってる。本当なら数秒で片が付くようなMOBに対して、倒してしまわないように三人共気を使って攻撃と防御をし続けてる。
それを為すために、無駄に洗練された無駄のない無駄な技術を揃って身につけてしまった。それはとても親しいフレンドでない限り、絶対しないであろう行動で。アタシはそれに甘える形になってるから、少し申し訳なく思っちゃってる。
けどそのおかげもあって、後数発でマスタリーが100を超えるところまで来た。
「後はボスの大白兎さんにでも撃ち込むことにする」
「オッケー。じゃあ先に進んじゃおうか」
先陣を切って歩き出すフィーにアタシ達三人が後ろからついていく。クラリス達の時と違って高レベル四人で戦うことになるから、前よりも楽になると思う。というか、前の時点でも大分差のある戦力だったし、今回本気で挑んだらTAレベルの戦闘になっちゃう可能性大なんだよね。
ちなみに、フィールドボスは戦ったことがないプレイヤーがパーティに一人でもいれば、必ずもう一度戦うことになる。
ただし、一度勝ったプレイヤーだけだと出てこないから、もしもボスの素材が欲しいってなった時は、都度初挑戦者とパーティを組んで周回することになる。面倒なことこの上ないからやる人は少ないと思うけどね。
まあフィールドボスである以上、普通のMOBを倒すよりは経験値も稼ぎ易いし、お金も貯まり易い。ほんの少しくらいは旨味のあるプレイ方法ではある。
アタシ達はそんな面倒なことせずにやっていけるから、そんなことしないけど。強いてするなら、初心者がどうしても先に行きたいってなった時のお手伝い的な感じになると思うな。こっち側に来る人がいるかはわかんないわけですが。
「もう目の前にボスフィールドあるっぽいし、このまま突撃しちゃおう!」
フィーのその掛け声で特に準備もせずボス戦に突入。リリスはクラリス並みの盾捌きを身につけ、アタシは星魔法のマスタリーが100を超えた。
闘争兎? 全員ノーダメージでサラッと倒しちゃいましたね。




