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ツヴァイトに到着!

「とーちゃーくっ!」


 ここがツヴァイトか。雰囲気はプルミエに似て中世ヨーロッパって感じの街並みになってる。外観規模的にもほぼ同等かな?


「それで、ステラちゃん達はこれからどうするの?」

「冒険者組合に登録しに行こうかなって」

「それじゃあ案内してあげるよ。私も生存報告しに行かないとだし」

「そういえば、クラリスと出会ったのってそれが理由だったっけ」


 一方的に迷宮へ行くことを告げて音沙汰なしの状態だったね。ずっと一緒にいたからアタシ達は生きてるって知ってたけど、この街の人達はそうじゃなかったから心配でしょうがなかったはず。

 その証拠にクラリスの姿を見て安堵の息を吐いてる人がそこら中にいるし。


 クラリスの案内で冒険者組合に到着し、躊躇いなく両開きの扉を開いて中へとズンズン進んでいく。アタシ達もその後に続いて屋内に入って中を見回す。

 今は昼間だからなのかアタシ達以外の人はほとんどいなくて、いるのは組合の職員だけって感じだった。まあ活動するのは昼の人が多いだろうし、予想外ってわけじゃない。


「こんにちは~」


 三人揃って入口付近で立ち止まっちゃってる間に、クララとクラリスはカウンターまで行って奥の職員に声をかけてた。


「ク、クラリスさん!? お戻りになられたのですね!」

「うん。心配かけちゃったし生存報告を、と思ってね」

「ご無事で何よりです!」

「ありがと。ところで組合長はいる? 生存報告もそうなんだけど、知り合いが冒険者組合に登録したいみたいなんだ」

「少々お待ちください! すぐに確認を取って参ります!」


 そう言ってクラリスが話してた男性職員が奥へと走り去った。


 少しして許可が出たようで、五人揃って組合長の応接室へと通された。扉の前で一度止まり、クラリスがノックして中から入室許可をもらうと、遠慮なくドアを押し開いて中に入った。


「こんにちは組合長。今日は私の生存報告をしようと思ってきました」

「失礼します」


 壮年で堀の深い顔立ちをしたナイスミドルがいた。その人がクラリスの姿を認めると、心底安堵したように胸を撫で下ろしていた。


「クラリスさん。ご無事で何よりです」

「ご心配をおかけしました。パシアン組合長」

「いえいえ、元気な姿が見られればそれで充分です」


 ここまで心配されるってことは、クラリスはよっぽど街の人達から愛されてるのか。代わりが利かないくらいに生産者として重要な存在なのか。


「それで、そちらにおられる方々は?」

「おっと、そうだった」


 そこでクラリスがアタシ達を組合長に紹介してくれて、その後組合長に促されて対面のソファーに座った。


「では改めて、初めましてですね。私は冒険者組合ツヴァイト支部組合長のパシアンと言います。以後お見知りおきを」

「丁寧にありがとうございます。先程紹介に与りましたステラです」

「同じくルーチェです。よろしくお願いします」

「……ベルナデッタと言います。よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 組合長のパシアンさんね。うん、ホントこれから色々とお世話になりそうだし、しっかりと覚えておこう。


「まずはステラさん。クラリスさんを救っていただきありがとうございます」

「いえ、アタシにできることをしただけなので」

「それでもです」


 このツヴァイトにおいて、クラリスの存在はなくてはならないものらしい。鍛冶師として天賦の才を持つクラリスは、この街にいる鍛冶師達全ての憧れであり目標でもあるとか。

 顔立ちも整ってるからアイドル的扱いまでされてるみたい。まあわからなくもないよ。姉妹揃ってすごい美人だからね。


 何度も何度も頭を下げてお礼をされた後、ようやく冒険者登録の手続きをしてもらうことになった。もう疲れたんだけど。

 偉い人に頭下げられるって一番精神的疲労がキツイと思うんだ。


「さて、冒険者登録でしたね。少し待っていてください。登録カードを持ってきますので」

「あ、私はもう登録してあるのでいりません」

「そうでしたか。では、ステラさんとベルナデッタさんの分だけですね」


 そう言い残してパシアンさんは応接室を一度出て行き、いつの間にか入ってた肩の力を抜く。


「はあ……。偉い人と喋るの苦手……」


 高校の校長先生とかね。なぜか学校紹介のPVに出てくれないかとか、制服紹介のモデルになってくれないかとか、そんな依頼をアタシに直接してくるんだよ。アタシより可愛い子いっぱいいるのに。


「にしても、クラリスって人気あるんだ?」

「そうでもないと思うけどなぁ」

「いえ、鍛冶師から幾度となく求婚を求められたり、告白されたりしています」

「うん、大体予想ついてた」


 高い鍛冶技能を持ってて顔立ちも整ってる。あんまり裏表のない性格してるみたいだし、大抵の男は放っておかないんじゃないかな。無計画に行動を起こすのが玉に瑕だけど。


 パシアンさんが戻ってくるまでそう時間はかからなかった。

 戻ってきて早々、アタシとベルに魔法陣が浮かび上がっている銀色のカードを手渡してくる。


「後はカード表面の魔法陣に触れるだけです」


 言われた通り魔法陣に触れると自動的にMPが消費されてすぐに回復した。

 パシアンさん曰く、魔力パターンを認識するために一時的に魔力を吸うだけで、認証が完了したら即座に魔力は戻るらしい。いるかな、その設定とか思ったアタシは悪くない。

 少し待つと魔法陣が消えて、代わりにアタシ自身の顔と名前が表示された。ファンタジーな世界でえらく現実的な免許みたいな感じになってて、ちょっとがっかりしちゃったのは内緒。


「これで登録完了です」


 以後、このカードは組合内で様々な手続きに使えるようになる。依頼の受発注をする時に使うっていうのが一番多いとか。


「発注もできるんですか?」

「できます。例えばベルナデッタさん」

「……私、ですか?」

「はい。貴女がもしポーションの材料が足りなくなった時に組合で材料の納品を依頼するだけで、冒険者がそれを採取してくれます」

「……なるほど」

「と言っても、相応に報酬も必要ですけどね。報酬無き依頼を受ける冒険者は絶対にいませんから」

「……わかりました」


 色々と説明を受けている内にいい時間になったから、組合を出ることにした。




 ルーチェとベルと三人で宿をどうするか話してたら、クラリスが自分の鍛冶屋に空き部屋があるってことで、その好意に甘えてお邪魔することになりました。

 今はその空き部屋でルーチェと会話している。ベルはポーション作製に使える部屋があるってことで、そこに行って絶賛ポーション作製中。


「冒険者組合ってラノベとかで見たようなランク制ってわけじゃないのね」

「βの時も同じようなこと言ってる人いたよ。確かフィーさんも言ってたかな」

「ああ。あの子なら言いそうね。ファンタジー物とか好きだから」

「お姉ちゃんもだよね」

「元々趣味だったっていうのはあるかもだけど、勧めてきたのはフィーよ」


 あの子がアタシにこういう系統のものを勧めてこなければ、こういう世界を知らずに生きてたんじゃないかな。そういう意味では結構感謝してる。


「それにしても、お姉ちゃんの装備性能良いよね」

「でしょ? この装備だけで結構いけるんじゃないかなって思ってる」

「多分だけど、当分新調しなくていいってくらいには使えると思うよ」

「あ、やっぱ序盤にはオーバースペックな装備だった?」

「相当ね。そもそも魔法剣とか初めて知ったよ。βでは見つかってなかったから」

「え、なかったの?」

「うん。少なくとも攻略組の中で持ってる人はいなかったと思う。属性付きの武器はあったんだけどね」


 毒属性くらいはあったらしいけど、さすがに魔力を流して属性を付加した上で魔法的ダメージまで入るような武器は見つかってなかったと。

 プレイヤーメイドの装備でもここまでの性能を持ったものは生産されてなかったらしい。


「そもそもシリーズ防具なんてのがあったこと自体、知られてないはずだからね」

「ああ。アタシも掲示板あさったけど、言われてみればそういう類の書き込みはなかったね。情報規制されてるだけかと思ってた」

「私もクラリスさん達に装備製作お願いしようかな?」

「お金と素材に余裕があるならいいんじゃない?」


 ただ、あれだけの腕を持つ鍛冶師だと相当高いと思うけど。


「聞くだけ聞きに行ってみる?」

「うん。作れそうなら作ってもらいたい」


 そう言ってルーチェと連れ立ってクラリス達がいるだろう作業場に行ってみる。


「え? ルーちゃんの新しい装備?」

「ええ。作ってもらえる?」

「素材があるなら別にいいけど、今の装備でもこの辺なら充分じゃないかな?」

「お姉ちゃんほどのものなんて贅沢は言いません。けど、それでもより良いものが欲しいんです」

「ルーちゃんがそれで良いって言うなら構わないよ。お友達特価である程度値引きもしてあげる」

「ありがとうございます!」

「ただ、ステラちゃんのみたくシリーズ防具になるかはわかんないよ? 私も夢中になって作ってる内に、いつの間にかそうなってたっていうだけだし」

「問題ありません。剣の性能などが向上するだけでも満足です」

「オッケー。それじゃあ使えそうな素材出してもらえる?」


 言われてルーチェがいくつかメニューを操作し、作業場の適当な空いてる場所に素材アイテムをごちゃっとマテリアル化する。

 それからはアタシの時と同じようにこれは使えそう、これは使わないと思うって感じで素材を選別していって、最終的に残った何種類かの素材で武器防具の両方を作ってもらうことになった。


「あ、そうだ。ラウムアンバー余ってるし、クララにもう一個装飾品作ってもらうとかは――クララは?」


 アタシのその言葉に苦笑しながら、今の今までアタシ達が見てなかった方向を指差す。そっちに顔を向ければ、なんか意気投合して語り合ってるクララとベルの姿があった。


「あれは何をしてるの?」

「ポーション作製について語り合ってるみたいだよ」

「クララってポーションも作れるの?」

「うん。細工が得意な器用さがポーション作りにも活かされてるんだよ」

「もしかして、クララって多才な子?」

「私は装備系の一点特化。クララちゃんは器用富裕なタイプ」


 器用富裕なんて言葉は初めて聞いたよ。


「クララって色々とクラリスのこと言うけど」

「うん。クララちゃんも充分天才だと思うんだよね」

「姉妹揃って生産技術が異常過ぎでしょ」


 クララの意外な才能を知った日だった。

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