新装備!
装備品のステータス的なのが出てくるので苦手な方はご注意を。
夜七時半。今は光と一緒に晩ご飯を食べてる途中。
「お姉ちゃん」
「な~に?」
「三の街に到着してパーティ一旦解散になったし、次のインから一緒に遊ぼう」
「早くない? つい数時間前は冒険者登録したばかりって話だったけど……」
「そうだったんだけどね。昼間に野良で斥候の募集したら、すごい優秀な人が入ってくれて。予想以上に攻略が進んだんだよ」
たまにあることだね。めっちゃ上手い人がパーティインしてくれて、今まで難しかったのが一気に楽になったとかいうの。
「まあそれなら良かった。そろそろ二の街に行こうと思ってたの」
「やっぱり東側?」
「うん」
「じゃあ、お手伝いするね」
「期待してるね。可愛い我が妹よ」
次のインの昼頃には合流できそうって話だから、それまでに装備を受け取っとこう。ポーションとかは自分で用意するって言ってるし、とりあえず噴水広場で待ち合わせってことになった。
「片付けてお風呂入ったら、インしようか」
「今日は夜更かししないようにね?」
「肝に銘じます」
二人揃って食事を終えて食器を洗い、一緒にお風呂に入った。いやあ、一昨日ぶりの二人風呂だー。ちなみに、湯船が結構大きいから二人で入っても全く苦にならない。
どうせなら足を延ばせて家族でも入れる風呂がいいだろー。っていうお父さんの意向でこうなりました。
「相変わらず光の肌は、つるつるすべすべもっちもちだねぇ」
「お姉ちゃん、くすぐったい」
「良いではないかー」
「良くないですー」
その後も洗いっこしたり、お互いの髪を弄り合ったりと姉妹仲良く楽しく過ごしてから、GOの世界へと飛び込んだ。
目を開けば、昨日借りた宿部屋の風景が見える。早くも見納めだけど。
「クララ達のところに行って装備受け取ろうかな。と思ったけど、そういえばステータスのこと忘れてたなぁ」
確か、昨日ので採取ツアーでレベルが一つ上がって27になったんだよね。
ステータスを確認したら、StPが45でSPが11。スキルは欲しいものがあるけど、ポイントが足りないから先延ばし。後はStPを振り分けるだけだね。
わりと迷ったけど、この際だから一気に目標を達成しようってことで、STRに30とMNDに2、それからAGIに13振り分けて完了。筋力値が150に到達して、敏捷値もついに100を超えた。
「さて、ステータス弄りも終わったし、宿を出ますか」
そのまま宿をチェックアウトして、クララ武器店へと足を向ける。なんかこう、新しい玩具を買ってもらう子供みたいにドキドキしてるよ。
そんな胸の高鳴りを抑えながら店の前まで来て、一つ深呼吸をしてから扉を開いて中に入る。
「あ、おはようございます。ステラ様」
「うん。おはよう、クララ」
開店はしてたみたいで、入れないってことはなかった。
「クララ、装備ってどうなってる?」
「完成してますよ。奥へどうぞ」
「おお。ありがとう」
逸る気持ちを抱えてクララについていく。通された先はつい先日も素材提供で訪れた作業場。そこには、やり切ったって感じで満足げな笑みを浮かべるクラリスと装備を身に纏ったマネキンっぽいのがあった。
「おっはよー! ステラちゃん! 渾身の装備一式が出来たよ!!」
「おはようクラリス。ありがとう、すっごい嬉しい!」
マネキンの傍まで行くと、その全容も明らかになった。
なんだろ。なんていうかこう、この世界の時代的な感覚で言うならかなり未来を行く先進的なデザインというか。まあ言っちゃうと、リアルで見るような女の子の私服みたいになってる。
全体的に見ると白を基調にしてて所々に青が混じる感じ。
ワイシャツにフード付きパーカーで、フードの部分にはウサギの耳をイメージしたようなものがついてる。手はフィンガーレスグローブ。腰はショートパンツで、脚はハーフブーツ。頭はイヤーマフラーかな? 耳に当てる部分がウサギの横顔みたいになってる。
首元にはウサギ型に加工されたラウムアンバーのペンダントがかかってて、腰元にはベルトポーチが装着されてる。金具部分がウサギなのは狙ってるの?
「いやあ、これ作るのすごい大変だったよ。その分、会心の出来と胸を張って言えるね!」
「そうね。現在進行形で胸反らし続けてるもんね」
「見た目も結構凝ったけど、性能も中々なんだよ?」
クラリス自慢の装備の解説をされることになった。触ればわかるんだろうけど、まあクラリスに任せよう。
「まず防御力だけど、今ステラちゃんが装備してるものの四十倍はあると思うな。細かい数字を合わせたら若干違うとは思うけど、そのくらいの差があるって思ってくれていいよ」
「その時点で充分過ぎる装備だと思うけどね」
「後、防具にも武器と同じように特殊効果が付加できるんだ。この装備一式は漏れなく全て特殊効果付きでーす!」
なんてぶっ飛んだ防具を作ってくれてるのか。序盤で着るにはオーバースペックな装備なんだけど。
「それから、シリーズ防具になってね。いくつかスキルが無条件発動するんだよ」
「聞いたことないんだけど、そんな装備」
「私もシリーズ防具なんて初めて作ったよ。こうなるんだね」
「知らなかったんだ……」
初めて作ったみたいだし、知らなくて当然なのかな?
「それで、発動するスキルは?」
「えっとね。〈聴覚強化〉と〈瞬歩〉、〈気配感知〉に〈身体強化〉だね」
瞬歩って何? それ以外の三つは知ってるけど、瞬歩なんてスキルは初めて聞いたよ?
見逃したかもと思ってスキル一覧を見直したけど、瞬歩なんてスキルは載ってなかった。ということは、まだ見つかってない派生スキルの可能性も。
「使ってみないとよくわかんないけど、ステラちゃんならすぐに適応しそうな感じがするよ」
「過大評価が過ぎる。さすがにそこまでの順応性は持ってないから」
「ふーん」
ふーんて……。まあ慣れるかどうかなんて装備者次第だし、そこら辺は我関せずなんだろうけど。
「にしても、すごい防具が出来たわね」
「私史上最高の自信作だからね。ここまでの装備は中々作れないよ?」
「でしょうね」
「後、クララちゃんが作ってくれたアクセサリーも高性能だよ」
クララが作ってくれたのは琥珀の首飾り。魔法系ステータスの上昇とかの効果が付与されてるっぽい。見てみればわかるかな。
「まあとりあえず見てみてよ。絶対満足のいく物になってるはずだから」
「そうね」
クラリスに促されて、一つずつその性能を確認していく。
名称:ラビットイヤーマフラー
レア度:★★★★
品質:極上
DEF:125
耐久:500
特殊効果:感覚能力上昇,聴覚保護,装備者固定
条件:LV20以上
名称:ラビットパーカー
レア度:★★★★
品質:極上
DEF:125
耐久:500
特殊効果:筋力値UP【大】,装備者固定
条件:LV20以上
名称:ラビットグローブ
レア度:★★★★
品質:極上
DEF:125
耐久:500
特殊効果:筋力値UP【大】,装備者固定
条件:LV20以上
名称:ラビットパンツ
レア度:★★★★
品質:極上
DEF:125
耐久:500
特殊効果:敏捷値UP【大】,装備者固定
条件:LV20以上
名称:ラビットブーツ
レア度:★★★★
品質:極上
DEF:125
耐久:500
特殊効果:敏捷値UP【大】,装備者固定
条件:LV20以上
名称:ラビットアンバー
レア度:★★★★
品質:極上
耐久:450
特殊効果:知力値UP【大】,魔力消費軽減【大】,装備者固定
条件:LV20以上
名称:ラビットポーチ
レア度:★★★★
品質:極上
耐久:450
特殊効果:ストレージ拡張【+20枠】,ショートカット【20枠】,装備者固定
条件:LV20以上
どれもこれも効果がおかしい。序盤で装備するものでは絶対にない。
ちなみに装備者固定は、最初にこれを装備した人のみに使用権限が発生し、以後死んでもドロップしない装備になってる。もちろん、破壊されたら消えてなくなるけど。
ショートカットは、ストレージに格納されてるアイテムをストレージの操作工程を短縮してマテリアル化する特殊効果。ポーチ系アクセサリー全てに付与されてるとか。
「どう? 気に入ってもらえた?」
「現状驚きが勝ってはいるけど、すごく嬉しい」
「良かったぁ~」
「お気に召してもらえたようで何よりです」
「それじゃあ、早速装備してみてよ、ステラちゃん!」
「喜んで」
そう言われてから気付いたけど、これどうすればいいんだろ?
「ああ。ごめん、忘れてた」
クラリスがテヘペロみたいな顔して謝って、装備品の前で指を動かすと突然防具もアクセサリーも消えてしまった。直後に、クラリスから譲渡のためのウィンドウが流されてくる。
アイテムを受け取りますかっていうテキストの下にある丸のボタンを押したら、ストレージの中に装備品が入っていった。
さて、早速装備してみようかな。
装備ショートカットを利用して、頭から順にどんどん防具を変えていく。高性能で着心地も良いし、尻尾も普通に出せるから楽だなぁ。
ステータスを確認したら、スキルの欄の下にエクイプメントスキルという項目が表示されてて、さっきクラリスが言ってた四つのスキルが表示されてた。
「どうかな?」
「控え目に言って最高」
「それは良かった」
不思議なことにイヤーマフラーをしてるにもかかわらず、普通に声が聞こえてくるという。
とりあえず、スキルをちょっと見てみようかな。
〈瞬歩〉マスタリー0
縮地の派生スキル。任意の位置を指定して瞬時に移動することができるスキル。連続発動可能回数は四回。マスタリー100ごとに行使回数が一回ずつ増える。
リキャストタイム24秒
予想以上に高性能なスキルだった。要するにこれちょっとした瞬間移動だよね。慣れるまではかなり振り回されると思うけど、使いこなせたら相当強力なスキルじゃん。
「えげつないスキルを装備するだけで使えるようになるとは」
「多分、白兎竜の素材もいっぱい使ったからじゃないかな」
「ホントお願いして正解だったって、心の底から思う」
「生産者冥利に尽きますなぁ。それじゃあ、後は武器だね」
次に作業台っぽいものがある場所に連れていかれる。そして、台の上には二本の剣が置かれていた。
一つは全ての光を反射する新雪のように白い刀身の剣。もう一つは光すら吸い込んでしまいそうな漆黒の刀身を持つ剣。
名称:ライトセイヴィヤ
レア度:★★★★
品質:極上
ATK:240
耐久:750
特殊効果:疾風刃,敏捷値UP【特大】,装備者固定
条件:LV20以上,STR100以上,INT50以上
名称:ダークネスヘレテック
レア度:★★★★
品質:極上
ATK:210
耐久:650
特殊効果:毒属性,ATK値UP【特大】,装備者固定
条件:LV20以上,STR120以上
武器まで高性能化した。素材を渡しただけでここまでのもの作るって、この子の鍛冶技術って一体どうなってんだろ?
というかここまで見て思ったけど、なんでクラリスはプレイヤーが作れなかったような極上品質の武器をポンポン作れるの?
「どうかな?」
「もうすごいね、としか言いようがないわ」
「でしょ~」
武器生成に使われたインゴットは助けてくれたお礼とかで、タダでもらうことになった。せめて鉱石素材分のお金だけでも払おうと思ったんだけど、固辞されてしまうという。
「ねえ。毒属性っていうのは?」
「毒属性は斬り付けた相手に毒素を蓄積させて毒状態にして、生命力をちょっとずつ削っていく属性のこと」
要は無駄に高いHPを持つ相手を効果的に倒すための属性か。当然だけど、毒が効かない敵もいる。ゴーレムとかアンデッド系とか、そういう無生物には一切効かないってことだね。
この二本の剣もさっきと同じように装備する。ズシリとした重みが、自分が強くなれたと思わせてくれる。
「よっし、これで準備完了かな」
「うん。カッコ可愛いよステラちゃん!」
「お姉様の次に素敵です」
人を褒める時は他人との比較はナンセンスだよクララ。しかも、比べる相手の方が上位にいるっていう何とも不思議な感覚が残る状態だし。お姉様至上主義が極まってるね。
「とりあえず、お礼は済んだね」
「こっちこそ、良い装備をありがとう」
『イベント【姉妹の絆】一章をクリアしました。二章が解放されています。続けて受けることができます。開始しますか?』
えぇ……。章仕立てですか?
パラメータ上昇と装備変更によって変動したステータスです。
ステラ Lv27
種族:星魔
HP:1350
MP:2400(+60)
ATK:255(225)
DEF:625
STR:150(+30)
VIT:45
INT:60
MND:80(+2)
AGI:105(+13)
DEX:60
スキル
〈流星〉〈星空〉〈星魔法〉〈神聖〉〈福音〉〈片手剣術〉〈回避術〉〈 〉〈 〉〈 〉
エクイプメントスキル
〈聴覚強化〉〈瞬歩〉〈気配感知〉〈身体強化〉
StP0 SP11