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二人共強いね

 戦闘準備としてまずアタシはステータスの確認。そして取ろうと決めてたスキルを取得することに。今のレベルが18だから、スキル枠は二つの空きがある。休憩が決まるまではステータスをいじらないようにしてたから、ステータスポイントもスキルポイントも両方とも十分ある。


 前よりレベルが10も上がってるから、ステータスポイントは50でスキルポイントは17。欲しいスキルには十分足りるし、ステータスポイントも結構あるから中々強くなれそう。というわけで振り分け&スキル取得をば。


 竜系MOBが相手だからできる限り体力は上げておきたい。避ければいいとか思ってたけど、今回はそれが通用するかわかんないし。クララとクラリスがいるからあんまり早い段階で乙るわけにもいかないからね。


 そして新しく取得したスキルは〈回避術〉。片手剣術の次に取りたかったスキルなんだよねぇこれ。取得にかかったSPは15。きついなぁ……。


〈回避術〉マスタリー0

 使用すると一定時間だけ相手の攻撃予測線が見えるようになるスキル。ただし、予測線は確率でしか見えない。アクティブスキル。

発動ワード「回避(イベイド)

リキャストタイム12秒


 マスタリーが百に達するまでは三十秒間だけ十パーセントの確率で攻撃予測線が見えるようになる。確率一割は低いかもしれないけど、あるとないとでは結構変わってくるとアタシは思ってる。たまたまだろうとHP全損レベルな攻撃が見えれば大助かりだし。


 まあただ、点・線・面それぞれの攻撃が個別じゃなくて一緒くたにされてることがちょっとキツイ。攻撃予測線が見えるだけで危険域までは教えてくれないから、最悪回避行動を取っても意味がない可能性もある。そこはもう、これまで培ってきたアタシのゲーム感次第だろうなぁ。


「そうだ。クラリスは攻撃手段あるの?」

「片手槌なら使えるよ?」

「それ以外は?」

「ないよ」

「…………」


 接近戦はアタシだけでいいんだけど。っていうか、できれば二人には前に出てほしくないんだよね。近付くのはかなりのリスクがあるし。プレイヤーと違ってたった一つしかない命だから、リスクの大きさはアタシの比じゃない。


 訊けば、クララのように魔法が使えるってわけでもないっぽい。強いて言えば自分と傍にいる仲間を守るために〈盾術〉を習得していること。それを聞いてしまった以上、取れる戦法というか手段は一つしかない。


 クララとクラリスは後方待機。クララは状況を見ながら魔法による遠距離攻撃。MOBの攻撃が来た時はクラリスの持ってるタワーシールドでガード。とにかくダメージを受けないように立ち回ってもらうことにしよう。


 ある程度の立ち回りが決まったところで、クララとクラリスの二人に装備の最終メンテナンスをしてもらった。ボス戦を目の前にして贅沢な限りである。普通ボス直前に装備ステータスマックスとかほとんどないからね。


 まあそこら辺はどうでもいいや。とりあえず、装備関連は二人に任せれば問題は全くなし。後は、持久戦になることも考慮してアイテムの確認と、望み薄だけど掲示板を見てクラリスが見た竜系MOBと特徴が一致するモンスター情報がないか調べてみようかな。




 しばらく掲示板やら攻略サイトやらをあさってみたけど、目ぼしい情報は一切なし。まあ期待なんて端からほとんどしてなかったから問題ない。見つけられれば儲けものくらいにしか思ってなかったから。


 イベントストーリーなんてもの自体がβではなかったみたいだし、ダンジョンの情報も結構少なかった。仮に今から戦うのがイベント限定ボスだとすれば、情報がないのは当然と言える。フィー程ではないにしてもアタシだって自称とはいえゲーマーの端くれ。燃えるってものよ。


「クララ、クラリス。準備はいい?」

「はい。いつでも大丈夫です」

「どんとこい!」

「じゃあ行きましょうか」


 アタシとクララがこの安全地帯に入ってきた方とは逆方向にある坂道に向けて、三人で歩き出す。目指すはボス撃破。素材取れるならたんまり取ってあげる。


 坂道は緩やかで少し進んだ後は左に向かってカーブが続いている。上ってる感覚はあるから多分螺旋状の坂道になってるんだと思う。道中はMOBが出ることもなく、アタシ達三人は歩くだけで迷宮の最奥にしてこの大樹の頂上である場所に到着した。


 直径百メートルはあるだろうバトルフィールド。足元を見れば切り株にあるような年輪っぽい模様がいくつもある。頭上には大都会では見ることができないような綺麗な星空が広がっていた。空を埋め尽くさんばかりに瞬く無数の星々。優しく神秘的な光で地上を照らす満月。アタシが住む場所では決してみられない景色がそこにあった。


 そして、敵は広場のど真ん中で寝ていた。自分が強者だからなのか自分の巣だと思っているからなのかわからないけど、随分とまあ暢気な。


 月光を吸い込んで輝いているという錯覚を起こしそうな程白い無数の鱗。強靭な四肢を持ち、前足に翼がある竜系MOB。クラリスの言った通り、その竜に纏わりつくような風が吹いている。普通風は目に見えるものじゃないはずだけど、風のようなエフェクトがあるおかげで風を纏っているというのがわかる。


 アタシ達がエリアに踏み込むと同時に、竜は閉じていた瞼を開きその双眸を覗かせる。白い体の中で唯一紅く光る瞳。遠くてわかりにくいけど、その二つの紅眼はアタシ達を間違いなく見ている。


「さぁて、戦闘開始かな?」

「お姉様の邪魔をする愚物を排除します」

「クララちゃんはしっかり守るからね」


 クララのキャラがここにきて崩壊の兆しを見せていた。シスコンを拗らせ過ぎて日常生活に支障をきたさないように気を付けてもらいたい。そこら辺の管理はクラリスに丸投げです。


 背中から二本の魔法剣を抜き放ち、クララが杖をクラリスがタワーシールドを構えて戦闘態勢になる。それを見た純白の竜はアタシ達を敵と認識したのか、完全に起き上がりこちらを威圧するかのように咆哮した。


 咆哮を終えた竜の頭上に《The Galedrake》の文字と三本のHPバーが表示される。その直後、軽い溜めをし一気に真白き竜が跳躍してきた。その速度はこれまで戦ってきたどんなMOBをも凌駕していた。


「〈ディフェンスアップ〉!」

「“回避イベイド”!」


 クララが一位階のバフを掛けると同時に新たに習得したスキルの発動ワードを唱える。竜の尾と重なるような青い線がアタシ達の左側から薙ぎ払われるように見える。範囲が広く、回避は間に合いそうになかった。


「任せて!」


 クラリスの一声。アタシのやや左前に出てきたクラリスがタワーシールドを構えると、琥珀色の光が大盾を包み込む。そこに尻尾の薙ぎ払いが当たり、クラリスは体勢を一切崩すことなく受け止めきった。そして、モンスター側には軽い硬直が発生する。


「〈ファイアアロー〉!」


 ファイアアロー。初期段階で習得できる魔法スキル〈火魔法〉。その二位階で使える攻撃魔法の一つ。姉が魔物の攻撃を完全に受け止めてくれると信じていたクララは、クラリスが前に出たその時点で詠唱キャストタイムを開始し、竜の動きが止まった瞬間に寸分違わず魔法を発動し着弾させた。


 基本的な属性魔法系スキルの二位階にあるアロー系は貫通力と速度に特化している。その分攻撃力は低い方だけど、硬い外殻や鱗を持つ相手だと威力重視な魔法では逆にダメージを与えられないということになりかねない。一点集中で魔法を発動する場合は貫通力特化のアロー系の方がダメージを与えやすい。


 目の前にいるゲイルドレイクはどう見たって硬そうな鱗を持っている。貫通力特化の魔法を使うという判断は全く間違っていない。ただ、なんでこんな序盤で出会えるような現住人が二位階の魔法を使えるのかという疑問が湧いてくるけど。


 しかも迷宮攻略の道中で確認してみたら、〈詠唱短縮〉なんていうスキルをクララは身に付けているらしい。このスキルは序盤で習得することが困難な上位スキルとしてプレイヤーには認知されている。習得条件が厳しいからっていうのが理由の大半を占めてる。残りの部分は面倒くさいというもの。


 ていうかちょっと待とうか。ダメージ値おかしくない? 一番上のHPバーが二割くらい削れたんだけど……。


「思ったよりクララちゃんの魔法が効いてないね」

「え、あれで効いてない方なの?」

「うん。あれくらいの魔物がクララちゃんの魔法を一発喰らったら怯んじゃうんだけどね。いつもなら」


 あれくらいのMOBだと現状のプレイヤーじゃ、魔法一発で怯むどころかあれ程削るっていうのがまずムリそうなんですがそれは……。

 クララの知力値(INT)が高いのか、イベント限定MOB故の弱体化でもされてるのか。ちょっと判断し難いな。魔法耐性が低いって可能性もあるよね。


 まあいずれにしても、ちょっと作戦内容の変更が必要かもしれない。二位階魔法一発であんなにHP削れるってなると、アタシにヘイトを集めるのが難しそう……。


 あれこれ考えてる内にゲイルドレイクが風属性っぽいブレス攻撃を放ってきて、クラリスが〈盾術〉のアーツで完璧に止め、クララが放つ炎の矢がカウンター気味にヒットする。さっきと同じくらいHPが減った。


「ちょっと斬ってみるか……」

「オッケー。じゃあ軽く押し返してみるね」

「よろしく」


 クラリスが右手を盾を持った左手に添えて腰を落とすと、再び大盾が琥珀色の光を纏う。直後、急接近してきたゲイルドレイクが右前足での引っ掻き攻撃を繰り出してくる。


 それを受け止めた後、溜めた力を一気に解放する。盾術スキルの中では数少ない攻撃アーツの一つ。相手の攻撃を受けた後、盾を押し出してノックバック効果があるカウンターを放つアーツ〈バッシュ〉。


 ゲイルドレイクがノックバックして距離が開く。そして、HPバーはパッと見じゃほとんど分からないくらいしか減ってなかった。


「今だよ!」

「うん」

「〈ファイアアロー〉!」


 再びクララの炎矢が炸裂。敵が怯み、その間に魔法剣に炎を纏わせて接近する。走りながら右手に持ったフレイムグリッターに魔力を通して火炎刃を発動する。


 素の敏捷値(AGI)に俊足のアンクレットの上昇補正がかかっているおかげで、結構なスピードで敵MOBに接近できた。走りながら構えて立ち上げたアーツで全力の斬り下ろしを叩き込む。


 ゲイルドレイクが怯み、HPバーが一割程削れる。アーツの補正付きでこの威力か。やっぱクララに魔法使ってもらった方が効率いい? 何回も攻撃受け止めてるのにミリすらHP減ってないタンクがいるし、この際だからアタシも魔法使ってみようかな?


 こういう思考を巡らせてる間に体は自然に動き、炎を纏わせた二本の剣で何度も斬り付けていく。あ、HPバーが一本消滅しちゃった。これ、ボス戦じゃなくてイベントバトルか。しかも勝てる方の。

 そのまま適度にダメージを与えて、敵さんが右前足での薙ぎ払い攻撃をしてきたのに合わせて後方に大きく跳躍してクラリス達の傍に戻る。


「ねぇクラリス」

「なぁに?」

「アレの攻撃全部受けきれる?」

「余裕」


 余裕なんだ……。


 訊けば、クラリスがあの白い竜相手に勝負を挑まなかったのは、単純にダメージソースとなる武器やスキルがなかったから。片手鎚は使えるけど、一回攻撃したら大したダメージが入らなかったらしい。そういえばバッシュもあまり効いてなかったね。


 クラリスは盾の使い方が上手い上に、堅過ぎて魔物のダメージが通らない。しかしながら、高い攻撃力があるわけじゃないから、自分一人じゃ無理だと悟ったとか。


 まあお互いに決定打がない勝負程イヤな泥仕合もないよね。で、結局誰かが来るまであの安全地帯で待っていることにしたと。誰も来なかったらどうしようとか思わなかったの?


「クララちゃんが絶対誰かを連れてくるって思ってたから」

「お姉様の信頼に応えられてよかったです」


 クララさんや。喜色満面の笑みで嬉しがってるとこ悪いけど、君の敬愛するお姉様は無謀・無計画を地で行く鉄砲玉だよ? いいのかいその反応で?


「お姉様のことはこれからも私が支えます。なので、目の前にいる魔物(邪魔者)の排除。一緒に頑張りましょう」

「うん。そうだねー」


 なんか、この妹がいるから姉がどんどんダメになっていってるような感じがしてきたんだけど……。


「それでステラちゃん。攻撃受けきれるどうこうっていうのは?」

「あぁそれね……」


 まあ単純にアタシも魔法を使ってみたいだけなんだよね。その内、マスタリーを上げる必要性も出てこないとも限らないし。だったら、目と鼻の先にチャンスがある今の内に少しでも上げとこうかなってね。


「じゃあステラちゃんはクララちゃんと一緒に魔法攻撃して、私はアレの攻撃を全部受け止めればいいんだね?」

「できる?」

「うん。大丈夫だよー」

「ならよろしくね」

「オッケー」

「“星空スターリースカイ”!」


 クラリスの返事を聞いてすぐにスキルを発動する。MPは継続的に消費されてるから発動してるとは思うんだけど、元が夜空だけに見ただけじゃ発動したかが全くわからない。


 魔法の使い方は、とりあえず使いたい魔法の行使を念じる。そして、キャストタイムが0になったら魔法名を声に出す。そしたら自動的に発動する。

 フィー曰く、魔法によってエイミングして放つ必要があるらしい。アタシの場合は自動追尾の特殊効果があるから大雑把にMOBを狙うだけでいいんだけどね。


 キャストタイムを待っていると、敵が上体を仰け反らせてブレス態勢を取ってきた。


「お姉様!」

「任せて!」


 一度振り上げた盾を地面に打ち付けると、タワーシールドを中心に一回り大きな琥珀色の透明な障壁がクラリスの前方に展開される。こんな盾アーツ見たことないんですけど……。

 βテスターからの情報に乗ってなかったアーツ。琥珀色ってことは多分、高いスキル熟練度を要求された先で解放される盾アーツなんだと思うけど。


 そのアーツの力たるや、序盤のゲームバランス崩壊させるレベルだった。

 さっきとは違う継続ダメージ型と思しき強力なブレス攻撃。だというのに、それを受けたにもかかわらずダメージが入らないどころか、全く後退しないとは。かなり高位の盾アーツに違いない。


「ステラ様。行けますか?」

「うん。キャストタイム(詠唱)完了」

「オッケー!」

「合わせます」

「いっけぇっ!」


 クラリスがアーツを発動し、敵MOBをノックバックさせる。そこでできた隙にアタシ達の魔法を叩き込む。


「〈星落とし(エトワール・ロゼ)〉!」

「〈フレイムジャベリン〉!」


 炎の槍が白き竜の頭部に直撃し、天空から一条の光が隕石の如く落下してきて炸裂した。この二発でHPバーが一本分くらい消失した。


「二人共魔法の威力高いね」

「お姉様の盾アーツも素晴らしかったです」

「ありがと~」

「まだ決着ついてないから和やかムードはもうちょっと我慢してくれる?」


 実際ここからがわからない。HPバーが一本分消滅してゲージが半分くらいになってる。何かしら変化する可能性は捨てきれない。攻撃パターンが変わるとか、加速したり攻撃力が上がったりとか。

 それを証明するかのようにゲイルドレイクが咆哮する。――ってうるさっ!

 思わず耳を塞いでしまい、ちょっとした行動不能状態に陥った。


「あの竜の咆哮はまともに喰らったら動けなくなるから気を付けて!」

「もうちょっと早く言いなさいよ!」


 まともに喰らっちゃったよ。チラッと横目で見たらクララまで動けなくなってて、その間クラリスが盾技でアタシ達を守りきってくれた。多分二秒くらい。


「さぁーて、しばらく魔法使えないし接近戦ね」

「使い勝手悪いよね。ステラちゃんの魔法」

「そこが唯一の欠点ってとこ」


 リキャストタイムが終わった回避術を再び発動。使い続けてればいつか確率も十割になるだろうと信じて地を蹴る。

 抜刀した剣に魔力を通して刀身に炎を纏わせる。そして、アーツを放つために剣を動かそうとした時、MOBがアタシに向かって尻尾を薙ぎ払ってきた。


「っ!」


 咄嗟に左斜め方向に沈み込んで躱しつつ、左の剣を水平に持ってくる。アーツが立ち上がり、すれ違い様に横薙ぎに剣を振る。

 片手剣術アーツ〈ウィズ〉。マスタリーが50に到達すると使用可能になるアーツ。戦闘中の選択肢が増えるのでありがたいでございます。


 加速した勢いのまま後ろまで体を流し、態勢を整えようと剣を戻そうと動かす。

 その時、アタシの頭になぜか「いけんじゃね?」みたいな思考が浮かび上がった。何がとか思う間もなくアーツの反動で後ろに流れてた右の剣をそのまま構える。


「でやぁっ!」


 できた。右と左の剣で交互にアーツを発動みたいな感じのことが。アーツコネクトとでも名付けようかこれ。


「ステラちゃん危ない!」

「ん? ――うおっとぉっ!?」


 緊急バックジャンプ回避。

 野郎振り向き様に爪で攻撃してきやがった。クラリスが教えてくれなかったモロ喰らってたね。攻撃速度がさっきよりも早くなってるっぽい。いやいや危なかったなぁ。


 とりあえず、クラリス達のところに戻ろう。そろそろ星落としのリキャストタイムも終わるだろうし。

 この一撃で決めたいね。


 退避がてら、ゲイルドレイクを連続で斬り付けていくのも忘れない。隙あらばダメージ与えとかないとね。

 そのまま納刀してクラリスの盾の後ろにスライディングイン。特に意味はない。


 ちなみに、ちょっとやってみようと思って剣を持ったまま魔法発動を念じてみたけど、うんともすんとも言いませんでした。後からクララに聞いたら、魔法士用の杖とかじゃない限りは、何かを手に持ったまま魔法を発動することはできないらしい。また一つ賢くなったね。


「多分、残体力的に魔法を一発ずつ撃ち込めば倒せると思う」

「わかりました。全力で行きます」


 しばらくクラリスに攻撃をいなしてもらう。その間にアタシとクララはキャストタイムを済ませる。


「弾くよ!」

「はい!」

「いつでもオッケー」

「とりゃーっ!」


 白竜の突進攻撃を防いでバッシュを発動した。相手は怯んでいる。


「ファイヤー!」

「〈星落とし(エトワール・ロゼ)〉」

「〈フレイムジャベリン〉」


 二つの魔法攻撃が相手を襲う。残りのHPゲージを吹き飛ばし、バーが消滅した数瞬後にゲイルドレイクは光の粒子となって爆散した。


「よっし!」

「やりましたね、お姉様!」


 抱き合って喜ぶ姉妹。中空にはCongratulationsの文字が浮かび上がり、目の前にリザルト画面が出てくる。へー、さっきの白兎竜って言うんだ。確かに接近戦の時ぴょんぴょん飛び回ってた気がする。心はぴょんぴょんしないけど。


「喜ぶのもいいけど、早く〈ラウムの神枝〉取ってきたら?」

「おお、そうだった」

「いってらっしゃいませ」


 さて、後は帰るだけになった。来る時と同じでアタシを先頭にして下っていけば問題ないと思うけど、念のため武装はしっかりと整えてもらわないとね。


「ただいま」

「おかえりなさいませ」

「どうだった?」

「ばっちり確保完了。これでクララちゃんに杖を作ってあげられるよ」

「お姉様……ありがとうございます」


 感無量っといった感じで嬉し涙を流すクララ。


「そうだ。ステラちゃんも魔法使うみたいだし、杖とかいる?」

「特にいらないわ。見ての通り両手に剣持ってるから持つ余裕なさそうだし」

「サブウェポンとして持つのもありじゃないかな? ワンドくらいなら作ってあげられるよ?」

「ありがたい申し出だけど、どっちかっていうと防具の方が欲しいかな」

「そっかぁ。じゃあ作ってあげるよ」

「え、いいの?」

「うん。クララちゃんを手伝ってくれたお礼と私に協力してくれたお礼を兼ねて、新しい武器も作るよ」

「それはありがたいわ。元々持ってた武器だとこの森抜けるのが大変そうだったのよ」


 クラリスが言うには、この森【イーストウッド】はプルミエ周辺の中では最も魔物のレベルが高い森だったみたいで、踏破難易度も相応に高いっぽい。聞いてないんですけど、誰だ森の情報を集めなかった奴。


「まあこの森を抜けるのに相応の装備必要みたいだし、クラリスが作ってくれるって言うならお願いしようかな」

「いいよ。素材持ち込みの費用なしでいいよ」

「お金くらいは払うけど?」

「言ったでしょ。お礼だよ、お礼」

「そう。なら、お言葉に甘えようかな」


 こうして、アタシはよりレベルの高い装備を手に入れることになった。情けは人の為ならずって感じかな?


 一つ下の安全地帯でしばらく休憩した後、迷宮を出てプルミエへと帰還する。

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