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キャラクリ!①

長くなったのでわけました

 アタシは部屋に戻って逸る気持ちを落ち着かせながらViLiを手に取る。フォルムは数年前に流行ったヘッドマウントディスプレイによく似てる。もっとも、似てるのは見た目だけで中は完全に別物だけどね。


 ViLiにコードを繋げて充電開始。昨日使いまくったばっかりで、電池残量が危なかったからね。ただし、電池残量がヤバいからって電源コードを繋いだままプレイするのは、誤作動を起こす可能性があるってことで禁止されてる。

 だから、充電中は暇潰しがてらGOに付属された説明書を読み込む。アタシって新しいゲームは説明書を読んでからプレイするタイプなんだよ。さりげなく重要な情報が載せられてることも多いからね。


 説明書を読み始めて一時間くらいかな。ViLiの充電完了を知らせる音が鳴った。

 充電コードを本体から抜いてゲームチップを挿入し、サッと装着。ヤダ真っ暗。そしてベッドに横になって異世界に旅立つ魔法の言葉を紡ぐ。


「バーチャルイン!」


 音声認識システムがその声を拾ってハードが起動。気が付いたら全方位が見事に真っ暗な世界にいた。いつもならマイホームにインするんだけどね。今、アタシのViLiは挿入したゲームソフトを自動的に読み込むように設定してるから。


『ブレインスキャン開始。――完了。異常は認められませんでした』


 どこか機械的で無機質な声が空間全体に響き渡る。ゲーム内アナウンスとかもこんな感じなんだよね。ViLiを初めて使った時はちょっとだけビックリした。


『ゲームデータロード。《Genesis Online》を確認しました』

『《Genesis Online》の世界へようこそ』


 途中からアナウンスの声色が変わる。これがGOの中に入ったってことの証明。いやぁ、今めっちゃドキドキしてる!


『まずはキャラクタークリエイトです。βテストに参加した方はコードを入力するだけでβテストの時に使用していたプレイヤーデータを使用することができます。コードを入力しますか?』


 目の前にウィンドウが展開される。ちょっとビビった。今アナウンスが言ったのと同じ言葉がテキストボックスに表示され、ウィンドウ下部に丸とバツのボタンがある。

 当然ながらバツをタップ。βテストはやりたかったけど、やれてない。


『それでは、プレイヤーキャラクターを作成します。ViLiアカウントに使用されている名前を使用しますか?』


 もちろんイエス。展開されたウィンドウの丸ボタンをタップする。

 ViLiアカウントのアカウントネームは重複しないようになってるから、ほぼ間違いなく名前は使える。まあ誰かがゲーム毎に違う名前を使ってなければだけど。


『プレイヤーネーム〈ステラ〉で登録を完了しました。続いてアバター作成に移ります。ViLiアカウントに登録されている身体データを使用しますか?』


 大丈夫だったみたい。安心して丸ボタンをタップ。直後、目の前に普段ViLiで使っているアバターが現れる。

 いつも現実でアタシ自身が見てるアタシの顔だ。違うのは白髪のショートボブに澄んだ蒼穹の瞳。もちろんアバター作成でこういう風に変更した。


 容姿そのものは現実のアタシのまま。下手に弄るとプロデザイナーでもない限りブチャイクな見た目になるからね。そんなのは絶対にイヤだ。

 後は体感の問題かな。現実の自分に限りなく近い体格でアバターを作らないと、ViLiのモーションアシストシステムが働いて動かし難くなるんだよね。その事もあって、アタシは容姿をほとんど弄らずにアバターを作ってる。


『アバターの容姿を変更しますか?』


 これはノー。


『続いてステータスを決定します。まずは種族をお選びください』


 またしてもウィンドウが展開される。結構色々あるっぽい。画面をスクロールしていけばたくさんの種族があることが確認できた。多い、多いよ。

 まあ多いのは獣人種が〈獣人〉で一括りにされてなくて、犬族とか猫族とか、細かく分かれてるからっていうのも理由の一つだと思うけど。


 種族特性もそれぞれに設定されてる。人間は平均的なステータスで、スキルもほぼ全て取得できる。獣人族は、それぞれに与えられた特技がエクストラスキルとして自動取得になってるみたい。

 犬なら〈嗅覚強化〉、猫なら〈敏捷上昇〉、兎なら〈聴覚強化〉って感じで。


 他にも色々とある。エルフは魔法系ステータスの初期パラメータが高めに設定されてる上、魔法系スキルは全て取得可能。

 魔人とかもある。魔人は生命力(VIT)が他に比べてやや低いけど、他のステータスは軒並み高いしスキルもほとんど取得できる。ただゲームバランスのためか、スキル取得時に使うスキルポイントが他の種族より少し多めになってるみたいだね。


 説明文を軽く読みつつザーッと見流して一番下までスクロールしたら、ランダムっていう項目があった。なんだこの魅力溢れる四文字は。

 さて、どうしようか。ガチャみたいなギャンブル性のあるコンテンツはキライじゃない。けど、魔法剣士を目指すなら器用タイプの人族にした方がやりやすそうだし。

 たっぷり、それはもうたっぷりと悩んだ結果。


『種族をランダムで決定します。よろしいですか?』


 イエス! ガチャの魅力には勝てなかったよ……。

 丸ボタンをタップした途端、光が爆ぜた。突然の閃光に目を閉じ、瞼の裏に焼けついた光が消えるのとほぼ同時にアナウンスが聞こえてきた。


『種族が決定しました。貴女の種族は〈星魔〉です』


 うん? そんな種族、選択肢にあったっけ?

 いや、なかったはず。軽く見流しつつ、けど結構しっかりめに確認したから見落としはしてなかったと思うんだけど。


「せいま? って何ですか?」

『魔人族の中でも特に能力が高く星の加護を得るに至った種族です。この種族はレア種族となります』

「レア種族?」

『種族をランダムで決定した場合、ブレインスキャンで読み取った個人のViLiによるログイン総時間と潜在能力。そして運によって稀にレア種族を当てることがあります』


 レア種族なんてものがあったんだね。説明書とか掲示板とかには書いてなかったから、裏仕様的な感じかな?

 掲示板自体はあったかもしれないけど、多分運営側が意図的にその掲示板を見れないようにしたんだろうね。


「他にもいるんですか?」

『現在確認されているだけでも百名ほどいます。本人に自覚がないだけで、潜在能力が高い方はそれなりにいらっしゃいますので』

「ふぅん。じゃあアタシもそのパターン?」

『そうなります』


 良かったあ。アタシだけがレア種族だったらどうしようかなって思った。

 ゲーム内で目立つのはキライじゃないけど、妬み嫉みで攻撃されたくはないし。まあ避けられないことではあるんだろうけどね。ネットゲーマーは嫉妬深いから。


『なお、ランダムで選ばれた種族は一度決定すると変更できません』


 そういう大事なことは先に言ってよ。いや、それを聞いたからってランダムを止めるかって言ったらその限りじゃないと思うけどさ。

 とりあえず、アタシの種族は星魔で決まっちゃったわけね。


 一応、唯一の変更方法としてキャラクターデリートがあるけど。そうした場合、キャラクタークリエイトをやり直すまでにリアル時間で一週間の期間を空けないといけない。

 その間に再作成しようとしてもできないっぽい。完全にリセマラ対策だね。


 まあ正式サービスは一週間後だし、一回くらいはお情けでリセマラさせてもらえるみたいだけど。今日レア種族狙いでランダムして当てれなかった人は、一週間後の正式サービス開始日にもう一回作成するのかなあ。

 特にβテスターとかはレア種族の存在を既に知ってそうだしね。


 ちなみに、自分の意思で選択肢の中から選んだ人は決定する前に確認が入って、選び直すこともできるらしい。

 ランダムの場合は、アナウンス通り当たった種族で自動的に決定されるみたいだけど。リセマラ対策が徹底しているようで。


「というか、なんかスゴイことになっとる……」


 種族特性なのかアバター容姿に色々と変更されてる箇所がある。まず目立つものを言えば、頭上にある幾何学模様の光輪かな。なんか天使っぽいねコレ。

 後は、真っ白な細長い尻尾。一メートルはあるんじゃない? 相当長いよコレ。先っちょの部分はトランプのスペードみたいな形。


 ちょっと動かしてみようかなと思ったけど中々動かない。でもちょこっとだけ震えたから、動かせないってことはないと思う。ここにダメージ喰らったらどうなるんだろ?

 しかも感覚があるみたいで、軽く握っただけでゾワッとした。誰にも触らせるわけにはいかない。コレ絶対弱点だよ。


 そして左目の下から左頬に掛けて金色の変な紋章っぽいのがある。十字架みたいな剣と盃みたいな湾曲した線を合体させたみたいな感じ。ちょっとカッコいいなと思ったけど、問題が一つ発生してる。


「なんでオッドアイになってんの?」


 さっきまでは両目とも綺麗な蒼穹の瞳だったのに、今は左目の瞳が金色になってる。変更しようと質問したら。


『種族的特徴のため、変更できません』


 そんなアナウンスが返ってきた。結構気に入ってた綺麗なスカイブルーの瞳だったんだけどね。まあしょうがないかな。

 とにかく、アタシの種族は星魔で決め打ちってことで。

※2019/01/20 修正

 細部の言い回しを多少変更。それ以外は特に変わってないです。

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