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どんな時でも妹は強い

 皆さんこんにちは。今日も元気最強なステラです。


 そして今、アタシは正座させられています。なぜかって? 知らないよ。目の前にいるクララ嬢に訊いてくだしあ。とりあえず、なんでこうなったのか少しばかり遡ろう。




 時間は巻き戻って今日の朝。


 昨夜ドロフォノスとのデュエルを終えたアタシは、あんな時間でも奇跡的に空いてた適当な宿に入って休息をとった。なんか一日目がほぼほぼ睡眠で削れちゃってるんだけど……。


 しかしアタシのレベルは8。このレベルはトップクラスではあると思う。多分ね。そういう意味ではスタダに成功したと言えなくもないかなぁなんて。


 今は二日目の朝。四月二日の午前八時三十分。現実では八月一日の夜八時くらいだと思う。このままゲームを続けるわけにもいかないし、【食事と水分補給を行ってください】っていう警告文が視界の端に表示されてるから一旦ログアウト。


 ちなみに、ViLiには安全機能が備わっていて、身体情報を読み取ってさっきみたいに警告文を流してくれる。それを無視してゲームを続けても、危険域に達する少し前には自動的にログアウトさせられる。ViLiの使用を続けた結果死ぬなんてことは許さないってことだね。


 現実に戻りViLiを外してゆっくりと体を起こす。ここで急に動くと軽く眩暈を起こして倒れちゃうことがあるから注意。枕元に置いてあるペットボトルを手に取って水を飲む。


 それからリビングまで行くと、机の上には夜ご飯が並んでいて置き手紙まであった。そこには、“お姉ちゃんへ 食事とお風呂はしっかりとね 光より”と書かれていた。戻ってくるタイミングがちょっと遅かったかな。


 ゲーム内では別行動だから、せめてリアルでの食事やお風呂くらいは一緒にしたかったんだけど。え? お風呂一緒はおかしい? そうかなぁ。アタシと光はほぼほぼ毎日一緒に入ってるけど。割と常に行動を一緒にしてるから近所では仲良し姉妹としてかなり有名だったりする。


 明日からは一緒にご飯食べられるようにメッセージしとこうかな。独りご飯って寂しくない? 特に仲が良い姉妹が同じ家にいる時とか。あ、光もこんなこと思ったのかな?


 さくっとご飯を食べて食器を片付けて、お風呂に入る。ウチのお風呂は追い炊き機能があるから、例え温かろうと冷かろうと問題なし。まあ今日は普通に温かいままだったから、多分光が入ってからそんなに時間は経ってないと思う。


 湯船にゆっくりと浸かって体をほぐすように自分で軽くマッサージをする。最後にサッと水でお風呂場全体を流して終わり。


 後は髪を乾かしたり、水分補給をしたりしてから再びViLiで《GOゴー》の世界へと入っていく。ログインしたのは、宿屋の一室。アタシが借りてた部屋。


 メニューを呼び出して〈Storage〉と書かれたアイコンをタップする。これはアイテムや装備品を格納するためのシステムで、ドロップしたアイテムとかを自動的に格納する。重量的な制限はないけど、種類的な制限はある。初期状態では五十種類(枠ともいう)まで格納できる。


 ただし、一つの枠に最大で九十九個までしか入らない。百個目からはまた別枠への格納になるから、生産系でやっていこうと思ってるプレイヤーにとってはかなり枠の数が少ないと言える。まあアタシみたいな戦闘重視のプレイヤーにはあまり関係ないけど。


 ストレージの容量はプレイヤーのレベルに比例する。レベルが五の倍数になるごとに十枠増えるって感じになってる。だからアタシの場合はストレージ容量が六十枠。


 ていうかこれさ、システム的な修正を入れた方がいいんじゃない? 完全に生産系プレイヤーがやりづらい仕様だよ。βテスターで生産プレイヤーだった人は文句を言わなかったんだろうか?


 まあそれはさておき、ストレージはアイテムと装備品にわかれてる。だから整理は結構しやすい。ただ、アタシは昨日色々と無茶をやらかしたせいか、ストレージ内のアイテムがエライ多かった。種類はともかく個数的にね。中身はこんな感じ。


 グリーンスライムのゼリー ×23

 グリーンスライムの核 ×8

 ダッシュラビットの毛皮 ×36

 ダッシュラビットの肉 ×28

 ダッシュラビットの耳 ×7

 ダッシュラビットの福耳 ×2


 お金 8,738リキッド


 これがグリーンスライムとダッシュラビット(今知った)を大量殺戮ジェノサイドした結果である。後、個数が極端に少ないのはレア素材だと思われ。


 ともかく、昨日の成果はこれで確認できたし。次は剣のメンテである。現状テンパードソードの耐久値がヤバい。一回戦闘をしたら絶対に折れるだろうレベルでヤバい。


 そして宿を出て【クララ武器店】へと足を運ぶ。


「いらっしゃいませ~。あ、ステラ様。昨日ぶりです」

「うん、おはよクララ。早速で悪いけど、剣のメンテをお願いできる?」

「勿論ですよ。見せてもらってもいいですか?」

「あいよ~」


 背中に装備してる二本の剣を外してクララに渡す。剣の状態を見るためにクララが二本の剣を軽くタップしたその時。


 プツン。


 なんか切れる音がしたと同時に発生したクララの黒いオーラ。ゆっくりと面を上げてアタシを見据える。


「ひぃっ!?」


 怖かった。絶対に一生忘れられない。クララは笑顔だった。それはもうとても綺麗な笑顔だった。ただし、目は笑っていない。


「ステラ様」

「ひゃ、ひゃい……」

「そこに正座してください」

「ひゃい……」


 その言葉に逆らうこともできず、アタシはその場に正座した。あれ、なんだろうこの激しくデジャヴな感覚は。


「なぜ剣がこんなにボロボロなのか説明していただけますか?」

「はい……」


 というわけで、昨日のことを全て話した。当然グリーンスライム乱獲から始まりドロフォノスとのデュエルが終わるまでの全てを。


 結果、クララは驚愕しつつも呆れたというような不思議な表情となる。まあ逆の立場だったらアタシもそんな感じの反応になるんじゃないかな?


「全く。ステラ様もとんでもないことをするんですね」

「はい。自分でもそう思います」

「本当にステラ様はお姉様によく似た方ですね」


 ん? お姉様? クララってまさかの百合系?


「何か失礼なこと考えていませんか?」

「いえいえ滅相もございません。ただ、お姉様っていうのが気になっただけで」

「あぁそういうことですか。そう言えば、ステラ様にはお姉様のことを話していませんでしたね」


 そこからクララが色々と話してくれた。


 お姉様っていうのは文字通り血の繋がった姉のことで、名前はクラリス。鍛冶に人生を懸けてるみたいで寝ずに武器を生産するのなんて当たり前。


 しかも、自分の欲しいと思った素材は例え自分に戦闘能力がなかろうと自力で魔物(MOBのことを住人はそう呼ぶらしい)を倒しに行ったり、採取素材目当てに踏破難易度の高いダンジョンにたった一人で潜ったりとまあ結構な無茶をやらかす御仁らしい。


 そんな姉をいつも引き留めて説教しつつも尊敬していると、クララはとてもいい顔で語ってくれた。そして話を聞いた結果さっき感じたデジャヴを理解した。


 説教する時の顔付きや怒り方がすごく良く似てるんだよ。ルーチェに。まあそりゃあ正座命令に逆らえませんわ。いつの時代も姉より妹の方が強いのかなっていうのをアタシはこの時理解した。

ありがとうございました!


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