表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/39

更生しなよ?

昨日は更新できずすみませんでした。

仕事疲れで帰宅した途端、寝落ちしてしまいまして(∀`*ゞ)


次話投稿しようとしたらブックマーク300件になってることに気付きました。ホントにありがとうございます!

 スチールソードを一閃する。けどそれは軽いバックステップで躱され、逆にカウンター攻撃。それをアタシも回避しつつ反撃していく。一進一退の攻防っていう言葉がよく当てはまってる状況だと思う。


 いずれにしてもこのままだと決着がつかない。相手の手の内を全部晒した後に畳み掛けようと思ったんだけど、この忍者は全然手の内を見せない。ていうか、()()()()()()のかな?


 攻防を続けていく内に、全てとはいかないまでもある程度は思い描いた通りの位置取りになった。それを確認してから、忍者の一斬を大きくバックジャンプで避けて距離を置く。そしたら忍者が若干半身になって小鳥丸を構えた。


 地面と水平に構えられた忍者の小鳥丸が赤い光を纏う。あれが〈刀術〉で使えるアーツが立ち上がった合図。それに対してアタシは懐目掛けて地面を蹴る。忍者が勝ち誇り、嘲るような嫌な笑みを見せてくる。


 多分忍者はアタシが懐まで来てからアーツを発動すると思ったんじゃないかな。ただ、残念ながらアタシはそんな一か八かの賭けに出るような無謀な性格はしてないんだよねぇ。え? モンスターハウス? 何それ食べれるの?


 忍者の間合いに入る。それと同時にアーツが発動し、赤い剣筋を虚空に描きながら刃が襲い掛かってくる。それがアタシの首に到達する寸前。忍者のアーツが強制的に終了した。


「ぐっ」


 忍者くんの脇腹にはアタシの右拳が刺さっている。筋力値全開で思いっきり殴ってやりましたよ、えぇ。なんせ忍者野郎のスピードのからくりは解けたからね。だからと言って、アーツが到達するよりも先に拳を届かせるアタシも大概おかしいとは思うけど。まあからくりが解けたからこそ届くって確信したんだよね。


 忍者が仰け反っている内にスチールソードを構え、逆にこっちがアーツを喰らわせる。青い閃光が縦一直線に走り、相手を吹き飛ばす。あれ? ハイトにノックバック効果ってあったっけ?


 完全に予想外なことが起こったせいで思考が一旦停止しちゃったけど、すぐに持ち直してすぐそこに落ちてる(・・・・・・・・・)テンパードソードを拾い上げる。


 打ち合ってる間、ちょっとずつ気付かれないようにテンパードソードが落ちてる場所に近付いていってました。忍者くんは冗談抜きに気付いてなかったみたいだからしれっと拾ってやりましたよ、えぇ。


「最初からそれが目的だったでござるか?」

「えぇそうよ?」


 事も無げにサラッと返答してあげた。忍者くんもなんでアタシがあんな状況で無謀とも思える突撃をしたのか。その目的を察したみたいで悔しげな顔になる。


「さっき言ったじゃない」

「何をでござる?」

「“見誤ったチャンスはチャンスじゃない”」


 そして、忍者くんのバトルスタイルの根本にあるものについても答えることにしようかな。そうすれば、ちょっとは絶望してもらえるんじゃない?


「〈縮地〉」

「っ!?」

「やっぱりか」


 忍者くんの種族は間違いなく人間。普通、素早い戦闘を展開する近接戦闘型のプレイヤーであれば、まず最初に思い浮かべるのは獣人。次いで一応魔人。この二種族であれば、他のプレイヤーにないような速度や筋力で戦闘を行える。


 だからこそ、序盤の接近戦で獣人(魔人はまず選ぶ人がほぼいないから除外)に勝てるプレイヤーはいないって言われてる。


 忍者くんの場合は素早さを活かした手数勝負のバトルスタイル。スピード勝負となると、まず候補に挙がるのは猫人。その次が兎人。この二種族は、通常選択できる種族の中で敏捷値ツートップなんだよ。


 最初はそのどっちかかなぁって思ったけど、それにしては黒装束の表面にある凹凸があやふやだったんだよね。もし装束の中に耳や尻尾を隠してるなら、その部分は確実にモコッてなってるはず。でも、戦闘中に確認した限りはそんな感じが微塵もしない。


 じゃあなんで、身体的パラメーターが高いアタシでも忍者のスピードに翻弄されて、若干……若干だよ? 若干だからね? いいね? ……コホン。若干苦戦する展開になったのか。


 答えは一つしかない。それが、スキル〈縮地〉。一歩の歩幅を大きくし、一定距離にいる相手との間合いを一瞬間で詰めることに特化したスキル。効果もそれしかない。まあ効果だけ聞けば強力なスキルに思えるし、その効果があれば他の効果はいらないと思う。でも残念ながらこのスキルには致命的な欠陥が二つある。


 一つは直線的な動きしかできないこと。もう一度言うけど、縮地は一歩の歩幅を大きくして間合いを一気に詰めるスキル。そう、一歩だけ(・・・・)なんだよ。だから、直線的な動きしかできない。言っちゃえば、相手の動きにある程度の予測がつけば簡単に攻撃を避けられる。


 そしてもう一つの欠点。こっちの方がかなり重大で最悪な欠点なんだけど。スキル取得に掛かるポイントがアホかってくらい多いこと。具体的には15ポイント。初期スキルポイントの四分の三を消費する。


 ちなみに、これは普通のプレイヤーならって話で、魔人を選択したプレイヤーは30ポイント掛かる。アタシの場合は更に掛かる。その消費ポイント、驚異の75ポイントである。もうね、取る気なんて起こんないよこんなの。これを取るくらいなら〈回避術〉取るわ。


 〈回避術〉っていうのは、いずれ取ろうと考えてるスキル。そういうことだから今現在において、そのことについては脇に退けておく。


「よくもまあ〈縮地〉なんて取ろうと思ったわね」

「……単なる浪漫でござるよ」

「そう。まあそれに関してはアタシがどうこういうことじゃないし、単純にあまり興味も湧かない」

「それはそれで悲しいでござるよ……」


 知らんがな。


 さて、忍者くんのスキルは〈縮地〉と、アーツを使ってたから〈刀術〉だね。それともう一つくらいは持ってそうだけど、諦めに似たある種の哀愁を漂わせてるし、そのスキルがアタシの脅威になるようなことはなさそうだね。


 このままアタシが斬り付けて終わらせてもいいんだけど、なんかその終わり方はスッキリしない。だから、ここから仕切り直しってことにしようか。


「立ちなさいよ。最後の一勝負と行こうじゃない」

「……え?」


 両手に握ってる剣を一度鞘に戻す。メニューを開いていくつか操作した後、虚空に現れたマテリアルを手に取り、それを忍者くんに見せる。


「このゲーム内で使う硬貨でござるな」

「そうよ。最後は早撃ちならぬ、早斬り勝負と行こうじゃない」

「いいのでござるか?」

「えぇ。そもそも今から仕切り直すってことになれば、それ以外にアンタが勝つ方法はないと思うんだけど?」

「……敵に塩を送ると?」


 言い方はもうちょっと考えてくれる? やってることは確かにそういうことなんだけどさ。せめて、もう少し別な言葉が……まあいいや。


「そう考えてくれていいわ」

「……」


 コラそこ。不満そうな顔をしない。


 アタシだって別に誰でも彼でもこんなことを提案するつもりはない。陰からいきなり襲い掛かって自分の気持ちを満たしたり、利を得ようとしたりするようなプレイヤーなら言葉を交わすことなく問答無用でキルする。でも、そんなつもりがなかったっていう人なら話は違う。


 そういう人なら、言葉を交わして更生を促せばいい。そこから先は自己責任だけども。


 意図せずレッドプレイヤー(犯罪行為を行ったプレイヤーのこと)になった人もいると思う。今目の前にいる忍者くんみたいに。幸いこのゲームには更生するためのペナルティがあるって話だし、それでこの忍者くんも普通のプレイヤーに戻れればいいなって思う。


「どうする?」

「…………あいわかった。その話に乗らせてもらうでござる」

「オッケー。じゃ、今からルール変更ね」

「了解でござる」


 と言っても、ルールは簡単。まずはお互いに納刀して一定の距離を開ける。それを確認したら、アタシが硬貨を弾く。それが地面に落ちた瞬間から勝負開始。硬貨が落ちるまではお互いに行動、及び抜刀禁止。一歩でも動いた時、少しでも得物を鞘から抜いた時は動いた方(抜いた方)の敗け。柄を握るだけならあり。スキルの使用もあり。


 一撃で勝敗を決するために自分の体力を危険域まで減らした。自傷行為はあまりいい気分しないけどね。勿論、忍者くんも同じことをしてる。律儀だよね。まあ悪人じゃないってことの証明じゃないかな?


 お互いの体力を確認した後、納刀。五メートル程の距離を開けて相対するアタシ達。


「準備はいい?」

「勿論でござる」

「そう。じゃ、いくわよ」


 その言葉を放った後、硬貨を弾く。高速でくるくる回りながら空中で弧を描いていく硬貨。腰を落としてテンパードソードの柄に右手を添える。見据えるは相手のドロフォノス。


 硬貨が地面に到達するまでの僅かな時間が引き延ばされたかのように遅く感じる。この感じは白兎のモンスターハウスでもあった。五感が段々と研ぎ澄まされていく感じ。


 視界の中央でドロフォノスが息を呑んだ。気圧されたのか? アタシに。


 まあそんなことはどうでもいい。今は目の前に集中するだけだ。そこでようやくドロフォノスも戦闘に思考を切り替えたらしい。いい目だ。


 互いに得物の柄を握る。そして硬質な音が響く。


「ハァッ!」

「セヤッ!」


 一瞬の交錯。


 残心した状態で自分のHPを見ると、全く削れていなかった。それを確認したアタシは剣を血払いするかのように振るって鞘へと納める。


「しっかりと更生して出直しなさい」


 そう言った直後、ガラスが割れるような破砕音が聞こえてきた。




 さて、街に戻って宿でも探しますか。できればオシャレな宿屋希望。お金は狩りで結構貯まってるから値段を気にする必要はない。

ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ