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左手が疼く……

 目の前にいる「さては忍者だなオメー」的な黒装束。もといドロフォノス。どうやらアタシとデュエルしたいみたいだけど。


「デュエルしたいなら最初っからそう言いなさい。不意打ちされる身としては堪ったもんじゃないわ」

「それについては済まないと思っているでござる。しかし、これに対処できなくては拙者との勝負などできないでござる」


 だからと言って狩りとかで精神的に疲労してるプレイヤーにいきなり斬り掛かるとか、下手したら悪質なPKとして掲示板に晒されるよ?


「まあいいわ。デュエルしたいなら受けてあげる」

「感謝するでござる」

「ルールは?」

「もちろん」


 まあこうやって試合を申し込んでくるってことは、わかりきってるね。展開されたデュエル申請のウィンドウを操作して、パーフェクトエンドをタップしようと指を伸ばす。


「そうね。パーフェ――」

「ハーフエンドでござる!」


 ずっこけた。リアルでこんなに綺麗なずっこけはそうできないんじゃない? そう自画自賛できるレベルで華麗にずっこけた。


「キメ顔でチキるな!」

「だってただの決闘でデスペナとか割に合わないじゃん!」


 口調がリアルのもの(多分)に戻っとるがな。


 忍者野郎の言う通り決闘でパーフェクトエンドを選択すると、通常のデスと同じ扱いになってデスペナルティが発生する。だから、昼間にアタシがデュエルで乙らせたプレイヤーはデスペナを受けたはず。


 デスペナルティはプレイヤーのレベルによって変わる。基本的にレベル10までは、ステータスが三十分間半減するだけ。プレイヤーがゲームに慣れるまでの救済措置的な感じかな。それ以降はステータス減少値が増加したり、減少時間が延びたりと少しずつ厳しくなっていく。


 後はお金を取られたり、経験値を持ってかれたりと色々だね。そこら辺は自分で体験しないとわからない。絶対に体験したくないけど。


 それから掲示板での噂レベルだけど、PKした人には更にキツイペナルティがあるとか。掲示板に書き込むような人にPKを進んでやる人はいないみたいだから、噂や憶測の域は出ないんだけどね。


 さて、デスペナに関してはまあわかる。言いたいこともその気持ちもよくわかる。プレイヤーのほとんど全員がそうなはずだから。けど、アタシとしてはその言葉を看過できない。


「デュエルは手合わせみたいなものだから、デスペナが割に合わないのはよくわかる」

「そうでござろう? だったら――」

「けどアンタがそれを言うのは筋違いも甚だしい」

「……え?」


 まだわからんのかこの忍者野郎。


「アンタは自分と試合できるかどうかを、不意打ちを仕掛けることで判断してるわけでしょ?」

「そうでござるが?」

「なら、その過程でキルしちゃった人もいるんじゃない? カーソルも赤になってるし」

「…………」

「不意打ちで相手をキルしちゃってるんだったら、その相手はデスペナを喰らってるはずよね? しかも、何が起こったのかもわからない内に」


 何よりもアタシが納得いかないのは、街から出てきたプレイヤーじゃなくて冒険から帰ってきたプレイヤーに対して攻撃を仕掛けてること。アタシはそれに対して一番憤りを感じてる。


「不意打ち仕掛けるなら街から出てきたプレイヤーにしなさいよ。そうじゃなきゃ疲れたプレイヤーを一方的にキルする悪質なPKでしかない」

「…………」

「そんな奴がハーフエンド? ゲーム舐め過ぎ」


 問答無用でパーフェクトエンドをタップする。アタシとドロフォノスの間に数字が表示され、カウントダウンが始まる。武器を背中の鞘から抜き、刃先を相手に向ける。相手も諦めたのか、覚悟を決めたのか、得物を手に取って戦闘態勢に移行した。


 相手の得物は刀。九十センチ弱の長さで刀身が特徴的だね。刀身の半分強くらいが両刃になってて突きを放つのにも適してる。確か小烏丸とか言ったかな? 日本刀の中ではかなり異質の存在だったと思う。いやそもそも日本刀とは言ってなかったかな? まあどっちでもいいや。


 カウントダウンが残り十秒を切った。あ、言い忘れてた。


「このデュエル。両者共にギブアップはなしだからね?」

「な……」


 当然だ。デスペナがイヤだからってギブアップなんてさせるわけがない。じゃないと他のプレイヤーが不憫過ぎる。いつの間にかキルされてリスポーンとか誰が納得できるだろう。アタシだったらムリだね。


 ちなみに、デュエルは申請された側がルールを決定することができる。そして開始する前までにある程度のルールを申請された側がボイスコマンドで追加することもできる。今回の場合はそれね。両者共にギブアップなし。単純な話、どっちかがHP全損するまでデュエルは終わらない。


 カウントがゼロになってデュエルが始まる。と同時にドロフォノスがアタシの目の前に現れ、刀を振るってくる。


 左足を後ろに移動させながら半身になって軽く頭を傾けることで躱し、動いたことでほんの少しついた勢いそのままにテンパードソードを逆袈裟に斬り上げる。


 ドロフォノスは刀でアタシの攻撃をガードしつつ飛び退る。攻撃の手を緩めないよう一直線に駆けていって、距離を詰める。距離を取られるのはマズい。


「っ」


 剣を振るうよりも、速度に特化した突きを何度も放つ。例え細剣でなくてもこれくらいは普通にできるからね。捌くので精一杯なのか一向に反撃してこないドロフォノス。だからと言って調子に乗るってことはない。


「つぇぁっ!」


 驚いた。ニーキックを繰り出してくるとはさすがよのう。ただ上半身の動きばかり注視してたせいで、足の動きを察知できなかった。結果、大きくバックジャンプしてしまい距離ができてしまう。


 そこで相手が反撃に転じてきた。さっきの逆パターンやん。


 目にも留まらぬ速さで斬撃、刺突を次々と放ってくる。何とか避け続けることでダメージは受けてない。けどヤバい。こっちが捌くのでいっぱいいっぱいになっちゃってる。ナンテコッタイ。


「せあっ!」

「あっ……」


 そのふざけた思考がいけなかったのか、アタシは剣を弾き飛ばされてしまった。やってくれたなコイツ。


「終わりだ!」


 終わり? 何が? 君の目は節穴なのかい?


 ドロフォノスの刀が赤い閃光を纏いながら大上段から振り下ろされてくる。ふっ。そこでアーツを発動とは、それは悪手だよ忍者くん。


 振り下ろされる刀の横っ腹を右拳で思いっきり殴りつける。速度が遅くてよかったわぁ。じゃなきゃアタシ死んでた。


「なっ!?」

「見誤ったチャンスはチャンスじゃないのよ?」


 左手でスチールソードの柄を握る。納刀したまま構えを取れば、予想通りにアーツが立ち上がる。


「おりゃっ!」


 スチールソードを抜刀しつつ、アーツを放つ。青い光の剣閃を残しながら忍者くんを斬り付ける。割と痛いだろうねぇコレ。


「まだ終わってないよ?」

「くっ」


 さ、第二ラウンドと行こうか。

ありがとうございました!

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