片鱗
重要そうなサブタイのわりに文字数が少ないという……
「「「「「キュウッ!!」」」」」
「ふぉっ!?」
戦闘開始直後、いきなりの多重高速突進攻撃。避けれてよかった……。というかよく避けれたな今の。
「「「「「キュウッ!!」」」」」
「またかい!?」
なんとか体を捻って避ける。どうにかやり過ごして態勢を整えようとしたら、またしても複数の白兎が突進してくる。避けるので精一杯なせいで反撃の余地が全くないんですけど……。
抜刀自体はできてるけど、どれか一体だけを狙うっていうのはさすがにムリ。絶対に五匹以上で飛び掛かってくるんだもん。しかも数が半端なく多いから、入れ代わり立ち代わり突進してくる。パーティ組んでないと攻略は難し過ぎだねコレは。
仕方ない。状況判断のためにも使うしかないか。
「“流星”!」
金色のオーラがアタシに纏わりつく。とにかく離脱するためにも上へと跳躍。しようとしたら、勝手に体が浮き上がって一気に天空へと急上昇していく。
って速い速い速いぃぃぃぃぃぃっ!?
「どぉぉぉやっったら止まるのこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
そして見えない何かに頭を強打。痛みはないけど鈍い痺れが発生しましたピヨピヨ。
ある程度時間が経ったら痺れも取れ、ふらふらしてた体の軸をしっかり固定できるようになった。よくよく確認すれば、またしても視界の中央に【飛行限界高度】とアラート文が表示されてる。
地を見下ろせば、広がる樹木の海。上から見ればよくわかるけど、とんでもなく大きい森だね。この森を踏破するのは大変そうだなぁ。まあアタシはそれで余計に興奮するんだけどね。
おっと、今は景色に見惚れてる場合じゃなかった。とりあえず降下した方がいいね。
試してみたら、ちょっと念じるだけで思い通りの飛行ができた。途中で何度もフィールドバリアの見えない壁に激突したけど。運営よ。地上だけじゃなくて上空のバリアも可視化してはくれまいか? 中空だと方向感覚が鈍るからどう進んだら壁にぶつかるかわかんないんだよ。
とまあ余計な思考はそこまでにして、アタシは白兎共が待っているであろう地上のモンスターハウスへと降下していく。
何十とある白兎の赤い眼がアタシをお出迎えしてくれた。ふぅ、怖い。
〈流星〉も〈福音〉と同じくらいの速度でMPを消費し続けるみたいだから、最大でも十分ちょっとしか飛行しながらの戦闘続行は不可能。それ以上は確実にデッドライン。地上で立ち回って勝てる気は全くしないからね。まあ練習で二分くらい使っちゃってるから実際はもうちょっと短い。
一対多。多勢に無勢のこの状況で短期決戦をするしかない。実に面白い、やってやろうじゃないか。
戦闘再開。〈流星〉で低空飛行をしつつ白兎の弱点である耳を狙って斬り付けて行く。当然だけど止まることは許されない。終始動きっぱなしじゃないと、突進噛まされて撃墜されそうだから。
この戦闘スタイルは中々に骨が折れる。まず高速飛行をしながら斬るっていう行為自体が難しい。狙ったところに武器を振るうのが結構至難の業なんだよね。それに、こっちも相手も動き回るから狙い通りに剣を振るえても全く別の場所を斬り付けたり、酷い時は空を斬ったりしてる。
その上、今回みたいなエリア範囲が限られる場所で飛び続けるっていうのも困難を極める。今回が特殊ケースではあるんだろうけど、直径十メートルで高速飛行は結構神経が磨り減る。
何より、白兎だってバカじゃない。アタシの飛行速度と進行方向から先読みして跳躍突進してくるんだよ。目の前がいきなり真っ白(白兎のせいで)になるからビビるビビる。
それでもこんな戦闘方法じゃない限り、今のアタシに勝ち目はないからこれを続けるしかない。集中。余計な思考はいらない。それはこの高速戦闘の中で邪魔者以外の何者でもないから。
先読みで跳んでくる白兎。でも、それは逆に言えばアタシも動きがわかるということ。アタシの行く先に跳んでくるのなら、そこに向かって剣を振り抜けばいい。それを見て怯むのならそのまま斬り付ければいい。
五感が研ぎ澄まされていく。相手の体温も、呼吸も、本来聞こえないはずの鼓動すらも聞こえてくる。さっきまでアタシの聴覚のほとんどを占めていた風切り音は、もう聞こえなくなっていた。
どれくらい経ったのかわからない。けど、いつの間にかアタシの周りに白兎はいなくなっていて、アタシは地面に片膝を付きながら荒い息を吐いていた。
目の前には戦闘終了を知らせるリザルト画面。それを認識した途端にアタシは地面に倒れ込んでしまった。もう手足が動かない。どれだけ激しい戦闘をしたというのか。
視界上を確認したら残りHPがドットだった。死にかけじゃんか。一撃掠っただけでも死に戻っちゃうよコレは。
いやぁ達成感がすごい。しかも何十体と倒したおかげか一気にレベルが4つも上がったし、いい感じのレベリングにはなった。挑戦は大事だね。何事もやってみないとわからないからね!
とりあえずHPとMPが全快するまではここでゴロゴロしとこうかな。モンスターハウスは一度クリアすると、クリアしたプレイヤーがエリアの外に出ない限りは他者が侵入できない絶対安全圏になる。
というわけで、疲れたから寝る! 起きたら街に帰る! 以上、解散!
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