星魔は兎を全力で狩る……あれ、逆かな?
またしても一日で100ptオーバーの総合評価ポイント。
本当にありがとうございます!
前回までのあらすじ。
スライムを何体も討伐してレベリングをしたアタシ。いい感じにレベルも上がって、ステ振りも完了。意気揚々と森に踏み込んだらいきなり横からド突かれましたとさ。
「やってくれたな兎野郎」
「キュウゥゥゥゥゥ」
さすがアタシのHPをガッツリ削るだけあって、低い唸り声には中々の威圧感がある。アタシの三割くらいってなると、人間族がVITにポイントを振らないでこの森に入ったら、この兎に横からド突かれてお陀仏コースじゃないかな?
初心者装備はどのデザインのものでもDEF値一緒だからね。βテスターならもうちょっといい装備があるのかな?
まあいいや。それよりも目の前の兎だ。抜刀して構えてみたものの、十秒くらい睨み合いが続いてる。兎とガン飛ばし合うとかシュール過ぎでしょうよ。
「キュウッ!!」
「ぐふぉっ!?」
ありのまま、今起こったことをはなすぜ! 白兎の姿がブレたと思った次の瞬間、アタシは腹部に大打撃を受けた。何を言ってるのか、わからないと思うが。アタシも何をされたのかわからなかった。
痛覚は完全遮断されてるこのゲームだけど、衝撃はきっちり通ってくるから要注意。最初に吹っ飛ばされたのもこれのせいね。決してアタシの足腰が弱いわけじゃない。ないったらない。
この兎、スピードが速いわ。比較的序盤な森のMOBなのに姿がブレるってどうよ? 気付いた時には腹部に一撃喰らってるとか。しかも今ので残HPが四割くらいになっちゃった。これはすごくマズい状況なのでは?
「“福音”!」
鈴が鳴るような音と共に体が純白の優しい光に包まれる。HPゲージの下にあるMPゲージを見れば、一秒ごとにちょっとずつ減っていってるのがわかる。これって止めない限り回復し続けるのかな?
今は考える時間じゃないか。難しいだろうけど戦闘しつつ検証もしてあげようじゃないか。というかルーチェに訊けばよかったかも。
「キュウッ!!」
「ぅおっとぉ!?」
危ないまた喰らうところだった。ダメだな。思考しながらだとまともな戦闘ができない。とりあえず、目の前の白兎に集中!
「レッツパーリィ!」
オーケー! アーユーレディ?
「キュウッ!!」
「見切ったぁ!!」
半身になって白兎の突進を避けつつ、剣で斬り上げを放つ。よし! 手ごたえあり!
「ウギュウッ!?」
「大当たりだ!」
まだ死んでないけど、キメ台詞だぜ! 白兎の突進にも予備動作はしっかりあった。突進を噛ます直前に少しだけ右後ろ足を引いてる。冗談抜きにほんのちょっとだから相当な集中力がないと普通にわからない。動きが極端に小さくて短いもの。
そんなんで初心者プレイヤーが即死するレベルの突進をしてくるとか鬼か。難易度設定間違えてない?
「にしても、今の攻撃でドット単位でしかHP減ってないとか。硬いなぁ」
いや、硬いとかそれだけで済む問題じゃない。DEF値ガッチガチに高められてるんじゃないの? それでいて目にも留まらぬ速さ、そして高い攻撃力も兼ね備えている。適正レベルが高めに設定されてるとか? 識別スキルがないからMOBのレベルとかわかんないんだよねぇ。
それから何度も白兎と交錯しつつダメージを入れられ、こっちも与えていく。戦闘は十分にも及んだ。これは酷い……。
経験値的には割と美味しかったよ。まあそれでもまだレベルは上がってないけどね。そして戦闘中にわかったこともある。
他のMOBもそうなのか白兎特有なのかはわからないけど、ウィークポイントが設定されてる。ダメージを多く与えることができる部位をアタシが勝手にそう言ってるだけ。
白兎のウィークポイントは耳。高速移動する上に的が小さいから狙うのは容易じゃないけど、その分当たった時のダメージ上昇補正はこれでもかってくらいに高い。それまでドット単位でしか削れなかったHPが一気に一割弱減ったからね。上手く立ち回れば戦闘時間の大幅短縮も可能になるはず。
そして〈福音〉だけど、戦闘後にステータスを確認したらMPが1000ptを切ってた。多分、一秒に2pt減っていってるのかなって思う。単純計算だけど減ってる分は戦闘時間にほぼ比例してる感じだったから。結論、やたらめったら使えるものじゃないと思いました。まる。
まあRPGやってれば、どうしたって苦しい状況っていうのは出てくる。それをどう乗り越えるのか。RPGの醍醐味だよね! 醍醐味多くてすごくキツ楽しい!
木に凭れかかってしばし休憩。一歩も動かなければHPとMPはちょっとずつ回復していく。それでも回復速度は亀みたいに遅いから、βでは〈高速回復〉っていうスキルが重宝されてたとか。これはルーチェ情報。特にあの娘みたいな高火力戦車型プレイヤーにとっては需要が高いスキル。
〈高速回復〉は、HPとMPの自動回復速度を上昇させるスキル。最初こそそんなに速度の違いはわからないみたいだけど、マスタリーが積もれば積もる程、回復が速くなっていく。アタシもいずれは取りたいスキルの一つ。
さて、体力魔力共に全快! 探索再開! ……ダジャレじゃないよ?
探索している内に、いつの間にか不思議な場所に到着してた。そこは、森の中なのになぜか草が低くなってる場所。直径十メートルくらいの広さがある円形で、これは何かあるぞと言わんばかりの広場だった。
そしてアタシは踏み込むのだ。何か起こるだろうっていうのがわかってて。まあ恐れてたって何もわかんないし、どうせゲームの中なんだから死んだって問題ない。命が亡くなるわけじゃない。ゲームの中でくらい決死の覚悟とか持ってていいと思うんだ。
無鉄砲に広場へ踏み込んで奥へと進んでいく。中央くらいに到達したところで視界が赤く明滅しだす。視界の中心には【WARNING!】の文字。やっぱアカンヤツやコレ。
アラートが消えた後、広場を縁取るように赤いベールのようなバリアが張られる。アレは確か、進入禁止の壁だったはず。ボスフィールドとかに張られるもので、それ以外だと基本的には――
「やっぱこうなるか……」
周囲に次々とさっき倒したばかりの白兎がポップしていく。これは数あるフィールドトラップの中では最悪とも言えるべきもの。
「モンスターハウス……」
一部の広場がMOBで埋め尽くされるトラップ。脱出条件はMOB全てを撃破するかHP全損でリスポーンするかのどちらかのみ。滾るねぇ。やれるだけやってみようじゃない。
「デストロイ ゼム オール!!」
かかってこいや兎共!!
さて、ステラはどうなるんでしょうね?
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