変異体・名贈りの祝福
主人公たちサイズがおかしい狼になりますがまだまだ弱いほうです。
上には上がいるんやで、つらいね。
意識が浮上する。なんか耳元で声が聞こえる。誰だ。うるさいな、俺は今とっても眠いのに。って、こんなくだり母様のおなかにいたころにもあったような。ともあれ、目を開ける。
「起きたか! 弟よ! いったいこれはどうした!?」
「体、大丈夫なの?」
「カエル……潰れてる」
はぇ? 何を言ってるのやら。どこも痛いところもないしいたって健康なんだが。
そこで俺は違和感を覚える。
とにかくも起き上がり、立つ。それだけで違和感の正体がつかめた。兄たちが小さくなった?
いや、俺が大きくなったのか? なんだ、なにがどうなってる?
進化した兄たちは大型犬サイズと言えばいいのか? 大体2メートルサイズになっていて、体格も立派になっていた。まだまだ赤ん坊……1メートルは赤ん坊かどうかの疑問はさておき、まだ小さかった俺からすれば見上げんばかりの大きさだったのに今は逆転している。
えーとサイズを比較すると……あれ、3メートルはありそう。……いったいどういうことだ? ここはステータス確認! 進化が影響しているはずだ! なんとか介入がありましたとか聞こえた覚えがある!
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名前:アシュト
種族:グレイ・キラーウルフ(変異体)
状態:祝福・超健康
L V :1/35
H P :84
M P :40
攻撃力:43
防御力:28
魔力攻:21
魔力防:19
素早さ:75
ランク:E+
特性スキル:
【神託:LV1】
【解析:LV1】
通常スキル:
【噛みつく:LV4】
【引っかく:LV5】
【頭突き:LV6】
【逃げ足:LV2】
【嗅覚鋭敏:LV4】
【ステータス開示:LV2】
耐性スキル:
【痛覚軽減:LV3】
【毒耐性:LV2】
【麻痺耐性:LV1】
【幻惑耐性:LV1】
称号スキル:
【狼王の息子:LV‐‐】
【魔神の加護:LV2】
【ドジっ子:LV2】
【超石頭:LV‐‐】
【健康体:LV‐‐】
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…………えーと。落ち着こう。冷静になるべきだ。そうだろうなぁねぇうん。すーはーすーはー。
「なんじゃぁぁぁぁこりゃぁぁぁぁぁっ!!!」
洞穴から遠吠えがやかましく響いた。
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「落ち着いたか弟よ」
「はい、すいませんでした」
三位一体のタックルをくらって強制的に這いつくばされた。そのうえで間近ですごまれるわでしっぽ噛まれるわで後ろ足のキックをくわうわでひどい目にあった。
まぁうん、叫ぶ俺が悪い。ここにいますよーって叫ぶ奴があるかっていう話だしな。野生、休まる暇ない。サバイバルつらい。
「コホンッ、えーとこの姿はたぶん進化したからだと思う」
「……そうか、しかしここまで大きくなるとは」
「でかいわね、なにを食べたらそうなるの?」
「ずるい。俺もでかくなりたい」
あなたたちと同じものしか食べてませんが! この食欲魔人…ちがった魔狼どもめ!
「食べ物が原因じゃないと思うよ……」
呆れた俺は悪くないはず。
「まぁ体格云々はともかく、強さはもう我より上であろう。今日からおまえがリーダーになれ」
「はい?」
こうして俺は群れのリーダーになったのであった。
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狼の群れの主は基本的にどうやって決まるかと言えばこの世界においてはどうやら強さが重視されるようだ。指揮系統とかはどうなってるかわからないが。(大規模の群れに今生ではあったことがないからだ)
うちの場合、強さにそんなに差が無い赤ん坊のころから気の知れた兄弟だからかとりあえず長兄が暫定的にリーダーになったに過ぎない。進化した後も差がなかったので継続した形になる。
そこで俺がぶっちぎりで追い抜いてしまったものだから正式にリーダーになる運びとなったのである。
とつらつらと述べたが何が言いたいかと言えば、現実逃避だよ言わせんなよ。
「えーと、まずはこれからどうするか目的、目標を決めたいと思う」
「目的目標? ただ狩りをして強くなればいいのでは?」
「もうすぐ冬が来るわ。獲物も減るし強いやつが増えるわね」
「食べ物なくなる……そんなのやだ」
獣らしい意見をありがとうございます。確かに言うことはもっともなんだけどさ。
「確かに冬は痛いかな。南へ行って食べ物が多いところへ行くのもありか」
「だが弟よ、父様も言ってたではないか。人間の集落もあるのだぞ。避けては通れんと思うが?」
「そうね、わたしたちはここ以外に森を知らないし危険だわ」
「でもここも食べ物なくなる」
……八方ふさがりな気がしてきた。いやまだなんとかなるはずだ! ここは頼れる兄に意見を聞くのだ!
「兄さんは今までどう決めていたの?」
「勘だ」
「あ、はい」
参考にならない! もっと文化的に! 野生だけどさ! 落ち着け俺、変に興奮するな。ほら、兄たちが変なものを見る目で見ているじゃないか。
「えっとね、南に行けば確かに人間に見つかるかもしれない。だけど暖かいところにいけばフルーツとか食えるものが増えると思うんだ。そこに賭けたい」
集落には近づかないようにしていけばなんとかなるじゃないかと兄たちを説得する。どの道、冬になれば中部の魔物たちはもっと凶暴になって近づけない。たまに浅部でも見かけるようになったし。
「そうか……。わかった、従おう」
「リーダーだものね、わかったわ」
「食えればなんでもいい」
こうして俺たちは南へと旅立った。




