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蹂躙劇・運命の出会い

実はこの小説って見切り発車なんです。うねうねとした道を征くのだ。

だが負けない。開拓するのだぁぁぁぁっ!


暑苦しい挨拶になりましたがよろしくお願いします。

 俺が起こしたこととはいえ、壮観だな。


 元壁の瓦礫の山の上から街を見やったが倒壊した建物と火の手があちこちへと手を伸ばして逃げ惑う人間たちがいる。


 少し前の俺ならそんな人間を見たら助けようかなとは思えただろうが今はなんとも思わない。冷めた目で追いかけるばかりだ。



 ふと、人間たちがあのひときわ大きい館へ向かって逃げているように見えた。


 ―避難場所みたいなものか。




 あの館を潰すべきかを考えたがやめた。


 目的は冒険者に対する復讐なのだから、関係のない人間たちに手を出すのはなにか違う。こうして戦えるものを狩って行っていけば俺たちに手を出す気があってもしばらくは無理になるはずだ。


 その間に移動するか他に対策を考える必要はあるが今はいいだろう。



「アシュト」

 ん? 姉さんか。なんだろう?

「どうしたの?」

「今までも思ってたけどあなたは甘いわ」

 さ、散々言われてきたけどここでも言うのか。今の俺は割と冷徹に徹しているつもりなんだが。


「いいえ。あの人間たちにもっと深く傷を与えられる機会があるのにあなたはそうしようとしない。なにかと理由をつけて避けているわ」

 そう…なのか…? いや、一応理由はある。

「フブキ姉さん。必要以上にやりすぎると怒りを買って反撃されるかもしれないんだ。そうするとまた誰か死ぬかもしれない。そんなのいやなんだよ」


 そう俺が言うとフブキ姉さんは苦笑をにじませた表情で俺を見つめる。狼の顔だけどなんとなくわかるんだ。

「あなたが群れのことを誰よりも大事に思っているのは知っているわ。でも群れのみんなはあなたのためなら命は惜しくないのよ? みんなの気持ちも考えてやってね」

 そう告げて戦っている眷属たちのもとへ走り去っていった。


 そう言われても俺はみんなを守りたいだけなんだけど……。よくわからないや。



 ゴッ! ドガラッシャァァァーーーーーーーーーンッ!

 キャンッ

 ウオォーーーンッ



 む、あっちでなにかあったな?


 ウオオォォォォォォォォォォォッッッ

 グルラァァァァァァアアアアアアアアッッッ


 これは人間とフブキ姉さんの声? 戦っているのか。

 

「ボスッ! 強い人間がいました!」

「やはりいるか。フブキ姉さんと戦っているのか?」

「はい、そうです。ですが、押され気味でして……」


 あの姉さんが押さえられる? Cランクの魔狼よりも強い人間。これは俺が出ないといけないな。

「俺が行く。おまえたちは一旦引け」

「はいっ」



 そして俺は瓦礫の山から駆け出す。尋常じゃない人間のいる戦場へ。



 *********



 私の名は黒峰 霞。


 ちょっと前までは女子高生をやっていました。ありきたりでなんの変哲もない日常を送っていましたが私はそれでも幸せだったでしょう。


 しかし、ある日友人と放課後に教室でお喋りなどして居残っていたときでした。



 私たちの足元で光り輝く円環が現れたのです。


「な、なんだこれは」

「床が光っているぞ!」

「こ、これ怖い!」

「これはもしかして…」


 光り輝く円環は複雑な紋様と見たことのない文字が連なってところどころ直線や曲線も入り混じってそれぞれが循環して廻っていました。


 あとに知ることになりますがこれが召喚術式と呼ばれる秘技中の秘技の魔術だったそうです。



 光は強くなり、教室の机、椅子などの備品を飲み込み影さえもうつさなくなり一面が真っ白に染まりました。




 そうして私たちは勇者召喚されたのでした。






 *********




 俺がその戦場についたときだった。人間が持つ戦槌が狼の体にヒットして吹き飛ばしたところだ。


「ギャウッ」


 フブキ姉さんがやられてる。助けないと!


 魔力を込めて地面を踏みしめて【地砕】を発動させて岩をフブキ姉さんと吹っ飛ばした人間の間に生やす。そして俺は岩の前に出て人間と対峙する。


「っ! 新手ね!」

 そう言った人間は若い女だった。黒髪黒目できりっとした目で俺を睨み、戦槌を血払いするように振るい大盾…俗にいうタワーシールドをこちらに向けて構える。今までも戦っていたのか身に着けている鎧は血に濡れており汚れていたがその気品は一切削がれることなく凛としていた。


 正直言って美しかった。だが、敵だ。


「やあっ!」


 観察していて動きのない俺にしびれを切らしたか戦槌を振りかぶり攻撃してくる。


 ヒョイ ヒョイヒョイ


 だが、遅い。動きが大振りでどこへ当たるか軌道で丸分かりだ。


「くっ」


 それは女にもわかっていたのか攻撃をやめて後退して俺の様子を窺う。その隙に…



「フブキ姉さん大丈夫か?」

「…ええ、体は痛いけどなんとか動けるわ」

 フブキ姉さんは体中から血を流してはいたが傷口を凍結させることでこれ以上の流血を避けている。


「下がっていて。こいつは俺が相手する」

「……ごめんね。頼んだわ」

 タッタッタッ… 行ったか。



 さて女の相手をしなくては。攻撃は遅いがあのフブキ姉さんが一方的にやられている。油断はできそうにない。ステータスを見るか……。

 そして俺が女を見つめて【ステータス開示】を使おうとしたそのタイミングだった。


「あなた意思があるの!?」


 女から声をかけてきた。なぜ、話しかけるのだろうか。


「そんな、どうして魔物に知性があるのっ」


 なんだか知らないが混乱しているようだ。まぁ俺は知ったこっちゃないので隙とみて【斬爪】を飛ばす。



「しっ!」

 ガキッ


 大盾で容易く受け止められたが想定内だ。塞がった視界の死角に回り込み一気に近づく。そして牙を剥き大盾へ噛みついた。


 噛みついたまま首を振り回す。


「っ!?」

 女はとっさの判断か、大盾にこだわらず手放してなんらかの魔法を使ったのか浮遊して半ば倒壊している建物の上に降り立った。



「待って! あなたどうして意思があるの! どうして……」




 それから彼女は俺にとって思いもよらない言葉を吐き出した。



「どうして日本語でしゃべっているの!?」






 ……………………………はい?





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