……ガサリ
難産でしたorz
他の作者のみなさまってほんとすごいっていつも思うこのごろ……
拙作の作品で楽しんでいただければ嬉しいです(はぁと
ん? なんか見られている気がしたが気のせいか?
「長殿どうかされましたか?」
リンドが不思議そうな顔して聞いてくる。
「いや、気のせいだと思う」
俺はそれにかぶりを振って返す。
今日も俺たちは狩りに出てきていた。それも終わり今から帰るところだ。
「しかし、雪が降るとはなぁ」
「ここらでは珍しいですね」
雪が降った。ここらに長く住んでいるリンドでも初めて見たらしい。積もるほどの量ではないのが幸いか。
獲物を冷蔵庫へと運んで入り口を岩で塞いで洞窟へと戻ろうとしたところだった。
--ん? またなんか感じるぞ?
『解析より告知。通常スキル:【気配察知】を獲得しました』
なんでこのタイミングで? いや、スキルを得たからかさっきより色濃く感じるぞ。何かいる。
「みんな、気を付けろ。何かいる!」
俺がそう声を上げれば即座にバッと戦闘態勢に入る。そして俺は飛び出す。気配を感じたほうへ。
「●○×~☆!※※●○!!」
聞きなれない言語(?)が聞こえてきた。言葉をしゃべる生き物…まさか。
『解析より告知。通常スキル:【言語理解】を獲得しました』
なんて都合のいいタイミング。いや、助かるが。会得した瞬間に意味不明だった言葉が明晰になってきた。
「ちくちょう! 気づきやがった! 撤退だ撤退!」
っ! 人間か。いつかくるとは思っていたがかなり早いな!?
「2体は回り込んで足止め頼む。あと2体は脇から様子を見ろ。残りはついてこい!」
指示を出して人間のいるほうへ突っ込む。見たところ人間は3人いる。だが気配にはもっと多くいると告げている。こいつらを全滅させないと情報を持ち帰られる!
駆けながらも藪から出てきた人間のステータスを覗いてみたがうちの眷属なら1対1でも戦える程度しかなかった。ということはこいつら、囮の可能性がある。
「グォォォォオオオオン!」
咆哮で牽制する。このスキルは吠えた相手にわずかな硬直を与える効果がある。
「っ! ちくしょう!」
目の前を走っていた3人はそれで足をもつれさせて転んだ。俺はそいつらに構わず踏みつけて通り過ぎる。
「ぶべっ!」
「みんな、こいつらを食い殺せ! 俺は他の人間をやる!」
ついてきた狼たちにそう命令を出して足に力をこめて加速する!
気配は2方向……それぞれ別方向へ行こうとしている。なら、こうするまで!
近いほうへ素早さにものを言わせて瞬時に間合いを詰める。気配はやはり人間だった。
「くっ! かかってこい俺が相手だ!」
人間はそう言って剣を片手に構えをとる。だが、遅い。
「ウォォォン!」
俺は前足に魔力を込めて地面を思いっきり叩く。叩いた地面を起点に土が盛り上がっていく。
「んなっ!?」
盛り上がっていった土は瞬く間に人間を取り囲み、閉じ込めた。それだけで終わらない。
追い打ちに魔力をまとったまま出来上がった土のドームに叩き込む。
「ぐげっがぁっ!!」
やったことは単純だ。【地砕】で土を固め中へ無数の棘として打ち出しただけだ。
それで倒せればよし。そうでなくとも動きを止められればよし。
最優先はもう一方の気配を追いかけることなのだから。
『解析より告知。経験値を得ました。レベルが上がりました』
ありゃ、今のがとどめになっていたか。まぁ気にするほどでもないな。
気配は……感じられなくなっている……? そりゃそうか、手に入れたばかりの【気配察知】にそこまで期待するのも酷だな。だが、気配が人間ならあの集落へ向かうはず。
「おまえたちは後からついてこい。あと、俺の兄弟の誰かを連れてきてほしい。人間の集落まで行くぞ」
ついてきている眷属にそう告げる。
「わかりました。私が連れてきましょう!」
狼の1体がそう言って踵を返して森の奥へと消えていく。
「俺は先に行く。人間との戦いになるかもしれない。それを避けるためにあれを仕留める」
そう告げて、俺は本気で走る。今までは眷属がついてこれる程度の速度だったのだ。そのままだと間に合わない可能性があったので俺単独で行くことにした。……あとで怒られるかもしれないがな。
*********
「ゼノンの言っていたことは本当だった……! なんだあの化け物は!」
スートアの森に入ってそれなりに経った頃に脅威度Cランク上位らしき個体を見つけた。そいつは配下の狼に狩りをさせて高みの見物をしていたところだった。
そこまではよかった。だが欲をかいたのがいけなかった。あの時すぐに戻って報告をするべきだった。
「あいつらの巣を見つけて報告すればさらに報酬がもらえるぞ」
「そいつやいい。俺は賛成」
「あいつらは俺たちに気付いていない。獣は間抜けだから楽でいい」
「それでも魔物だ。油断はするなよ」
リーダーの声にへーいと気の抜けた返事を返し、それでも熟練の冒険者らしく油断のない体勢で銀色の巨体を警戒していた。
あいつらは走ることもせずに悠々と獲物を引きずっていた。その場で食べないということは巣に持って帰るということだ。それに合わせてゆっくりと足を進める巨体のおかげで俺たちは見失わないで済んだ。
十分に距離を置いて、風上に立たぬように注意をしながらもじりじりとついていきついには巣らしき洞窟についたのだ。あの時は大喜びではしゃぎたい気持ちを抑えるのに大変だった。
「おい、デビットとニュペはこれを伝えに戻れ。それぞれ別ルートでだ」
「あいよ。リーダーはどうするんで?」
「俺たちは見張っている。なぁにそんなに長くはいないさ」
「了解」
こうして俺とニュペは分かれて迅速に戻ろうとしていた時だった。
「オォンッ!」
脅威度Cランク上位らしき個体が今まで気づいた様子もなかったのに急に体を急旋回してリーダーが隠れている藪のほうへと吠えた。
「くっ! なんで急に!!」
「わからん!」
「まて、来るぞ!」
あのでかい狼を先頭にリーダーのいるほうへ突っ込みやがった。
「ちくちょう! 気づきやがった! 撤退だ撤退!」
「グォォォォオオオオン!」
俺はすでに離れていて距離がかなりあったにもかかわらずその咆哮を聞いて足がすくんでしまいそうになった。必死に足を叩いてなんとか走れたが至近距離でくらったリーダーたちはどうなった!?
「っ! ちくしょう!」
「ぶべっ!」
ああっ! くそっ! 狼相手に転ぶのは命取りだ。直後にリーダーたちの断末魔が背中に叩き込まれる。くそくそくそっ! だが、この情報を持ち帰る。それで俺たちの勝ちだ!
ゾワッ!
背筋に感じた悪寒にたまらず振り返った。視線が合う。見ている。なにが? あの狼が。
「う、うあぁぁぁ!!」
恐怖を振り払うように森を駆ける。ここに突っ立っていたらあの狼に食いちぎられるに違いない……!
「はぁはぁっ」
もう足に力がはいらない。あいつは追ってこない。喉がひどく乾く。
走るのに邪魔になる荷物は途中で捨ててきた。戦うのに必要な最低限な剣と短剣はまだ持っているが。おかげでかなり身軽になった。金銭的にも。
冷静になった今、お金も投げ捨ててしまって血の気が下がりだした。とはいえ、今から戻るのもない。どうしよう……。
ふらふらな足でトボトボと歩くデビットであった。
ガサリ




