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閑話・我らが主

試しに書いてみました。

 私の名はリンド。リンド・パジェントという名を与えられた。


 長殿、アシュト様から賜ったこの名は一生の宝物だ。



 正直に言うと最初は縄張りを荒らす小僧がとも思っていた。この辺りでは我らの群れが一大勢力であったのだからその自負からくるものだ。


 まぁそんなものはあっさりと砕かれたわけだが。初めて一目見たときに毛が逆立ったものだ。光を吸い取ってしまうようなくすんだ灰色の毛並みに本当に同類かと問いたくなるような巨体。何より目が綺麗で堂々とした足取り。

 仮に敵対したとして、我らは32体全員でかかったとしても傷ひとつつけられるかどうか。それほどの武を感じさせられた。

 そんなお方に対等な態度で接するこれまた見たことのない毛並みと武を感じさせられる3体の狼。我らの間ではリーダーにそんな態度で接したら血祭りにされても文句は言えない。とても恐れ多くてそんなことはできないのだ。

 だが、あのお方は困ったようにやれやれと返すではないか。そんな態度になぜか暖かい気持ちになるのだ。




 あのときはわからなかった。だが今ならわかる。


 本当にお優しいのだ長殿は。



 我ら狼は1体1体は弱い。だから誰かが犠牲になることは日常茶飯事なのだ。1体1体傷つかないようにするよりも群れ全体を守り養うためにも無茶をしなければいけないときがある。そのためにも1体を捨て駒にすることもままある。


 だが、あのお方はそれをお許しにならなかった。こうおっしゃったのだ。

「全員で生きて帰るんだ。みんなで笑って過ごそう」


 なんたる傲慢さ。なんたる甘さ。


 だが、あのお方はそれを可能にするだけの力があった。知恵があった。



 あの方が言う狩りの方法や食料の保存などの知恵は我らは聞いたときに目から鱗が落ちる思いであった。本当にすごいお方だ。このお方についていけば間違いはない。


 それは他の群れの長だったものも共感している。群れが集まり約100体とこれまでにない規模になったにも関わらず末端も食いぱっぐれることもなく維持してのける。


 これがどれだけ難しいことかわかるものは少ないだろう。少なくとも我ら長だったものには無理だ。ゆえに尊敬してやまない。




 つらつらと述べたが我々はそんなアシュト様のことを敬愛している。だから――



「イグニ兄さんもう勘弁して!」

「何を言う? まだ始まったばかりだぞ?」

「フ、フブキ姉さん止めてぇ!」

「あらぁ? 私もすっごく心配したんだからね?」

「エ、エクト兄さん電撃だけは…電撃だけは勘弁してぇ!」

「やだ」

「ぴゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 お仕置きされている情けない姿までもが愛しいのだ。



 ここだけの話だが、ご兄弟には逆らわないでおこうと我々は心を一つにしたのだった。




別視点難しいですね。おかしいところあればご指摘お願いします!

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