お仕置きしちゃうぞ♪
愛され主人公。
ぜぇぜぇ、もう少しでマイホームだ。頑張れ俺。
森を駆ける前の陽は昇りたてだったのが今じゃ頂点に照りついている。結構かかっている。
そりゃ、途中でおなかすいて適当に狩りをしていたせいだな。まぁ5日も気絶していれば誰だって空腹になる。俺は悪くない。うん。
言い訳がましく誰にとでもなく脳内で結論を打ち出して、マイホームたる洞窟の前へとついた。
そこには物々しく3体の巨大な狼の前で整列している我が眷属の姿があった。なんだなんだ?
「おーい、お前たちどうした? なにがあったの?」
俺がそう声かけて何があったか聞こうとした。群れの誰かが大変な目にあったんならなんとかしてやらないとな。長の役目と義務ってもんだ。
そう思ってのことだったが、ババッ!! と全員が全員血走った眼で俺を見つめるもんだからビビった。尻尾の毛が逆立つくらいには恐ろしかった。こ、こえぇ。
たじろいた俺の前に3体の巨大な狼がすぐにやってきた。え、いつの間に移動したの姿が見えなかったよ?
「こ、こ、こ、こ」
「こ?」
「こんの馬鹿者ぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「プゲラッ!?」
イグニ兄さんの愛の後ろ足キックが炸裂! 追撃にフブキ姉ちゃんの氷漬けの刑をくらう。ラストにエクト兄さんの雷撃が俺を襲う!
「アビャビャビャッ!??」
『告知。耐性スキルを複数ゲットしました。ご確認ください』
それを今は聞きたくなかったよ……。ガクリッ
プスプスと煙をあげて銀に煤が積もって毛がクルクルパーマみたいになって撃沈したアシュトであった。
******
目を覚ました俺は群れの目の前で伏して謝罪をしていた。
「か、勝手にいなくなってすいませんでした…」
緑の毛並みをした狼たちはどこか呆れていた。でも誰も失望の目は向けていない。大体がやれやれ我々の長殿はしようのないやつだぜぇみたいな態度だ。なんでこんなに呆れられているのかしらん。
俺はアホなのでだれか教えてください。
「わからぬのかこの馬鹿者め」
「私たちの弟は困った子ね」
「心配かけちゃだめ…」
ほんとすいません。森のないところへ行ってみたかったんです。好奇心を抑えきれませんでした。
「行くなら我らの誰かを連れていけばよかろうが!」
ほんとそれですよね、すいませんすいませんすいませんイグニ兄さん。
「ま、まぁまぁこうして無事でいらっしゃったのです。そのあたりでお許しになられては?」
よくやった! その調子で兄弟を止めてくれ!
「何を言うリンド。こやつはお調子者なのだ。これくらいきつい目に合わせねば反省せん」
「そうね、ずっと一緒にいた私たちも呆れるくらいアホよこの子」
「目を離せない弟なのだ。これからは見張っておくといい……」
ぐぬぬ……言い放題だなぁ。こっちからもあんたたちに対しての不満と呆れがいっぱいあるのにぃ! でも今回はぐぅの音も出せないくらいにこっちが悪い。何も言えないのが悔しい!
現実逃避気味に説明しよう! 擁護してくれたのは群れの長だった狼で名をリンドという。氏族名はバジェント。この名は元々群れだったメンバーに与えてある。総勢32体ほど。参謀ポジションについて群れの運用を助けてくれている。
「長殿は破天荒なのですなぁ」
そうからからと笑っているのはマルト・デーン。こちらも長だったもので総勢19体の群れを率いていた。リンドをサポートする立場になっているらしい。
「オサ、ダイジョウブ?」
片言みたいに喋る彼女は話すのが得意じゃないみたいでこう聞こえる。彼女はリィア・メルシュで11体の群れを率いていた。戦うのが好きでいつも狩りの役目を買って出るそうだ。
「あらあら、こんがりさんねぇ~」
おっとりとした喋りするお姉さんな彼女はアィリ・ストアだ。28体の群れを率いていて、計算高いようだ。その手腕を群れ全体へと食糧を行きわたらせることに使っているようだ。
「お、長殿、そ、その……ご無事で何よりです」
普段は常に冷静で堅苦しい喋りをするのだが動揺しているようだ。彼女はミント・テメッシュで15体の群れを率いていた。武家みたいな性格で群れの喧嘩をなだめる調停役みたいなものになってるようだ。
この5体の長とうちの兄弟を中心にしていまや一大勢力となったのだ。えへん。
「……その顔はまだ反省が足りないようだなぁ?」
「うふふ、お姉ちゃん頑張っちゃうよ?」
「痺れておくか?」
「え、いやその、みんなが誇らしいなぁって思っただけで…。言い訳無用? ほ、ほんとだょうぼぁあびゃぁぁぁぁっぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
悲痛な鳴き声が洞窟に鳴り響く。眷属の誰もががやれやれとどこかへ散っていく。天気は快晴だった。
*********
黒焦げのまま俺がいなかった間のことを聞いている。
「長殿がいなくなってかなり経っていましたので捜索班を編成して広範囲に散るつもりでしたがその前にお帰りになさりました。そのあとはまぁ……ご自身で味わったような結末になりましたが」
「ひどい目にあったよ……。ねぇ、これでも長としての面目ってあるのかな?」
そう問うとみんなサッと目を逸らす。あ、はい。今の反応でなんとなくわかるよ。トホホ、これから取り戻さないとね……。
「え、えーと。それでも舐められているとかそういう態度をとれるものはいませんよ」
「オサ、スゴクツヨイ」
「ますます素敵になられているものねぇ」
「うむっうむっ」
励ましありがとう。でも、なんかみんな俺を見る目が生暖かいというかむず痒いような……。しばらくはこんな感じになるんだろうなぁ……。てか、容赦ないオシオキをする兄弟を畏怖の目で見ていたな。
確実にこういう相関図じゃないか? 兄弟>俺>元長>みんな な感じに。
間違いではないのが悲しいところだ。兄弟には頭上がらない。昔危ない目にあいそうになってもどこからか颯爽と助けてくれたからな。曰く、俺がドジで危なっかしいから目を離せないんだとさ。その通り過ぎて反論もできないよぉ。
『解析より告知。称号スキル【ドジっ子】のレベルが上がりました』
ゲフゥッ追い打ちやめちくり~~。
俺は白目をむいて意識を手放した。
愛が痛い。




