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新しい眷属

時間をいただいたにも関わらず全然上達していない件。

「長はおられるか! 面会を望む!」


 なんだなんだ? 思えば俺たち以外の狼にはまだ会ったことがない。こうして意思疎通はできそうだから問答無用で襲い掛かられることはあるまい。


 それに切羽詰まっているような気がする。これは早めに行ったほうがいいのか?

「行ってみよう」


 兄弟と一緒に洞窟の外へ駆け出す。



 そして外では、20体ほどの狼の群れがいた。全員、緑の毛並みをしていて体は俺たちと比べて小さい。ステータスでもフォレスト・ウルフとある。

 出てきた俺たちを目に入れたフォレスト・ウルフたちは目に見えて怯えている。まぁ、体格がでかいのがでてきたらそらそうなるわな。ちょっとショックだけど。


「お、長殿であられるか! わ、我らは忠誠を誓いに参りました!」

 群れのなかでもひときわ体格がいいのが前に出てきて頭を垂れてそう宣言した。後ろのも同じように頭を垂れている。


 な、なんだ? 俺たちとは初対面のはずなのにこうも怯えられ忠誠を誓われているんだ?


「えーと……。なぜ忠誠を誓う?」

「我らの間ではあなた方に逆らってはいけないと意見を同じくしております! つきましては我らをあなた方の傘下に入れていただければと!」


 ?? 我らの間? どこの間よ? 駄目だよくわからない。もっと詳しく聞こう。



 彼らの話によると数十日前からゴブリンが姿を見せなくなったことで何かの前触れではと怪しんだという。過去にゴブリンをまとめる王が現れ、人型以外の魔物は狩られるらしい。ゆえに危機感を覚え、行方を調べたそうだ。しかし、遠くへ行けばゴブリンは姿を見せた。


 王が現れたらゴブリンは何を捨ててでも王のもとへと駆けつけるらしい。だから普段通りにのほほんと(彼らからしてみれば)狩りをしていたゴブリンを見てその可能性を捨てたそうだ。


 そうすると他の原因があるのではと、他の群れにも伝え、調べ始めたそうだ。日を置かずに俺たちが出没するようになり、どの群れも一目で思い知らされた。格が違うと。

 ゴブリンはあの方たちに狩られたのだろうと誰もが思ったそうだ。


 狼の群れといっても色々ある。極端な例えとしては排他的で違う群れに対して敵対的でばったりと会えば確実に戦闘になる。これは言い過ぎにしても、これから冬がくる。食べ物が減るということは少ない食料を巡って喧嘩が起きるのは言うまでもない。では、勝つのはだれか? 単純に強いやつだ。


 そして、俺たちは新参者だ。どういう行動に出るかつかめないため様子を見ていたそうだ。それで、他の群れも監視に参加し結論を出した。危険ではない。むしろ穏当であると。



 そうと分かれば群れを率いて傘下に入れてもらおうとあちこちで大騒ぎになってるようだ。



 ……えぇ、これから大勢来るの?



 ******



 本当に来た。群れのグループは全部で5つだった。数は大体同じくらいで、多いところは30体で、少なくても10体は超えていた。全体の数は把握できない……。だって、狩りに出たりと入れ替わりが激しいからだ。


 あれから、洞窟の一部スペースを提供して住まわせている。広すぎて寂しさを覚えていたところだからちょうどいいと言えばいいのだが。都合がよすぎて世界が俺に味方している! と錯覚しかねないんだけど。



『解析より質問。彼らを眷属化を施さないのですか?』

 ん? 確かに忠誠誓っているんだからそうしてあげたほうがいいのか?

『それがよろしいかと。むしろ彼らも保証を得られ、安心できるかと』

 よし、眷属になるか聞いてみるか。



「ぜひともしていただきたい!」

「我らの忠誠をあなたに!」

「ワタシ、ガンバル」

「ウォォォォォオオオン! ウォォォォォオオオン!」

「我が結束盤石なりや」

 拒むものがいなかった。まず最初に長だった個体から始める。こういうのは面子があるらしいからな。


『解析より提案。眷属化と同時に名前を与えてはいかがですか? 群れごとに氏名も与えればわかりやすくなります』

 名前がないと呼びにくくて不便だよなぁ。しかし、100は超える数の名前か……。兄弟に協力してもらおうかな……。

「そのような面倒はごめんだ」

「ごめんね、私苦手なのそれ」

「肉くれるか?」

 役に立たねぇなこんにゃろう! わかったよ頑張るよ!



 数日、MP切れと知恵熱でしばらく寝込むリーダーが見られるのであった。

「う゛ーう゛ー……」




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