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退魔の孤島  作者: アンケン
4/5

島の歴史

説明回、長いです。

「さて…どこから話そうかなぁ…」



 車が走り始めて数分。

 教官の話通り、インフラはかなり整備されているらしく、巨大なランクルでも悠々走れるほどの道幅があり、熊谷さんは快調にランクルを走らせる。




「まず、四条君はこの島についてどれくらい聞いてるのかな?」




「そうですね…」




 そして教官から聞いたこの島のことを話す。

 主に聞いたのはこの島の地理や交通、あとは軽い歴史くらいのものだ。





「ふむ…他にも勤務内容とかも聞いてないんだね?」




「駐在所勤務についてなら聞きましたが…」




 もちろん、駐在所で勤務するにあたっての警察官がすることは学んでいる。

 それに関しては問題ないはずだが…。




「……うん、とりあえずこの島のことから説明しなおすよ。とりあえず聞いてくれるかな?」




「は、はぁ」





 思わず生返事を返してしまう。

 この島に誘われた時の教官の話し方からも薄々感じていたが、何かまだ重要なことを俺は聞いてないみたいようだ。

 それがなんだか全く見当もつかないが、どうやら今、熊谷さんが話してくれるらしい。


 俺は耳を傾けて熊谷さんの説明に集中した。






「とりあえず、この島、神納島は名前の通り神が納められている島なんだ。千年以上前に本州で災いが多発した。各地の飢餓に加えて地震や火山の噴火など様々な災害が日本を襲ったんだ。それを危機に感じた当時の天皇が本州から離れた場所に神を祭り、災いをすべてそこに集めてもらおうと。そうして建てられたのがこの神納神社なんだ。だから、ほら」




 熊谷さんが話を区切って指である場所を指す。

 そこには祠のようなものが見え、小さな鳥居まである。

 そしてそれから少しした後にも、同じような祠と鳥居。




「あんな感じでこの島のいたるところに神納神社の祠があったりで、この島はまさしく神社の島なんだ」





 ここで熊谷さんが一息をつく。

 ここまでの話は、日本でよくあるような神社建立に至るまでの話だ。特段、改めて説明するほどでもないような、そうも思えてしまう。

 しかし、話の本題はここからだった。




「ここまではよくある話だね。しかし、神納は、日本の災害を’集めすぎた’んだ」




 ここで熊谷さんの声色が変わり、自然と俺もそれに集中する。





「災いを神納に集めることには成功した。実際日本での災害は格段に減ったんだ。けど、神納は別だった。全国から集まった災いはしばらくは神社に祀られた神様が抑えてくれたんだけど、ある日、抑えきれなくなってあふれた災いが島を襲った。魔物となって」





 魔物。

 物語の中でしか聞かないような言葉に耳を疑う。

 しかし、聞き間違いでもなければ、熊谷さんが冗談を言ってるようにも見えない。

 俺は再び話へと集中する。




「凝縮された災いは姿かたちをもって人々の前に現れた。それは時には鬼や海坊主みたいな、日本で妖怪と呼ばれるようなものになって人々を襲ったんだ。再びそのことを危惧した天皇が退魔師…陰陽師といったほうがいいのかな?まぁ、そういう人たちをこの神納島に送って魔物を退治するように命じたんだ。そうしてこの島に来た人たちが今この島に住んでる住人の祖先となるんだ」




 これも初耳。教官から事前情報として軽く聞いた歴史も、古くからある神社が残っていて、今でもその家系の人が多く住んでいる、程度しか聞いてなかった。

 それ以前に、まず、陰陽師や妖怪の存在すらも架空のものである、と思っている俺にとっては到底信じられる話でもない。


 そもそも…




「なぜこの話を俺に?いえ、この島のことを知るのは大切だとは思いますが、特に重要なことというわけでは…」




 そう、これが事実であろうが無かろうが自分に大きく問題があるとは思わない。

 なら、なぜ熊谷さんはこの話を俺に…そう思った瞬間だった。





「まだ続いてるんだよ。退魔は」





「え?」





 思わず聞き返す。

 そして、熊谷さんはそのままこういった。







「神納駐在所の警官…つまり僕たちのここでの仕事は退魔の手伝い。つまり、魔物と戦うことなんだよ」












 それは俺にとって、今後の人生を大きく変えた一言となるのだった。


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