いざこざ
「まったく。銀とガグには仲良くして欲しいのに」
スンは木々を軽々と跳び、移動しながら独りごちる。
「ガグもガグだけど銀も銀だよね。ああやってガグを挑発するから仲違いしちゃうのに、なんでわかんないかなぁ」
そんな独り言をしながら地面に降りる。スンの目の前にあるのはガグマイクの住処だった。
住処、と言っても動物が作るような洞窟でも巣穴でもない。人間が住むような小屋だ。まあ、掘っ建て小屋というのが一番当てはまるような、つついたら今でも崩れそうな小屋なのだが。
そんな小屋についている少し建て付けが甘いドアをコンコンと叩く。
「ガグー!スンだよーー!」
……返事はない。
「居ないなら返事してーー!」
……返事はない。
「入るよーー!!」
どーーーん!!
ドアノブを回すということをせずにドアを開ける。先ほどの家に入る行程で吹っ飛んだドアに目を向けると、何故か家の中がめちゃくちゃになってしまっているが仕方がない。気にしないことにした。
改めて家の中見渡すが、ガグマイクの姿は見当たらない。
「ありゃ。ほんとに留守だったか」
こればかりはしょうがない。帰るか。と後ろを向くとなにか壁にぶつかる。
はて、さっきはこんなところに壁なんてなかったはずだけど。と考え上を向くと、そこには怒り心頭でスンを見……睨んでいるガグマイクの顔が。目が血走っている,
「あははははー」
「……こ、こんのこんちくしょうがぁぁあああ!!!」
「ギャーー!!!」
「で、なんの用だったんだ?」
「そ、それがね。あのー、銀と仲直り出来ないかなーって」
只今スンは絶賛片付け中だった。ガグマイクに殴られこっぴどく怒られた末、反省&弁償の名目の下働かされている。
「はぁ?」
そんな中告げられたスンの回答に、ガグマイクは眉を顰めた。スンは鋭い目がさらに威力を増したのに内心びくつきながら掃除の手をやめ、堂々と答える。
「だって昨日の会議でもガグのせいで変な雰囲気だったし、さっきも喧嘩したし。あれじゃあ御神木さんに笑われちゃうよ?」
「ぐっ…」
崇拝している対象を出されると流石のガグマイクも堪えるようで、スンはその隙にさらに口撃を重ねる。
「だいたいガグは思い込みが激しすぎるんだよ。どうせ大した証拠もなしに銀のこと長老の腰巾着だと思ってるでしょ」
「あ、あいつはまだ生まれて数十年しかたってないのに会議に出てるんだ!きっとなにか手をまわしたんじゃないのか!?」
ガグマイクは苦し紛れに発言するが、既に勢力はスンに傾いている。
「ほら出た『きっと』。やっぱり思い込みじゃん。銀はとっても頭がいいのガグは知らないでしょ。それに、森の中央に御神木さんが現れて、一番に駆けつけたのは銀なんだよ。生まれてまだすぐだけど、銀はとっても賢いのですぅ。」
スンは勝ち誇った顔でガグマイクを見る。理論が破綻しているのはどこからどう見てもガグマイクなので反論のしようがなく、どこか不満げにスン睨むだけだ。
「では後日、銀に謝りに行って仲直りすることでけってーい!」
じゃあまた後でねーとくるりと後ろを向き、立ち去ろうとするスンの肩に、ガグマイクは手をのせた。
ぴしっと固まるスンにガグマイクは冷たい笑みを浮かべる。
「謝る云々と掃除とは別物だ」
「あはははー……」
「さっさと掃除をしろ!」
「は、はい!!!」
掃除や片付けが終わり、スンが自分の居場所に戻ることが出来たのは既に日が暮れた頃だったそうな。