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大樹

____うーん……


只今絶賛考え中であります。いや、急に能力があるなんて言われてね?使い方がわかんないんですわ。第一自分はただの枯葉だったんだし?またその前は普通の人間だったわけで。


____そんなわけで指導ヨロシクお願いします。


「なにがそんなわけなのか分かりませんが、一見は百聞にしかず。とりあえずやって見せましょうか」


____さっき見たんですけど。それに能力がまるっきり違うんだから見せてもらっても困るよ


「……じゃあ私に指導を頼むのもお門違いというものなのですが」


むむむ……


銀は黙り込んでしまった枯葉を一瞥すると、いつも止まっている枝から飛び立ち、空中でホバリングをした。


「では、ここにある空気に流れを少し認識してみましょうか。いま、私は空気を殴って空中に浮いています。いいですね?」


____お、おう


「では私に殴り飛ばされた空気があなたに当たっているはずです。そして、私からあなたへ空気の流れが出来ています。はい、それを操ってみましょう」


____うん全然分からない


「まああとは気合ですね」


____最終的に精神論ッ!?


どうやら銀に指導を頼んだのは間違いだったようだ。だが頼んでしまったからには受けるのが筋ってものだろう。


____よし。……気合だァァッッ!!うーごけぇぇぇッッ!!


枯葉がそう念じた途端、銀がいたところの空気がぐちゃぐちゃにかき混ぜられた。当然、その場にいた銀はそれの影響を受けるのであって。


「キゃァァァァ!!!」


荒れ狂う暴風に制御を失った銀はそのまま真っ逆さまに落ちていった。




―――――――――




「だいぶ制御が上手くなって来ましたね」


____だったらいいけど


1本と1匹の間には空中に1個の枝が浮いていた。枯葉が空気の流れを操り、重力に逆らっているのだ。


____にしても、超能力ってすごいね


「なんでですか?」


____だってほら、物理法則とかまるまる無視してんじゃん。


枯葉は能力を使って枝をくるくる回したりする。


「まあ、確かにそうかもしれませんがこうして結果が目の前にあるんですから、理屈は考えなくてもいいんじゃないですか?」


____それもそうだねぇ。じゃあ魔法とかってあるのかね?


「さぁ。詳しくは分かりませんが、北の方に魔法のようなものを使う者がいるというのは聞いたことがあります」


____ほー。できれば一度会ってみたいね。まあこの体じゃ無理だろうけど


「まあ、誰かの妄言かも知れませんし、あんまり期待するのもやぶさかではないですよ」


____そうだねぇ


「では、私は森の会議がありますので」


____がんばれー


銀は、いつもの枝から飛び立つと、ではまたと言ってから飛んでいった。




―――――――――




「はぁ、めんどくさいですねぇ」


銀は今、森を管理する者が集まる会議に出ていた。この森の主軸を担う者が集まっている。


「おい、何か言ったか?お前は長老の情けでこの会議に出させて貰っているんだ。あんまり調子のんじゃねぇぞ」


銀のつぶやきが聞こえたのか、隣の男が突っかかってきた。見た目は普通の人間に近いが、頭の上に耳がついている。ガグマイクという名前であった。


銀は疲れたふうにため息をつく。


「はいはい……」


「お前っ!!」


「ほれそこ。静かにしてなされ」


「ちっ」


ふたりが喧嘩しそうになったのを静かな声で宥めたのは、長老と呼ばれる人物であった。見た目はただのフクロウ。だがその瞳には、底の見えない深みがあった。


「さて、今回の議題は中央にある大樹についてじゃ」


「はーい。しつもーん!」


長老の話に割って入る元気な声の主は、小さな少女だった。だが、この子供にも頭の上に耳がついており、人間でないことが分かる。名はスンと言った。


「あれってむかしにもあったんでしょ?なんでいまになってまたはえてきたの?」


「あれはいわば、森の神様じゃ。神様のことは神様にしか分からぬ」


「はっ。森を守るのも気分ってことか」


銀につかかってきた男は、鼻で笑う。


「ガグ、そこまでにしときなされ」


「...ちっ」


しかし長老はそれを咎めた。


「話を戻すが、この大樹様はこの森の主であり、守護神じゃ。おかげで、森も整えられ住みやすくなったしの。そこで、じゃ。わしらはいままで森を管理することに力を注いできた。これからは大樹様をお守りすることに力を注ぐのじゃ。」


言い終わった長老は皆を見回した。


「わかった!」


「了解です」


「…ケッ」


上からスン、銀、ガグであり、ひとりは元気よく、ひとりは至って真顔で、ひとりは腕を組み明後日の方向を向いていた。


「では守りにつく者は順繰りにするとして、それはまた明日決めるとするかの。今日の番は……」


「私がやります」


長老の考えるな隙も与えず、銀は答えた。


「おお、それではよろしく頼むとするかの。では解散」


長老は少し目を見開きながらも了承すると、自分の住処へ戻って言った。

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