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銀③

今日も今日とて森のパトロールをしていました。長老から正式に仕事を取り上げられた私は、暇つぶしにパトロールという名の散歩をするしかないのです。


今日も何にもない平和な1日だと思い、ふと中央の大木を眺めていると、下から何か落ちるような音が聞こえました。


疑問に思ったのもつかの間、その音は森全体へ広がります。


鳥たちが空に避難している中、音の原因になったところに行ってみると、地面に枝が無数に落ちていました。


元々枝がついていたであろう場所にはもうそれがついていた痕跡は無く、余分なところがはぶられ整然とした木がたっていました。


周りの木々も同じようなことが起こり、森が整えられていきます。


これまで森を管理するのにとても苦労していた私たちを嘲笑うかのように整理されていく木々は、先人達から伝えられてきた昔の森の風景を取り戻していきました。



私は、元凶だと思われる中央の大樹へ真っ先に駆け寄りました。



―――――――――




____で、話しかけてきたってわけか


「そうです。おかげで速やかに問題が解決できたでしょう」


銀は少し胸を張って、ドヤ顔?をしている。


なにしろ鳥なので、表情がわかりづらい。なんとなく声の雰囲気で感じ取れたりするのだけれども、声がなければ全くわからないだろう。



森の騒動が一段落ついた次の日、2人はお互いの身の上話をしていた。協力関係になったはいいが、互いの事も知らずに行動を共にするなんて、ちょっと遠慮したいものだ。



____まあ木の枝が急に取れるなんて思ってなかったから来てくれて助かったよ。ところで銀、質問があるんだけどいい?


「ん?どうぞ?」


____その銀が使っている能力って、いつ手に入れたの?


能力。普通ではありえない力。空想のものでしかなかったものだ。それがこの世界ではある。という事は自分も使えたりするのではないだろうか。能力の手に入れ方さえわかれば、枯葉の時のように死なずにすむかもしれない。


銀は枯葉の質問に、首を傾げながら思案する。やがて、こちらを向くと「すいません。わからないです」と無表情で言った。いや、もしかしたらすまなそうに言ったのかもしれない。


____そっかぁ……まあ分かればラッキーとくらいにしか思ってなかったから大丈夫だよ。


「お力になれずすいません」


銀はさらに肩を落としてしまった。


____いいっていいって。ええと、じゃあ、その能力を使って僕を見てくれないかな。


「……はい?」


目を一層大きく広げて、心底予想外のようにこちらを見てくる。


____いや、ほら。実はまだ自分もことも把握しきれてないんだよね。だからその本質を見極める?っていう能力で僕を見てもらえればなにか分かるかな?みたいな。


そう、まだ自分が何者なのか、どういう役割を持ってここまで大きくなったのか、自身のことなのにわかってない事は沢山ある。本質の見極め、要するに考えるな、感じろの精神で判断してもらえれば、また新しい発見があるかもしれないのだ。


「分かりました。やるだけやってみましょう」


そう言うと、銀は目を閉じて集中し始めた。そしてカッと目を開けると、その漆黒の瞳で自分を凝視してくる。しばらくすると、目を逸らしため息をついた。


「だいたい分かってしまいました。あまり意志ある者にこの能力は使いたくなかったのですが」


____ええっ!ごめんね?


「別にいいです。それより問題なのは能力を使った結果です。何故かは分かりませんが、あなたの本質は流れを操ることにあるようです。統制された流れが見えました」


____ええっとつまり?


また銀はため息を吐く。


「つまり、あなたにはなにかの流れを操ることが出来る、という事ですよ」


____能力ですか?


「能力です」


思わず内心でガッツポーズをしてしまった。超能力というものには皆一度は憧れる訳で、それを手に入れてしまった枯葉はテンションアゲアゲである。まあそれでも感情の起伏が少ないため、少しの気分の高揚で住んでしまうのが悲しいところだ。


「まあ使い方は自分自身で試行錯誤してみてください。私はこれから森の仕事があるので。それでは」


____えっちょっ


そういうやいなや、颯爽と森の方へ飛び去ってしまった。全くマイペースな鳥である。

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