ありふれたもの
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____どこだここは?
視界には、様々に形取る雲が、一つの方向にすごい速さで流れている。どうやら空を見上げているようだ。
すぐ近くで地面を揺らすような騒音が聞こえる。音の方向へと向こうとするが、視界は動かない。手や足を動かしてみようとしても、視界に変化はない。というか手も足もないみたいだ。
____どうやら人間ではなくなったらしい
今まで自分は人間だった気がする。しかしどうも思い出せない。物の名前などはわかるのだが、自分の名前や生まれた場所などが、すっかり抜けているのだ。
____まあ今はもうどうでもいいか
既に人間ではなくなった身だ。人間の時の記憶など、あってもなくても同じだろう。
また騒音が聞こえる。今度はもっと近い。
だが、先ほどとは違うことが起こった。視界がぐるぐると回ったのだ。
自分は空に高く舞い上がったのだとわかる。空、地上、空、地上と視界が転々とする。
地上が見えた時、まっすぐと伸びる道が見えた。先ほどの騒音は、牛車が通った時の音だったのだろう。
空に舞い上がったのは、それが横切った時の風によるものと推測する。
____という事は、自分は少しの風だけで飛ばされてしまうほどの存在なのか
そんなことを考えているうちに、地面にまた落ちてしまった。しかし、先程はやわらかい土の上だったのに、今回は地面が硬い。踏み固められているような感じだ。人通りが多いのだろうか。
視界は相変わらず空だけを映している。
いろいろな形に変わり、流れていく雲を見ているうちに、『諸行無常』という言葉を思い出した。
万物、ずっと変わらないものはない。的な意味だ。あまり詳しくは思い出せないが、学校で習った記憶がある。
実際、人間だった自分が、人間ではない『人外』の存在になっているのだから、変わらないものなんてものはほんとに無いんだろう。昔の人は頭がいい。
人間の時から、哲学というものは好きだった。皆があたりまえだと思っていることに、再度疑問を持ち、自分の理論を組み立てて、納得する。要は自己満足である。
そんなことを考えていると、後ろ(前?)の方から足音が聞こえる。2人組のようだ。姿は見えないが。
____どうにか自分に気づいてもらえないだろうか。
少しわくわくしながら待っていたのだが、その希望は無残に散った。
急に視界に靴の裏が映り、そのまま迫ってきたのだ。要は踏まれたということなんだろう。
まあ風で飛ばされるほどのものだ、気づかなくても仕方が無いだろう。と考えていたが、あるものが目に入り、その考えはなくなった。
それは、粉々になった茶色いものだ。申し訳程度に葉脈が見える。それから判断できる事は、
____自分は枯葉だったのか
自分の正体が枯葉、というありふれたものだということだった。