悪魔と子供~幕魅と悪診~ 第三章
遂に殻魔病院に隠された扉が開かれる! それは果たしてどんな物なのか? そして、志略君の運命は!?
悪魔と子供~幕魅と悪診~
第三章…格納と源移
斬谷は右腕を押さえて地面にのた打ち回って悲鳴を上げていた。
(獅血)「…こいつへの罰は終わったことだし、通常勤務に戻るか?」
(淨櫳)「そうだな、……獰子、戻るぞ」
(獰子)「はいよ」
獰子はユニコーンの槍を淨櫳に投げ渡して淨櫳の元に駆け寄った。
(淨櫳)「…俺と獰子は先に帰るが獅血は如何する?」
(獅血)「…自分は地泉と合流してからにする」
(淨櫳)「了解」
淨櫳と獰子はユニコーンに乗って現場を去った。
(獅血)「…さてと、貴方の奥さんと娘さんは預かります」
(斬谷)「待て! 私から――」
(獅血)「…貴方にとって家族は唯のステータス…なので返しません!」
斬谷は怒りを露わにして地面に落ちている拳銃を拾って獅血に向って発砲しようとすると肉体に激痛が襲った。
(獅血)「無理ですよ。私達が貴方に掛けたのは【悪行を働けば容赦なく激痛を与える】刑ですので」
(獅血)(…まあ、死なない程度に固定して在るから大丈夫だけど……)
(獅血)「…そこで苦しんで下さい。…命の重みを感じて……」
獅血は乗って来た車の後部座席に斬谷の奥さんと娘さんを乗せると地泉が居る海岸沿いに向った。
その頃、地泉の方はラフな服装の一味を一掃し終えていた。
(地泉)「…以外に呆気ないな」
その時、地泉の背後の物影に隠れていた男性が拳銃を発砲させようとすると拳銃に銛が貫いて更に上から座縁が降りて来て男性に回し蹴りを決めて戦闘不能にさせた。
(座縁)「相変わらず、陸海君は隙が在り過ぎるわよ」
(地泉)「悪いな、こっちに回して」
(座縁)「良いわよ、海沿いでの暴力沙汰は私と陸海君の方が得意だし」
(地泉)「さてと、こいつ等が何を取引していたのかを確認してみましょうか?」
(座縁)「ええ」
地泉はラフな男性の近くに転がっているアタッシュケースを開けた。そこには大量の臓器が入っていた。
(地泉)「数が多すぎる!」
(座縁)「ざっと、二千個以上ね」
地泉達の周囲には大量のアタッシュケースが散らばっていて更に木箱の中にも入っている物さえ在った。
(地泉)「こいつ等は臓器の売買をしていたのか!?」
(座縁)「…それにしても、この数は尋常じゃないわ!」
(地泉)「可能性として上るのは心究が調べている病院だな」
(座縁)「殻魔病院が大きく関与していると?」
(地泉)「…分からない、俺達は徳魔からの暗号の通りに動いただけだから」
(座縁)「…この数をどうやって運ぶつもりだったのかしら?」
(地泉)「…恐らくだが、この廃船内に長期保存して――」
(男性)「――長期保存して臓器移植に使うのさ!」
地泉と座縁は背後を振り向くとラフな男性の一人が目を覚ましていた。
(地泉)「…臓器移植だと?」
(男性)「そうだ、移植を待っている人間に早く元気になって欲しいからこそ、こういう手を使っている!」
(座縁)「あんた達は個々に在る臓器は如何したの!?」
(男性)「こちらにも守秘義務は在る! …だが、一つ言えるのは臓器の持ち主は既に死んでいるのだよ」
(地泉)「…成程、臓器だけを抜き取り外見はそのままにして置けば火葬して臓器が無い事に気付く人間はごく少数のみ」
(男性)「そんな人間も彼等は殺害しているようだがね」
(地泉)「…だとしたら、大丈夫ですよ…今から逮捕させますから」
(男性)「馬鹿め! 此処は法律国家だぞ! どうやって逮捕させる!?」
(地泉)「確かに法律では難しい。ですが、一つだけ彼等は大きく失敗している」
(座縁)「此処に在る臓器は如何するの?」
(地泉)「心究に訊いてからじゃないと分からない」
(座縁)「…だったら、こいつ等を拘束して動けない状態にしてから臓器を全て回収しましょう」
(地泉)「そうだな」
(座縁)「…取り敢えず、今は急いで――」
その時、廃船が大きく揺れた。
(地泉)「何だ!?」
(男性)「…そう簡単にビジネスの邪魔はさせない」
(座縁)「何をしたの!?」
(男性)「この廃船内にある時限爆弾を起動させた。 …若しもの為に設置させておいた爆弾がこうも役立つとは――」
地泉は男性の胸倉を掴んで爆弾の場所と解除方法を問い詰めるが男性は笑みしか浮かべなかった。
(地泉)「くそっ! 槍銛はアタッシュケースを持てるだけ持ったら直ぐに船から脱出して乗って来たボードに跳び乗って此処から離れろ!」
(座縁)「陸海君は!?」
(地泉)「俺は出来る限り、爆弾を解除していく!」
(座縁)「分かったわ!」
(男性)「無理だ! 全部を解除するにはどんなプロでも8時間は掛かる!」
(地泉)「…舐めるなよ!」
地泉と座縁は別行動した。
座縁はアタッシュケースを二つ持つと甲板に出て乗って来たボートに近付こうとすると座縁の前に人が降りて来た。
(座縁)「貴方は!?」
その頃、地泉は船内を走り抜けてやっと一個目を発見した。
(地泉)「ド素人だけど、8時間と言う事は可なりの数を設置している筈だ! どうしたら……徳魔なら一瞬で片付けるだろうな……俺は俺のやり方で――」
地泉は電流を使って爆弾のタイマー部分に放ち、精密なコントロールでタイマーを解除した。
(地泉)「このやり方だと時間内に全てを――」
その時、地泉は座縁からの無線での連絡に応答した。
(地泉)「如何した?」
(座縁)「直ぐに戻って来て!」
(地泉)「まだ、爆弾の解除が!」
(座縁)「徳魔さんが来たのよ」
(地泉)「徳魔さんって……ああ、あの人か」
(座縁)「取り敢えず、アタッシュケースを持って来て!」
(地泉)「了解」
地泉はアタッシュケースを十個(指に一個ずつ)持って甲板に走り座縁が待っているボートに飛び乗った。
(地泉)「神海さんは!?」
(座縁)「今、解体を急いでいるわ!」
(地泉)(…時限爆弾のタイマーは二分を切っていた)
その頃、殻魔病院の地下二階に心究が訪れていた。
(婦長)「待ちなさい!」
心究の目の前には婦長が志略を人質にしていた。
(心究)「物騒な事で」
(婦長)「この先に行く気ならこの子を――」
(心究)「…命を大切にしたいのなら目の前の現状を見ることですよ」
(婦長)「見ているわよ! 移植で――」
(心究)「そっちじゃありませんよ。地上の方ですよ」
(婦長)「地上?」
(心究)「現在、殻魔病院は武装集団に占拠されています」
(婦長)「…まさか!」
(心究)「いえ、とある女性を拉致する為に来た誘拐犯ですよ」
(婦長)「誘拐犯?」
その時、周囲の空気が冷気に覆われた。
(心究)「遅くないか?」
心究の後ろから天雲が現れた。
(天雲)「予定通りよ」
(心究)「…此処は頼む!」
(天雲)「ええ」
心究は婦長の後ろにある霊安室に向おうとした。
(婦長)「これが――」
その時、天雲の後ろからメスが飛んで婦長の右肩を刺した。
(天雲)「医療道具を使うとは」
天雲の後ろから復実が現れた。
(復実)「担当患者が危険ならなんだって使うわよ!」
(婦長)「何故、此処に?」
(復実)「あら、志略君を探して此処に来ただけですよ」
(婦長)「首を――」
婦長は志略の首に手で絞めようとした。その時、復実が婦長の懐に突っ込んで婦長の手を掴んで押さえた。
(復実)「そんなことしたら本当に殺人者として逮捕されますよ!」
(婦長)「君達が来てから全てが狂い始めた!」
(復実)「臓器提供を本人の意思無しでやるのは歴とした犯罪ですよ」
(婦長)「何時の間にそこまで!」
(天雲)「それは――」
その頃、霊安室の奥には臓器を保存するカプセルと臓器が数百個以上在った。
(心究)「…こんなに在るとは」
心究が驚いていると背後から院長が現れた。
(院長)「此処に在るのは氷山の一角ですよ」
(心究)「まあ、そうですよね」
(院長)「此処に在る臓器を全て処分するのでしょ?」
(心究)「まあ、そうなりますね」
(院長)「臓器移植が必要な人間は沢山います! その人達に救いの手を差し伸べるにはこうするほか――」
(心究)「…娘さんの臓器移植手術が出来なくてその腹いせのくせに」
(院長)「如何してその事を!?」
(心究)「…こちらには個人情報に精通している人が居まして調べてくれたのですよ」
(院長)「だが、情報を得る方法など――」
(心究)「確かに自分は情報を得る方法が在りませんでした。 …ですが、その前に調査する為に殻魔病院に潜入をする以前の事だったら、如何ですか?」
(院長)「じゃあ、最初から分かって――」
(心究)「いやあ、保険を掛けて置いて正解でした」
(院長)「保険ってあの男の子か?」
(心究)「ええ、志略君が病院に入院するのは今回が初めてだった。そこに希望を託した。 …子供って言うのは好奇心が多いからそこに賭けた」
(院長)「その子が死ぬかもしれないと考えなかったのか?」
(心究)「いや、死ぬことは無いから」
(院長)「何故だ!?」
(心究)「入院患者に徳魔 陽と天雲 雪と言う人物が入院していたから」
(院長)「ああ、包帯ぐるぐるの」
(心究)「あいつ等は俺が所属する組織の仲間だ!」
(院長)「馬鹿な!? お前は心究一族の者であいつ等は無関係の筈だ!?」
(心究)(…やっぱり、知っていたか)
(心究)「お前らは医師と看護婦や関係者の情報を得られていた。だが、患者の個人情報を得ていない事は分かっていた。だから破滅する」
(院長)「…破滅するのはそちらだ!」
院長は拳銃を取り出して心究の左胸に目掛けて銃弾を発砲した。心究は動かずに銃弾を受けた。
(院長)「これで――」
(心究)「だから、破滅する!」
(院長)「どうして生きている!?」
院長は拳銃を乱射して心究の心臓を撃ち抜いた。だが、心究は生きていた。
(院長)「如何して――」
(心究)「…裏の法律、一条【生死体に刃物や銃弾で傷を付けた場合は法には触れないが罰は受ける】 …終りだ!」
心究が手を前に翳すとブエルが現れて院長に罰を与えた。すると、院長は悲鳴を上げた。
(心究)「院長さんに与える罰は【臓器の不定期停止】の刑だ! …まあ、それで命が尽きることは無いから安心しな」
院長はその場に倒れた。
(心究)「…娘さんが生きている事さえ分からないとは……身近に居たのに気付かない方が親失格だ!」
(ブエル)「さて、この臓器の数は如何するのだ?」
(心究)「…取り敢えず、一族の本部に連絡して一度、回収してからだな」
その頃、霊安室の前では婦長が気を失って倒れていた。
(復実)「…悪いわね」
(天雲)「良いわよ、友達じゃない」
復実と天雲が笑っていると志略が目を覚ました。
(復実)「目が覚めた様ね」
(天雲)「大丈夫?」
(志略)「う、うん」
その時、心究が霊安室から出て来た。
(心究)「上に戻ろう」
(復実)「そうね」
(天雲)「志略君、上に行きましょう」
(志略)「う、うん」
志略は天雲の手を掴んでエレベーターに乗って一階まで上がった。エレベーターの扉が開くとそこには誘拐犯二人が徳魔と睨み合っていた。
(天雲)「見ていなさい。あれが私の婚約者の実力よ」
(誘拐犯1)「天雲家のお嬢様は何処だ!?」
(徳魔)「俺はボディガードだ。雪を誘拐したいのなら力づくでも聴きだしな!」
(誘拐犯2)「だったら!」
誘拐犯2はマシンガンを取り出して徳魔に乱射した。徳魔は動かずに銃弾を全て受けた。
(誘拐犯1)「殺しちまったら――」
(徳魔)「…甘い!」
徳魔は一瞬で誘拐犯の背後に回り込み、横蹴りで誘拐犯2を撃退した。後に誘拐犯1に強烈な裏拳を顔に当てて壁まで吹き飛ばした。誘拐犯2が拳銃を取り出そうとするが既に徳魔が懐に来て誘拐犯2の腕を掴むと後ろ立て回し蹴りで誘拐犯2を床に叩きつけて気を失わせた。誘拐犯1は徳魔の背後に位置していた為に拳銃を取り出して徳魔に向けて発砲するが徳魔は後ろを見ずに銃弾を避けて前方の壁を蹴って後方捻り回転をして右ストレートで誘拐犯1の頭頂部に強烈な一撃を当てて周辺の床が衝撃でクレーターが出来た。
(徳魔)「呆気が無いな」
(心究)(やり過ぎだ!)
(志略)「か、カッコいい」
(天雲)「徳ちゃんは私のボディガードにして婚約者だから」
徳魔は天雲達に気付いて駆け寄った。
(天雲)「徳ちゃん、有難うね」
(徳魔)「気にするなよ」
(心究)(こっちが気にするわ!)
徳魔は天雲の頭を撫でた。
(徳魔)「心究達の仕事は?」
(心究)「……一応、終わったよ」
その時、徳魔の携帯電話が鳴った。
(復実)「外で電話に出て下さい」
(徳魔)「分かっているよ」
徳魔は一度、外に出て電話をして数分後に戻って来た。
(心究)「何だって?」
(徳魔)「もうすぐ、地泉と獅血、槍銛の三人が此処に来ると」
(天雲)「徳ちゃん、その中に神海さんはいる?」
(徳魔)「いや、居ないけど」
(天雲)「…そう」
一時間後、地泉達が徳魔達と合流した。
(獅血)「徳魔の言う通りに連れて来たぞ」
(徳魔)「悪かったな」
獅血は斬谷の奥さんと娘さんを受付のソファーに寝かした。
(徳魔)「地泉の方はどうだった?」
(地泉)「こっちは臓器が大量に海外に持ち運ばれそうだった」
(徳魔)「元凶は――」
(心究)「臓器の移植手術に必要な臓器提供が少なくなっている事か」
(徳魔)「恐らくな」
(座縁)「取引現場の臓器の数は尋常じゃ無かったわ」
(地泉)「一応、持って来たけど」
(心究)「…だったら、俺の車に乗せて置いてくれ、俺が組織まで運んで置く」
(地泉)「了解した」
徳魔達が今回の一件の情報整理をしている頃、天雲は志略と共に眠っている斬谷の娘さんの様子を見ていた。志略は斬谷の娘さんの頭を撫でた。その時、天雲の目に志略と斬谷の娘さんの小指に赤い糸が繋がっているのが見えた。
(天雲)(この二人なら面白そうかも)
(天雲)「志略君、この子の事、如何思う?」
(志略)「…可愛いと思う」
(天雲)「だったら、この子と付き合ったら」
(志略)「付き合う!?」
(天雲)「そうよ」
(志略)「で、でも……」
(天雲)「この子が可愛いと思ったら付き合うべきよ」
(志略)「それは……」
(天雲)「誤解しているでしょ?」
(志略)「……」
(天雲)「私が言う付き合うは仲良くしたら? って言う意味よ」
(志略)「そ、そう」
(天雲)「…私はね、徳ちゃんのお陰で助かったのよ」
(志略)「お兄ちゃんが?」
(天雲)「そうよ、徳ちゃんは私の苦しみを引き受けてくれたの……だから、志略君もこの子の為に自分が出来ることを精一杯にやりなさい」
天雲は志略君の頭を撫でた。
(志略)「…でも、この子は僕には勿体ない――」
(天雲)「あら、徳ちゃんだって一応は一般人なのよ …でも、この女の子も特殊な生き様だろうけどね」
(志略)「それってどういう事?」
(天雲)「徳ちゃんから聴きなさい」
天雲は徳魔の方を見ていた。
(獅血)「それは本当なのか!?」
(徳魔)「ああ、間違い無い」
(座縁)「でも、そんな事が在り得るの?」
(心究)「0.1%も無い確率だが在り得る」
(地泉)「…この事をあの子が知ったら」
(復実)「早くに知った方が一番に良いのよ」
(心究)「ああ、あの子は――」
(徳魔)「斬谷議員の娘じゃ無くて――」
(復実)「――殻魔病院の院長の殻魔 奇頼の娘だと言う事を!」
それから数日後、徳魔と天雲は退院となった。
(志略)「お姉ちゃん達、本当に帰っちゃうの?」
(徳魔)「当たり前だ」
(天雲)「これ以上、この殻魔病院の人達に迷惑は掛けられないわよ」
あの一件から、殻魔病院は心究一族の医師が院長として後任となって残って婦長と院長は心究一族の組織の牢屋に入って収まった。
(徳魔)「俺は先に行くから」
(天雲)「ええ」
徳魔は先に病室を出て行った。
(志略)「お姉ちゃんは如何してそこまであのお兄ちゃんの事が信じられるの?」
(天雲)「そうね、一言で言うのなら大好きだからかな」
(志略)「大好き?」
(天雲)「そうよ、私は徳ちゃんの事が大好きなの! 一番にね」
天雲はそう言うと病室を出た。天雲が病室を出ると扉の横で徳魔が腕組して待っていた。
(徳魔)「お前なぁ、照れることを言うなよ」
(天雲)「本当の事だもん」
(徳魔)「まあ、そうだけど」
徳魔と天雲は荷物を持って病院を出ると殻魔病院の元院長の一人娘の殻魔 知江が待っていた。
(天雲)「あら、知江ちゃん如何したの?」
(知江)「…私は囀麻君と一緒に居て良いのかな?」
徳魔は知江の言葉を聴くと先に外に出た。
(天雲)「…私は良いと思うわよ」
(知江)「でも……」
(天雲)「…じゃあ、知恵ちゃんは囀麻君の事を如何思っているの?」
(知江)「わ、私は囀麻君の事、カッコいいと思う」
(天雲)「他にも考え事があるでしょ?」
(知江)「そ、それは……」
(天雲)「…【私のお父さんが身勝手に酷い事をして、更に囀麻君に大変な事をしてしまった】…って考えているでしょ?」
天雲の問いに知江は無言で頷いた。
(天雲)「…私もね、徳ちゃんに酷い事をした事が在るのよ」
(知江)「本当?」
(天雲)「ええ、買い物の時なんて徳ちゃんのお金使っているから」
(知江)「でも、それは普通――」
(天雲)「…徳ちゃんのお金を全てね」
(知江)「それは流石に――」
(天雲)「私って酷いでしょ?」
(知江)「やり過ぎだと思うけど」
(天雲)「…他にも一杯やっているのよ」
(知江)「お兄さんがかわいそう」
(天雲)「…でもね、知江ちゃんが考えている事は私よりも小さい事よ」
(知江)「そうなのかな?」
(天雲)「だって、知恵ちゃん自信が囀麻君に危害は加えていないのならまだ、何も始っていない証拠! これから、二人で決めて行けば良いのよ」
天雲は知江の頭を撫でると病院を出た。
(徳魔)「帰るぞ」
(天雲)「はーい」
天雲は徳魔の腕に抱き付いて腕組みした。
それから数時間後、徳魔と天雲は特殊制裁班に戻ると西洋風ソファーに座った。
(天雲)「ねえ、徳ちゃん」
(徳魔)「何だ?」
(天雲)「そろそろ、教えてくれないかしら?」
(徳魔)「殻魔 知江の事か?」
(天雲)「そう、彼女が如何して斬谷議員の所に居ながら如何して殻魔の娘だと分かったの?」
(徳魔)「…答え合わせか?」
(天雲)「一応ね」
(徳魔)「…先ずは斬谷議員と殻魔院長は大学の先輩と後輩と言うあながちの二人なのだが、実はそこにもう一人、女性が存在していた。女性の名は星城 苑恵と言う女性が居た。この三人は仲が良かったのだが、とある日に斬谷議員にお見合いの話が在った。その相手が星城 苑恵だった。苑恵さんは殻魔院長の事が大好きだった。だが、周囲はその事を知らずにいた。当然、殻魔院長も知らなかった。苑恵さんはお見合いの話が来た時は乗り気では無かった。だが、苑恵さんはお見合いの前日に急に乗り気になった。苑恵さんは斬谷議員と電撃結婚を果すが苑恵さんの真意は別に在った。とある日に斬谷議員と苑恵さん、そして殻魔院長の三人でスキー場に遊びに向った。その日はスキー場近くのホテルに一泊する予定だった。それを利用して苑恵さんは殻魔院長に夜這いを掛けた。そして、斬谷議員とも同じ日に夜の営みを行った。それから月日が流れて苑恵さんは妊娠をした。斬谷議員は自分の子だと確信していた。だが、苑恵さんは殻魔院長か斬谷議員のどちらの子か分からずにいた。其れから更に月日が経ち苑恵さんは殻魔病院とは別の病院で出産した。産まれた子供は双子の女の子だった。苑恵さんは双子の姉の方を殻魔院長に託して双子の妹の方を育てることになった。こうして、双子は別々に育った。だが、途中で姉の方が心臓・右肺に病を罹った。殻魔院長は直ぐに苑恵さんに連絡しようとするが残念ながら国外に出ていて妹からの臓器移植は断念した。何故なら苑恵さんは斬谷議員に双子だと言う事を秘密にしていたからだ。その枷が在ってか姉の方は残念ながら亡くなった。その後に斬谷議員の自宅に【殻魔院長の娘さんの葬式の招待状】が来た。斬谷議員は疑問が生じた。それは殻魔院長が結婚をしていない事だった。斬谷議員は妻である苑恵さんに問い詰めた。苑恵さんは自白した。産んだのは双子の女の子で一人を殻魔院長に託した事を! 斬谷議員は怒ったが暴力までは発展しなかった。斬谷議員は妻の苑恵さんと共に一緒に葬式に参列した」
(天雲)「私が徳ちゃんの考えていた推理と同じよ」
(徳魔)「…それから、事件は起きた。殻魔院長と斬谷議員は二人で娘の二の舞が起きない様に裏で臓器移植の為に必要な臓器を全てご臨終した患者から取り出して裏の人間と取引を行った。 …だが、一番の疑問点は苑恵さんが産んだ双子の女の子の父親がどちらだったか? …可能性は【姉が斬谷議員で妹が殻魔院長】、【姉が殻魔院長で妹が斬谷議員】、【双子の父親は斬谷議員】、【双子の父親は殻魔院長】の四つに分かれるが正解は一番、最後の【双子の父親は殻魔院長】だった。理由は双子のDNAだった。三人のDNAの配列では双子のDNAになるには苑恵さんと殻魔院長じゃなきゃ、絶対にあり得ない配列だった」
(天雲)「…やっぱり、私と同じ答えね」
徳魔と天雲は笑っていた。
その頃、屋上で心究と復実はとある看護師に声を掛けていた。
(心究)「…お前さんは何者だ?」
(復実)「私達が調査に入るのと同時期に入るのは可笑しいわよね?」
(心究)「…俺達が入るまで殻魔病院の看護師の人数は23人だ。だが、入ったら人数が25人に増えていた。復実は除外しても一人多い! お前はこの病院の関係者じゃ無い!」
(看護師)「…まあ、病院の素性も分かったから良いか」
看護師が左手を拳に変えた瞬間、心究と復実の意識が遠のいた。
(心究)(これって…徳魔一族の……)
心究と復実が意識を失う直前に看護師の顔が見えた。看護師の正体は徳魔 神海だった。
(神海)「…裁判を見ていれば分かるのに」
その頃、徳魔と天雲は今回の件の資料作成に移っていた。
(天雲)「…そう言えば、神海さんが居た様な……」
(徳魔)「殻魔病院の裁判の裁判官の一人に神海さんが居たからな」
(天雲)「ああ、それでいたのね」
(徳魔)「神海さんも気にくわない事が在ったから同タイミングで潜入したみたいだし」
(天雲)「…復実ちゃん達、神海さんと喧嘩していたりして」
(徳魔)「神海さんはああ見えても徳魔一族の女性の中で一位に君臨していた人物だ。喧嘩の前に気を失うだろう」
(天雲)「それもそうね」
その頃、神海は殻魔病院を去っていた。
(神海)「…後は陽君が説明するでしょう」
その時、神海の携帯電話が鳴った。
(神海)「もしもし…ああ、裁判長」
電話の相手は裁判長だった。
(神海)「…ええ、殻魔病院はやはり黒でした」
(裁判長)「ならば、もう一度――」
(神海)「無理ですよ、今回の件は特殊制裁班が片付けましたから」
(裁判長)「…そうか、神海君は戻って来て詳細を教えて欲しい」
(神海)「分かりました」
神海は電話を切るとオートバイクに乗って去って行った。
その頃、殻魔病院の屋上では心究と復実が意識を取り戻した。
(復実)「あれって、神海さんだったわよね?」
(心究)「ああ、どうやら、表も動いていた様だな」
(復実)「……」
(心究)「…取り敢えず、残った仕事をやるぞ!」
(復実)「はい!」
心究と復実は病院内に戻った。
こうして殻魔病院の件は終わった。次回は鏡魔絡みで一騒動が起きる! 徳魔は法で裁けない者をどうやって裁くのか!? 更に新たな議員が登場&弁護士が登場!
悪魔と子供~幕魅と悪診~ 第三章 完
悪魔と子供~機械と可法~ 第一章 続く――
事件は過去から積み上がって歪み合った三人の男女の人生だった! そして、志略君の運命は大きく変わる【ターニングポイント】となった! 殻魔病院は命の取捨選択をしない病院に戻った!




