7.三日目(夕方)
*三日目(夕方)*
「風呂入ってきたの?」
翼と半分に分けたたこ焼きを食べながら、星太は尋ねた。
えっと翔太が言い、ちかが彼の頭を見る。
「ほんとだ。駄目だよ、男の子だからって乾かさずにいたら」
「ん、ああ、そうだよね……」
「ちかちゃーん! わなげやろおーっ」
「あ、うん! じゃ、ちづるちゃんとつばさくんのところ行ってるね」
駆けていくちかの後ろ姿に引きつり気味の笑みで手を振って、翔太はため息をついた。
「かぜひくかもってしょうたならちゃんと考えるでしょ? なんで乾かす時間もないくらい直前に入ってきたの?」
「……ちょっとミスして」
翔太は片手を額にあて、ぎゅっと目をつぶった。
「慣れないことしようとして、失敗して、その上翼と千鶴に邪魔されて、元に戻すにはシャワー浴びるしかなくて」
「よく分かんないけど……」
「不器用って困るって話だよ」
「じゃあおれは大丈夫かな。だってしょうたよりは器用だから」
星太がにっと笑ってみせると、翔太は再び息を吐き出してからぐしゃぐしゃと星太の頭を撫でた。
「言うようになったよな、星太も」
「しょーぐーーん! ちかさんすげえ上手いーー! せいたも見ろよ!」
「……ちかさんに教えてもらったら? わなげ」
悪戯心でそう追い討ちをかけると、今度は拳で軽く星太の頭を叩いた。
「いたっ」
「ちょっともかっこいいところ、見せられないなあ」
見上げた翔太の顔が、恥ずかしげな苦笑いを浮かべていた。
楽しそうな笑顔だった。
これでいいんだ、と星太は嬉しくなった。
大丈夫、ちゃんとできてる。このまま、ずっと続けていけばいいんだ。つばさやちーちゃんじゃないけど、しょうたが楽しいなら、このまま続けられる。