プロローグ「伝説の"次"の話という話」
剣と魔法が支配する大陸、ガ・ズー大陸
豊かな土壌、温暖な気候に恵まれた、この大陸では、農耕や酪農なども盛んに行われ、
人々は飢えも知らず、豊かに、争い事もなく、平和に暮らしていた。
そんな太平をきしていた大陸に、突如現れたのが「魔王」だった。
赤龍の刻十五年、唐突にやって来た「魔王」、魔王に率いられ大陸の至る所に現れた屈強な「魔物」達。何千、何万とどこからともなく現れた魔物は、それまでのガ・ズー大陸の動物の姿とはかけ離れた姿形をしており、それぞれ一様に凶暴で残忍な性質を持っていた。農土は荒らされ、家畜は食い荒らされ、そして多くの人びとは魔物たちの牙や爪にかかって死んでいった。
そして、青龍の刻三年、魔王が現れてから八年の月日が流れた。ついに、魔王は倒れた。
幾千の魔物、自身の強大な魔力によって人々を苦しめてきた「魔王」、そしてその魔王は一人の勇気ある若者「勇者」の手によって倒されたのである。勇者は、魔王を倒したあと、その功績を認められ、大陸の国の一つ、ミーツァ・ズ王国の姫君と結婚することになったという……
いっかいの平民が正義感から、戦いを志し、冒険、ロマンスを経て、魔王を倒す。最後には美しい王国の姫君と結婚する。誰もが夢見る華々しくも美しい物語がそこにはあった。
しかし、残念なことに現実というやつは、「魔王が倒され、勇者は姫君と結婚しました」なんて綺麗なハッピーエンドのあとも夢も希望もなく続いてくものである。
物資の不足で、魔王によって被害を受けた国々の復興は遅々として進まなかった。魔物の攻勢によって打撃を受けた農業や酪農も、一朝一夕で再建できるはずもなく、多くの人々は飢えに苦しむことになった。
また、魔王と魔物がいなくなった、戦う相手が突然いなくなったということで各国で兵士や傭兵が大量解雇されることになった、職を失った彼らの一部は盗賊や強盗に堕ちぶれることとなり、街々にはゴロツキまがいが溢れるようになった。
各王国の王族、貴族他、首脳陣達も、経済、産業等の復興に関しては手を付けられずにいた。彼らは魔王なきあとの大陸の主導権を巡っての策謀に忙しく些事には構っていられなかったのである。
皮肉な話だが、大陸全土は魔王が勇者に倒されることによって、より一層に混乱し、荒廃することとなった。
混沌とするガ・ズー大陸、
貧困と混乱、謀略の只中で、勇者と魔王の伝説の"次"の物語を、人々はどのようにして紡いでいくのだろうか
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