ゲームじゃなくて、そろそろチャットしたい〈その1〉
「職探せェェェェェ!!」
「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!絶ッッ対、嫌だぁぁぁぁぁぁ!!!」
突然の会話。
なぜこうなったかというと、話は二時間ほど前に遡る。
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オッサンがゲームの世界からここに来て、はや三日。
毎日毎日、まあ飽きずに言ってきますよ、お決まりのあの言葉。
「ね~クリアした~~?」
ったく、ふざけんなって話だ。
そんな一日そこらでクリアできるヤツじゃねーっての。俺にだって、ゲーム以外にやることがあんだよ。チャットとかチャットとかチャットとか。
「おーぅい!クリアまだぁ~??」
とりあえず、あそこに転がってるニートのオッサンを始末してからチャットだな。
「何度も何度もうっせーんだよ。もう聞き飽きたっての。そんなに早くクリアできるなら、もうとっくにクリアして、お前とはおさらばしてるぜ。」
「ハッハッハ!!何を馬鹿げた事を言っているんだ!たとえゲームをクリアしても、我はここから出ていかないぞ!」
「は?」
あの、すんません。なんか、遂に幻聴が聞こえ始めたんで、耳鼻科行ってきてもいいですか。
「む?どうした?硬直なんかして。」
「いや、ちょっと幻聴が聞こえ始めてさ。“クリアしても出ていかない”みたいな。」
「おぉ………。貴様も遂に頭が犯されてきたか…。」
「だっ、だよな!そんなの幻聴だよな!アンタ言ってないもんな!そんなこと!!」
「いや、言ったが。」
「……………。」
「我が言っているのは、幻聴がどうのこうのという問題じゃないぞ。“聞いたことを幻聴と認識してしまう”ということだ。」
……それは全国の人々が一度は使う最終手段だ。
「まあ、我が急かしすぎたのもアレだが、気を付けろよ?ゲームのやりすぎで体調を崩されてはこま…………オイ!大丈夫か!口から泡が出ているぞ!まっ……まさか、ゲームのやりすぎで、遂に“泡魔法”が使えるようになったのか?!」
違う。信じられなくて、というか信じたくなくて、泡を吹いてしまっただけだ。問題ある。大いに。
俺は、なんか動くのがめんどくさかったので、そのまま泡を吹いていた。まあ、ラスボスのクセになぜか人情深いダーキュレスのことだから、『俺がここに来たせいだ』とか思って帰ってくれるかな、とか、そういう期待も少しはあった。
でも事態は逆効果。
「……いや、待てよ。泡魔法といえど、これはいくらなんでも時間が長すぎだ!これはもしや………呪いか!?こっ…この時は確か、えっと……あ、そうだ!“悪魔の口づけ”!!これを使えば呪いをとけるはず!」
そういうとダーキュレスは、俺の唇に顔を近づけてきた。
「復ッッッ活ゥゥゥゥゥゥ!!!」
俺は開眼した。
なんせ、オッサンにファーストキッスを奪われる訳にはいかないからな。
続きますm(_ _)m