オッサンの部屋
ここはどこだろう。
どことなく薄暗い広間。
藍色がかった天井が、怪しげな雰囲気を作っている。
「おお。起きたか。」
目を覚ますと、そこには例のオッサンの顔があった。
「?!」
「うおっ!!そんな、跳ね起きなくてもいいんだぞ。」
「こ…ここはっ………」
「よくぞ聞いてくれたな!」
オッサン仁王立ち。
「ここは暗黒塔最上階の(以下略)!つまり、俺の部屋だ!!」
「…………。」
顔が引き攣る。
「まだクリアした人………いないからよ。
部屋に呼ぶの、お前が…初めてなんだぜ………………?」
オイなんで頬染めてんだ。気持ち悪いんだよさっきから。お前の部屋なんてただ加齢臭漂わせてるだけだろ。
「……ってことは、俺今ゲームの中にいるのか?」
「そ……そうだ。」
俺がガン無視したのを気にしているのかこのオッサン。動揺が激しいぞ。
「まあ貴様の意識がここにあると言ったほうが正しいか。身体の方は現実世界にある。今頃はすごい姿勢で倒れているんだろうな。ハッハッハッハッ。」
「いや、『ハッハッハッハツ』じゃねーよ!早く戻せよ!家族の誰かが見たらヤバイだろーが!!」
これでも一応、俺は大学2年である。一人暮らし?ナニソレオイシイノ?
「いや~、もうちょっとゆっくりしていけよぅ。ほら、お茶出すから。貴様は何が好みだ。レモンティーか?ホットもあるぞ。」
「くつろぐ気満々じゃねーか!俺は早く帰りてーんだよ!しかも飲み物の内容がちょっと乙女チックなのがすげー腹立つ!なんか腹立つ!!」
「あ、わかった!貴様はレモネード派かな?」
「『かな?』じゃねーんだよ!!可愛くねーよ全然!!オッサンが言ってる時点でアウトなんだよ既に!!」
「貴様は焦りすぎだ。我を誰だと思っている。大丈夫だ問題無い。なんせ、お前の姿は眩ましてあるからな。」
「?!本当か?!本当に……信じて、いいんだな………?」
「ああ。」
そういうとオッサンは微笑んだ。
「山積みに、なっていたゲームソフトを倒してきたから、それに埋もれて身体は見えないはずだ。」
「それもっとヤバいだろーがぁぁぁぁぁぁ!!!」
ソフトが倒れてきた所為で死んでしまったなどと思われては困る。