表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

第一章 第四話 常時の備え

 次の日、横須賀には軍艦行進曲が響いていた。この日は観艦式3日目、横須賀基地にて一般公開が行われていた。新鋭艦である『やまと』も露天甲板のみ一般公開が行われた。


「今日はいい天気だね。甲板にいる人たちもうれしそうだよ」

 隣にいる少女はひゅうが。名前のとおり護衛艦『ひゅうが』の艦魂である。

「そうですね」

「私はこの観艦式が大好きなんだ。自分をいろんな人に見てもらうっていうのがすごく嬉しくて」

「でも私は甲板だけです」

「そのうち中もだよ」

 そこへ夏輝がやってきた。

「あっ三尉!」

 やまとに手を振りながら夏輝が言った。

「やまと、僕も仕事終わったしそのへん見に行こうよ」

「あっいいですね。いきましょう」

「ねえ、私のこと忘れてない?」

「あ、忘れてました」

「忘れてたんかいっ!」

「えっと・・・何さん?」

 夏輝の質問にやまとが答える。

「まだ紹介していませんでしたね。こちらはひゅうがさんです」

「ひゅうがっていうとあの?」

 そう言いながら照輝は外を指差した。

「うん、護衛艦『ひゅうが』の艦魂のひゅうがだよ」

 ひゅうがが言うとやまとが今度は夏輝の方を指しながら言った。

「で、こちらが私の航海科の篠原夏輝三尉です」

「篠原です」

「篠原くんか。よろしく」

「よろしくお願いします」

 そう言うと二人は握手した。

「じゃあ行きましょうか」

 数秒後やまとたちは『てるづき』の全甲板にいた。

「おお、これがてるづきか」

「弾道ミサイル対処中のイージス艦にできる防空の穴を塞ぐために作られた僚艦防空艦・・・ですよね」

「私と同じFCS-3だね」

 2012年に就役した護衛艦『あきづき』型は日本のBMDの一部としてSM-3による弾道ミサイル撃墜というミッションが加わったことにより防空性能が落ちたイージス艦の護衛のために作られた艦である。そのため射撃システムには今までの艦にはなかった横過目標に対するアリゴリズムが追加されている。『あきづき』型はOYQ-11戦術情報処理装置を中心として射撃指揮にはFCS-3A、防空にはシースパローの発展型であるESSMなどが搭載されている。

「この艦橋、何回見てもいいなぁ」

「私もFCS-3が良かったです」

 ひゅうがとやまとが言うとそれに対して夏輝が言った。

「でもFCS-3ってたまにイージス艦のSPY1と間違われるよね」

「確かにそうですね」

「私なんて就役した当時はミニイージス艦とか言われた」

「ひゅうがさんの場合は空母って言われた方が多いんじゃないですか?」

「・・・そういうこと言わないの」

「すみません」

 そんな会話をしていると向こうの方から一人の少女がやってきた。

「君たち私の上でなにやってるの?」

「あってるづきさん。今FCS-3っていいなあっていう話をしていたんです」

「やまとにも似てるのがついてるんだからいいじゃん」

「まあそうですね」

 やまととの会話を一回終わらせるとてるづきは夏輝の方を向いていった。

「ところで君は誰?」

「あっ護衛艦『やまと』航海科の篠原夏輝三等海尉です」

「ああ、やまとが言ってたのは君か・・・私はてるづきね」

「よろしくお願いします」

 そう言って二人は握手した。

「三尉、そろそろ帰りましょう」

「うん、そうだね」

 そう言うと夏希とやまとは瞬間移動で時間に戻っていった。




 11月8日、小笠原沖で演習が行われていた。

「対空対水上戦闘よーい」

「機関、最大戦速」

「おもかじ270°(ふたひゃくななじゅう)ヨウソロー」

 ここは護衛艦『やまと』の艦橋である。今回は対空対水上戦闘を想定した演習である。

「艦長、CICへ」

「うむ。航海長、頼んだぞ」

 そう言うと『やまと』の艦長は艦橋を出てCICへ向かった。

「始まりましたね、演習」

「うん、がんばろう」

 そういったのはやまとと夏輝である。演習とは言え結果が残るため夏輝たちも緊張しているのである。


 場所が変わって『やまと』CIC内。艦長の指示のもと演習が行われている。 

「目標、距離320km(さんびゃくふたじゅう)

「目標群A(アルファ)、本艦に接近」

「対空戦闘!CIC指示の目標」

「トラックナンバー102、113、SM-2発射!」

 模擬戦であるため実弾は発射されないがコンピューターにより着弾判定が行われる。

「トラックナンバー102、113、撃墜!」

「次、103から105、SM-2発射!203、221、SSM発射!」

「SM-2命中、目標撃墜!SSM二発、撃墜されました!」

「SSM次弾、シースキマーで目標に接近、ホップアップなし」

「了解・・・・諸元入力完了!」

「トラックナンバー203、221、SSM再度発射!」

「SSM命中!」

「目標群A全機撃墜、目標群C(チャーリー)2隻撃沈」

 コンソールの前に座っている海曹が結果を読み上げている。と、そこで別の海曹が声を上げた。

「目標群B(ブラボー)、さらに接近!SM-2で撃墜するには近すぎます!」

「主砲対空戦闘よーい」

 その声と共に主砲要員が机にかけてあったトリガーを右手に持った。

「目標、主砲射程内に突入!」

「トラックナンバー106から112、主砲うちーかたはじめ」

「うちーかたはじめ!」

「発泡!」

 そう言われると主砲要因は手に持っていたトリガーを引いた。その時外では127mm速射砲が発射される。演習のため数km先に着弾した砲弾により海面には何本もの水しぶきが上がっている。

「主砲、うちーかたやめ」

「うちーかたやめ!」

「敵機全機撃墜!」

 その声からしばらくすると艦長が言った。

「状況終了。各員元に戻ってくれ」

 その言葉とともに訓練状況が解かれ普段の業務に戻った。


 演習が終わったときはすでに艦橋の中に西日が指していた。海の向こうには綺麗な夕日が海に沈もうとしている。

「おわりましたね、演習」

「うん、結構いい結果だったね」

 そう言うと顔を窓の外に向けた。

「いつでも実践に備えておかないとね」

「でも、やっぱり実践はないほうがいいですよ」

 やまとの言葉に夏輝は考えるように外を見つめた。

「そりゃぁ争いは何もない方がいいよ・・・・・・でも、やっぱりいつかは起きるんだろうな」

 夏輝は窓の外の夕日を見つめたまま言った。





最近更新間隔が広くなってしまってすみません。今回はてるづきとひゅうがの艦魂を出しました。後半の演習はとりあえずということで書きました。次回ではイージス艦を出そうと思っています。これからもよろしくお願いします。


2013.2/20 「あきづき」を「てるづき」に変更

2013.4/14 題名変更 節→話

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ