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ひとつ目

全然怖くないです。

ジャンルがいつも文学とか恋愛とかばっかなので、ちょっと怖いの書いてホラーにしたかったけど、文学ちっくに。



「ひとつめ」は目が一つ。まん丸の白い顔に、吸い込まれそうなくらい真っ黒で、濡れたようにぬらぬらと光っている大きな目が、ひとつだけ張り付いている。

「ふたつめ」は目が二つ。まん丸の白い顔に、空洞のような、深い闇の底を覗いているかのような、真っ黒い目が、ふたつ、均等に横並びにくっついている。

「みっつめ」は目が三つ。まん丸の白い顔に、闇夜の中に浮かぶ星の光を見つけたように、その目はきらきらと楽しそうに輝きながら逆三角形に置かれている。たまにそれぞれが気が向いたようにくるりと入れ替わるのが面白い。


そいつらはパタパタと、そこらじゅうを楽しげに走り回る。大人の男の手の平ほどの大きさだから、人に見つかるときもある。そんなときは「ひとつめ」は困ったように転がりながら暗がりに逃げ込み、「ふたつめ」は焦ったようにあたふたと暗闇に溶け込み、「みっつめ」は気にせず踊るように影の中に消える。


あるときそいつらは猫に追いかけられていた。

普通の大人の猫なら、そいつらのことは何にも気にしない。そいつらは雨や風や太陽の光と同じ、いつもあり、また、たまに見えないものなのだ。

しかし子猫は違う。人の子が「どうして雲はお空に浮いているの?」と疑問を持つように、子猫もふと見つけたそいつらを放ってはおけない。

母猫が「いいからこっちへ来なさい」とたしなめても、笑ったり歌ったりするように、駆け回り飛び跳ねるそいつらに興味津々、しまいには捕まえようと、まだ軟らかそうな爪を思い切り出して「ひとつめ」に切り掛った。

「ひとつめ」は困ったようにくるりと顔を回すと、またまたくるりと子猫のふさふさした腹の下へ転がり込んだ。

どこかに消えてしまった「ひとつめ」にはもう目をくれずに、子猫はやっと鋭く尖り様になってきた牙を剥き出しにして「ふたつめ」に飛び掛った。

「ふたつめ」はあたふたと小さな手足をバタバタとして、飛んできた子猫をかわして、側にあったピンクの如何わしそうな派手な看板の後ろに消えていった。

子猫は消えた「ふたつめ」など最初からいなかったかのように、すでに「みっつめ」と対峙している。

「みっつめ」は身構える子猫をよそに、口笛でも吹いていそうな軽やかなステップを踏みながら三つ目をくるりくるりと回していた。

くるくる回る三つ目をじっと睨みつけているうちに、子猫はうとうとと眠くなってきた。みっつある黒い丸が「みっつめ」の白い顔の中で一定のリズムでゆっくりと、くるりくるりと回る。「みっつめ」の踊りだって重力をまったく無視してふわりふわりと、子猫が見つめるほどに遅くなってくる。

子猫は堪らないとばかりにときたま尻尾を振って、眠気を覚まそうとするが、時既に遅し。

あったかい毛布に包まれて、幸せなぬくもりの中のまどろみを感じている夢を、コンクリートのゴツゴツとした地面の上で見ているのだった。

そのようすを見ていた「ふたつめ」は『ただいまの時間2980円』と書かれたなにやら如何わしい看板の裏からコッソリと出てきて、自分で目が回ってしまい座り込んでしまった「みっつめ」に突っ込みを入れると、子猫のふわふわの腹の下がら潰れてペタンコになってしまった「ひとつめ」を掘り出した。


そいつらはまた駆け回ったり、飛び回ったりしながら陰から影へ、闇から夜に溶けていった。


側で見守っていた母猫は、すっかり幸せそうに寝ている子猫の姿に癒されたが、消えていった「ひとつめ」たちのことはどうでもよいようだった。

そういうものである。



さて、お話はここからだ。

自然の中に生きている動物は、環境がなんなのか、人間よりはずっと良く知っている。

環境とは自分に働きかけるすべてのもの。自分がコントロールできるものとできないものがあるが、ここは置いておこう。

気温は環境だ。暑ければ脱ぐ。寒ければ着る。湿度もそう。高ければ洗濯物が乾きにくい。風通しの良い場所に干すか乾燥機にかけるだろう。種族間のコミュニケーションも、人間だったら人間環境に影響される。社会環境、家族環境、お金などの貨幣経済も環境だ。人は、いや生き物は環境に影響され、環境の中に生きている。「ひとつめ」達も環境なのだ。


「ひとつめ」に影響されることは何であろうか。あの子猫だったら、そいつらのせいで遊びつかれて寝入った。それが影響だ。

しかしそれだけではない。

目に見えなくて、たまに見えて、それは太陽の光の中で感じる温かさのように、ずっとあるがいつもは感じないもの。

そうであっても、それらは私達に何かしらの、日ごろは感じない、しかしとても大きな、大きな影響を与えているのではないかと思う。


私はデスクの影に、そいつらがさっと通り過ぎたような気がしてならない。

電球がチカチカと瞬く。今日はもう寝ることとしよう。

幽霊とか見たことありませんが、怖い話を読んだり見たりすると、とてつもなく怖がる私は、何かがそこにいるような気がして眠れなくなります。

そんな夜中にメールがくるとバイブ音に悲鳴をあげてしまうほど。

アド変のメールだったら、理不尽な怒りを相手にぶつけると共に、ホッとして感謝しちゃいます。お化け以外のことを考えさせてくれた友人に。

ほんの一週間前ほどの出来事ですが。


幽霊とかは絶対絶対信じませんが、トトロはいます。

例えば森に入ったときにひんやりと気温は下がるのに、なんだかいつもより声を出せちゃったり、長く歩くことができたり。アレ、トトロのせいです(笑


なんて。

子どもが信じている、お化けやサンタクロースの存在って、本当はとっても大切で、人を作る上で欠かせないものなのではないかと思っています。

私はいるんじゃないかなぁ、って思っちゃうんですけど。


それを書こうとしたような、そうでないような。


読んでくださってありがとうございます。

誰かが読んでくださっていることって、本当に嬉しいことなんですね!

最近分かりました^^

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― 新着の感想 ―
[良い点] 童話のような前半からやや哲学的になってゆく後半の流れが好きです。 少し不思議なテイストの作品ですが、なんだか詩を読んだあとのような浮遊感に浸れて素敵です。 [一言] お久しぶりです…
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