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この世は嘘で溢れている

この世はいつも嘘で溢れている。


故にこの世に真実なんてものは存在しない。


誰かが嘘をつけば、この世の人間はそれを肯定する。


誰かが誰かを傷つけた時、そいつは言う。


『自分は悪くない』と。


それを言った時点で、そいつは結果的に悪者にされる。


周りは同じようにそいつを傷つけるだろう。


だがこういう可能性を考えたことはないか?


『自分は悪くない』と言ったやつが、実は被害者だったってことを。


そいつが涙しても、誰もそいつのことを信用しない。


それは学校というコミュニティにも言える。


皆キラキラした生活を送りながらも、友達の前では笑いながら、影で叩く。


そんなことはないというやつがいるかもしれない。


そいつはきっと、正義という名のナイフを持っているやつだ。


言葉には必ず裏がある。


そいつはそのナイフで何人刺してきたのだろうか。


とにかく


この世は嘘で溢れている。


信用できるのは自分だけ。


青春?


そんなものは目覚めの悪い夢でしかない。


だから


青春よ


灰燼に帰せ。



午後の授業が終わるチャイムが学校中に鳴り響く。


担任の千代田千夜(ちよだちよ)に呼ばれ、空き教室へと入る。


「コッホン。」


千代田千夜はわざとらしく咳をする。


「なんで呼び出されたか、分かるか?」


「さぁ?」


俺もわざとらしい反応をする。


ボガッッ!!


「いって!!」


千代田千夜に殴られた。


めちゃくちゃヒリヒリする。


この千代田千夜は、俺の担任である。


性別は女性、髪は黒髪ショート、背はそんな高くない。


ちなみに年齢不詳、というか、隠しているらしい。


「何か変なこと考えてるな?」


千代田千夜がギラっと睨んでくる。


え、なに、この人エスパー?


怖い怖い。


ボクちゃん泣いちゃう。


「まぁ、いい、本題に入る。神楽坂鍵(かみらざかかみら)、この感想文は何だ?」


ピラっと1枚の殴り書きされた紙を渡される。


「何って、普通の感想文すよ。」


「これのどこが普通なんだ?説明してくれ。」


怖いよ、ほんとにボクちゃん大泣きするよ?なんならここで男泣きするよ?


「いや、だから、この作者の心情を読み取れってやつですよね?だから作者もこう思うんじゃないかなーっと。」


「なんで作者が灰燼に帰せ。なんて思うんだ?」


なになに、なんで俺こんな詰められてんの?


俺もしかしてこのままコンクリート詰めされちゃう?


「はぁぁー。神楽坂、こんな感想文書くってことは...。」


やめて!コンクリ詰めだけはやめて!!


「友達、いないのか?」


千代田千夜は哀れみの目を向けてきた。


そんなことないもん!家に帰ればうさぎ(友達)いるもん!寂しくないもん!


「いや、と、友達くらいいますよ、ははっ。」


「いや、嘘つかんでいい。君が誰かと一緒にいるのは見たことがないからな。」


見栄張ったのがバレた。


俺恥かいただけじゃねーかよ。なんなの?このまま恥ずかしさで宇宙まで飛んでっちゃうよ?


「友達というのは、結局は幻覚と錯覚が合わさったものなんですよ。」


千代田千夜は呆れたように


「君のひねくれ具合には感動すら覚えるよ...。」


「ありがとうございます。」


ペコッと頭を下げると


「そういうところだぞ、神楽坂。


...。よし、着いて来なさい。」


千代田千夜はガタッと音を立て、椅子から立ち上がる。


「どこに行くんすか。」


長い廊下。運動部の掛け声と、吹奏楽部の音色が混ざっていた。


しばらく歩くと、ある空き教室の前で千代田千夜は立ち止まる。


「ここだ。入りたまえ。」


ガラッと音を立て、古い扉を開ける。


するとそこには


黒髪ロング美人が椅子に座りながら、有線イヤホンで音楽を聴いていた。


その黒髪ロング美人はこちらを向くと、


「あなたはノックもできない猿かチンパンジーなのかしら?」


きっつー。


美人だけどきついなー、冷たいなー。


さっきから攻撃されてばっかなんだけど。ボクちゃん。


「いやいや、猿やチンパンジーも生まれた時から教育されてればドアをノックすることぐらい...、」


「そういうことじゃないんだよ、神楽坂。」


後ろにいた千代田千夜(もうめんどくさいから千代田先生で。)も教室へ入ってくる。


「千代田先生、この猿かチンパンジー以下の脳みそを持った生命体はいったい?というか、ここへは何の用で?」


酷いなー。これでもボクちゃん文系学年トップ3には入ってるのよ??


「悪いなー、こいつは神楽坂鍵(かみらざかかみら)。この『現代クエスチョン部』の新入部員だ。

神楽坂、こいつは部長の新宿欄(あらじゅくあら)だ。」


おいおい、『現代クエスチョン部』ってなによ?

どっかのクイズ番組かなんかかよ?


「『現代クエスチョン部』って?」

「そもそも新入部員って聞こえたんですが?」


「うむ、『現代クエスチョン部』はだな、この学校に関わる全ての問題クエスチョンを解決する手助けをする部活だ。君にも入部してもらう。」


...。おい、おい!何なのそのいかにも善人なやつが集まりそうな部活は!


「俺がそんな善人に見えますか?」


「いーや?見た目の通りだと思っているさ。」

千代田先生はケロッと言った。


「見た目って...。」

ひどい!ひどいよ!ボクちゃんはガラスのハートを持っているのに、真っ二つになった音がしたよ!!


「それに、あの感想文では評価は付けられないしな。」


「あぁ、そういうことっすか。」

つまり、この部活に入れば評価してもらえると...。


「ま、今日はもう下校だから、明日からよろしく頼む。気をつけて帰るんだぞー。」

千代田先生は手をヒラヒラして教室を出て行った。


「あー、え、っと、千代田先生もあぁ言ってたんで、俺、帰ります。」


俺が教室を出ようとすると、新宿欄も帰り支度を始める。


それを気にもとめず学校を出た。


俺は基本的に徒歩通学だ。よっぽど遅刻しない限りはな。(遅刻しそうな時は自転車)


通っている高校は都立東海(とりつとうかい)高等学校、東京に海は無いのに()が付く、変わった名前の学校である。


かく言う俺の名前も自分で言うのはなんだが変わっている。


神楽坂と書いてかみらざか、鍵と書いてかみら。


両親が変なテンションの時に付けた名前だ。


そのせいで俺の人生は最初からデンジャラスゾーン突入しっぱなしである。


普通、神楽坂と書いて、かぐらざかと読む。それは当たり前だ。俺だってそう思う。だから学校で点呼を受ける度、「神楽坂かぐらざか、か、ぎ?」


と、なる訳である。


神楽坂をかみらざか、まだこれはマシ。


だが鍵をかみらとは読まない。


ほんとなんでこんな名前を思いついちゃうんだよ。

テレビ出れちゃうよ。


ー翌日放課後ー


コンコンと部室のドアをノックしてから入る。


昨日みたいに怖い思いしたくないからね。


入ると、昨日と変わらず新宿欄は仏頂面で音楽を聴いていた。


俺が入ってきても無視するくらい。


あ、怖い。


「な、なぁ、この部活、依頼とかって来たことあんのか?」


「...。」


新宿欄は無視する。


怖いよー、助けてドラ〇モン!


「あるわ。」


「!!」

ビクッと体を震わせる。


答えた...。


さらに


「私からも質問があるのだけれど、いいかしら?」


な、なに、?質問って。


「あぁ。」


短く答える。


「あなたはなぜこの『現代クエスチョン部』に入部したの?」

イヤホンは耳に付けたままだ。

音は小さくなったが。


「感想文で、ちょっとな...。」


「そう。つまりは点数稼ぎって事でいいかしら?」


直球〜!超直球〜!!


「ま、まぁ、そうなるな。人間そんなもんだろ。」


「意味が分からないのだけれど。」

新宿欄は呆れる。


「...。」


「...。」


再びの沈黙。


俺も本を読もうとする。


すると


コンコン。


ノックの音がする。


「どうぞ。」


新宿欄がそう言うと、ツインテール女子が入ってきた。


「千代田先生に、ここなら頼りになるって言われて来たんだけど...。」


「まず、あなたのお名前を聞いていいかしら?

そのあとに依頼内容を話してちょうだい。」


「あ、うん、私、2年B組の浅草梓(あざくさあさ)、依頼内容は、友達との間の、お祝い強制、みたいなのをやめたいんだ。」


浅草梓はあははっと頭をかいて言う。


「詳しく聞かせてちょうだい。」


新宿欄は浅草梓に椅子を差し出す。


「えっとね、私がいる友達グループにはね、強制的に誕生日プレゼントとか、お祝い動画とか、用意しないといけない、暗黙のルールみたいなのがあってね、プレゼントも、3.000円以上じゃないと、みたいな空気があって...。結構お財布キツいんだよね。でも断ったら、変な空気になりそうで、波風立てないで解決できないかなって。どうにかしてほしいって言うのが、依頼だよ。」


この話を聞いて、俺はより確信する。


やはりこの世は嘘で溢れている。


なんなら溢れすぎてこぼれちゃってるよ。


「祝うという純粋な感情を数値化し、義務として課す。現代生活における最悪の悪習ね。そんなものは『友情』ではなく、ただの相互監視よ」


「やっぱり、そう、だよね...。」

浅草梓はしゅんとする。


「まぁ、いいわ、その依頼、受けてあげる。」


しゅんとしていた浅草梓は途端に顔をぱあっと明るくし


「本当!?」


「えぇ、神楽坂くんも、それで構わないわよね?」


ハッ、そんなの


「誕生日おめでとう、の言葉の価値がインフレしすぎてゴミになってんだよ。いいぜ、その『偽りの優しさでできた強制イベント』、俺たちの手で綺麗に葬ってやる。」

〜登場人物、名前の読み方〜


神楽坂鍵かみらざかかみら


新宿欄あらじゅくあら


千代田千夜ちよだちよ


浅草梓あざくさあさ

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