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EP 5

100連ガチャと石斧の一撃(VSマーラット)

「チュウウウウウッ!!」

 巨大ドブネズミ魔獣『マーラット』の咆哮が、ドブ川に響き渡る。

 体長5メートル。ヘドロと錆びた鉄屑を鎧のように纏ったその巨体は、戦車のごとき質量でリリスに突進した。

「い、いやぁぁぁっ!! 来ないでぇぇっ!!」

 リリスは半泣きになりながら、咄嗟に虚空のウインドウを連打した。

 恐怖で思考がショートし、持っていた3000ポイント全てを『1回ガチャ(100pt)』の連打に費やしてしまったのだ。

「お願い! 武器! バズーカとか戦車とか出てぇぇぇっ!!」

 ポポポポポポポポポポンッ!!

 リリスの頭上から、大量のカプセルが雨あられと降り注ぐ。

 その数、30個。

 カプセルは地面やマーラットの背中に当たって弾け飛び、中身をぶち撒けた。

 プピッピーッ!

 グワッグワッ!

 パァンッ!

 辺り一面に散乱したのは――。

 お風呂に浮かべる『アヒルのおもちゃ』。

 踏むと鳴る『びっくりチキン人形』。

 光る『ヨーヨー』。

 そして、宴会用の『クラッカー』。

「……は?」

 リリスの時が止まった。

 目の前に広がるのは、武器庫ではなく、縁日の露店の売れ残りセール会場だった。

「なんでぇぇぇ!? なんで今のピックアップが『バラエティ・グッズ』なのよぉぉぉ!! ゴミばっかりじゃないのよぉぉぉ!!」

 リリスの絶叫が木霊する。

 これがガチャの闇。物欲センサーが仕事をサボった末路である。

「チュ……?」

 一方、襲いかかろうとしたマーラットも困惑していた。

 足元には大量のアヒル。踏むたびに「グワッ」と鳴く。

 目の前ではチキン人形が「プピッピー」と間の抜けた悲鳴を上げている。

 野生の魔獣にとって、未知の音と色彩は警戒対象だ。マーラットの動きが止まった。

 その一瞬の隙を、野生児は見逃さない。

「肉ゥゥゥゥゥッ!!」

 ダダが跳んだ。

 散乱するアヒル人形を踏み台にし、驚異的なバランス感覚で加速する。

 その手には、腰に差していた『お手製の石斧ストーン・トマホーク』が握られている。

 河原で拾った黒曜石を、ダダ自身が研ぎ澄ませた原始の刃だ。

「ウララァァァァァァァァァーーーーッ!!!」

 ダダは雄叫びを上げながら、空中で体を海老反りにし、渾身の力で石斧を振り下ろした。

 狙うはマーラットの眉間。ヘドロの鎧が最も薄い一点。

 ズドォォォォォンッ!!

 鈍い音と共に、石斧が脳天に突き刺さる。

 だが、ダダの攻撃はそこで終わらない。

 食べた『ゴリラ型魔獣』の怪力スキルを発動。突き刺さった斧を強引に引き下げ、そのまま地面まで振り抜いた。

「裁き(ごちそう)の時間だ!!」

 ズッパァァァァンッ!!

 巨大なネズミが、頭から尻尾まで綺麗に両断された。

 左右に分かれた巨体が、ドズンと地面に倒れ伏す。

 鮮やかな即死攻撃。

 アヒルとチキンの山の上で、返り血を浴びたダダが荒い息を吐いた。

「……ふぅ。大物だ」

 ダダは石斧についた血を払い、満足げに獲物を見下ろした。

 その背後で、リリスがへたり込んでいる。

「た、助かった……?」

 リリスは涙目で周囲を見渡した。

 3000ポイント分のゴミ(玩具)の山。

 これではダダへの報酬(肉)がない。怒ったダダに自分まで狩られるかもしれない。

「あ、あわわ……ど、どうしようダダくん。肉が……ガチャが爆死して……」

 リリスが震えていると、玩具の山の中に、一つだけ金色に輝くカプセルが転がっているのが見えた。

 第4話で引いた、あの『10連ガチャ』の確定枠のカプセルだ。

 マーラットの突進で弾き飛ばされ、無事だったのだ。

「ああっ! 金カプセル!!」

 リリスは泥だらけになりながらカプセルに飛びついた。

 頼む! 食べ物であってくれ!

 パカッ。

 カプセルが開く。

 中から出てきたのは、真空パックされた巨大な肉塊。

 それも、ただの肉ではない。

 真ん中に太い骨が通り、両端に肉がついている、あのアニメや漫画でしか見ない――。

「『マンガ肉(極上・タレ付き)』だぁぁぁぁ!!」

 リリスが天に掲げた。

 その匂いに反応し、ダダが振り返る。

「肉!!」

 ダダはマーラットを放置し、リリスの手からマンガ肉をひったくった。

 真空パックを牙で食い破る。

 ガブリッ!!

「んぐ、んぐ……ッ!!」

 ダダは骨を持って豪快にかぶりついた。

 地球の技術で熟成された赤身肉。濃厚なタレの味。

 オーク肉のような野性味はないが、洗練された旨味が脳髄を直撃する。

「うめぇぇぇぇぇ!!」

 ダダは満面の笑みを浮かべた。

 その笑顔は、さっきまで魔獣を真っ二つにしていた狂戦士とは思えないほど、無邪気で子供らしいものだった。

「よ、よかったぁ……」

 リリスはその場に大の字に寝転がった。

 ポイントはスッカラカンだが、命は助かった。

 ダダは骨まで綺麗にしゃぶり尽くすと、ペロリと唇を舐め、倒れている巨大なマーラットを指差した。

「で、リリス。デザートにこっちの『ネズミ』も食っていいか?」

「……好きになさい。あと、ついでにこの大量のアヒルも持って帰っていいわよ」

 こうして、ダダは地球の極上肉と、巨大魔獣の死骸、そして大量のラバーダックを手に入れた。

 テント村への帰り道、ダダの背中はかつてないほどの充実感に満ちていた。

「今日は宴だぞー!」

 次回、テント村での闇鍋パーティに、空飛ぶパパラッチが襲来する。

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