EP 3
特定班、始動
河川敷のテント村、広場。
ここが『ルナミスお助け探偵団』の臨時本部だ。
リーザが鮫島から持ち帰った『赤蛇』の手配書を囲み、少年少女たちが作戦会議を開いていた。
「さて、どうやってこの悪党どもを見つけ出すかだ」
クラウスが腕を組み、真剣な表情で頷いた。
彼は懐から手帳と羽根ペンを取り出し、古典的な探偵のようなポーズをとる。
「やはり『聞き込み』が基本だろう。街の人々に写真を見せ、足で情報を稼ぐ。地道だが確実な……」
「ブブーッ! 遅いよクラウス君! そんな昭和の刑事みたいなことしてたら、犯人に逃げられちゃうよ~?」
キュララが指を振って割って入った。
彼女はスマホを取り出し、不敵な笑みを浮かべる。
「今の時代はこれ! 『ネットの海』に情報を流せば、世界中の目が監視カメラになるんだよ☆」
「ネット……? 蜘蛛の巣か?」
ダダが不思議そうに首を傾げる。
キュララはウィンクで答えると、手配書の写真をパシャリと撮影した。
さらに、手配書に書かれた微かな情報(目撃された場所や、犯人の特徴)をタグ付けしていく。
「見ててね~。……『拡散希望! このおじさんたち、悪いことして逃げてまーす! 見つけた人にはキュララから愛のイイネあげちゃう♡ #赤蛇 #賞金首 #特定班集合』……と。送信ッ!」
ピロリン♪
投稿完了。
リアンが半信半疑で尋ねる。
「そんなんで見つかるのかい? 相手はプロの窃盗団だよ? 姿を隠すくらい……」
「あ、来た」
わずか十数秒後。
キュララのスマホが、凄まじい勢いで震え始めた。
ブブブブブブブブッ!!
「えっ!?」
「早っ!?」
キュララは流れるコメント欄を高速でスクロールしていく。
「えーっと……『背景の壁のシミ、これ港湾地区の第3倉庫じゃね?』……『この犯人が着てるシャツ、去年の限定モデルだ。タローソン〇〇店で売ってたやつ』……『あ、こいつ昨日デリバリー頼んでたわ。住所貼っとくね』」
情報が、滝のように雪崩れ込んでくる。
「……見つけた! 特定班のエース、『自宅警備員A』さんからのタレコミ!」
キュララが画面を拡大して皆に見せる。
そこには、犯人の一人がSNSに投稿していた自撮り写真が解析されていた。
「『この写真の犯人の瞳に映り込んでいる反射映像を解析。看板の文字から、現在の潜伏先は港湾地区・廃倉庫B-4エリアと断定。ついでに、この日の夕飯はピザだった模様』……だって!」
「「「ヒエッ……」」」
その場にいた全員(ダダを除く)が、戦慄した。
魔法も超能力も使っていない。ただの「拡大解析」と「知識の集合体」だけで、隠れ家が丸裸にされたのだ。
「こ、怖い……! 魔法より怖いよ現代社会!」
「瞳の反射だけで居場所がバレるのか!? 迂闊に鏡も見れないな……!」
リアンとクラウスが顔面蒼白になる中、ダダだけは感心したように頷いた。
「すげぇな、その『特定班』ってやつ。鼻が利くんだな」
「うんうん! みんな優秀な『猟犬』だよ~☆」
キュララは無邪気に笑うが、その笑顔の裏にある「デジタル・タトゥー」の恐ろしさを、大人のイグニスとリーザは痛感していた。
「……俺様、SNSには気をつけよう」
「私、パンの耳食べてる写真とかアップされてないわよね……?」
ともあれ、アジトの場所は特定された。
港湾地区、廃倉庫B-4エリア。
敵の規模は10名程度。ピザを食べて油断している今が好機だ。
「よし! 場所は割れた! 突入だ!」
「オーッ! 晩飯代を稼ぐぞー!」
ダダが石斧を掲げ、探偵団が出動する。
ネットの闇(特定班)のアシストを受けた彼らに、もはや死角はない。
……はずだった。
「待ちなさい!」
探偵団が移動しようとしたその時、立ちはだかる影があった。
街の巡回警官だ。
「子供だけでそんな危険な場所へ行ってはいけない! 迷子なら交番へ行きなさい!」
正論。あまりにも真っ当な正論が、彼らの行く手を阻む。
暴力でも解決できない「大人の事情」。
だが、ここで引くわけにはいかない。
次回、権力を振りかざす我儘お嬢様・リリスの出番!
「私のパパが誰だか知ってるの?」炸裂!




