表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/16

第二章 出張!開運!何でも探偵団!!

公園のベンチと二人の無職

 月日は流れ、月末。

 太郎国の中央公園は、穏やかな午後の日差しに包まれていた。

 家族連れがピクニックを楽しみ、カップルが愛を語らう平和な光景。

 だが、公園の片隅にあるベンチだけは、重苦しい『絶望のオーラ』に包まれていた。

「……お金が、ないんです」

 虚ろな瞳で呟いたのは、リーザだ。

 一応は一国の王女であり、自称アイドル。しかし現在の所持金は、ポケットに入っている五円玉スパチャ一枚のみ。

 今月の家賃(3万円)の支払い期限が迫り、彼女の精神は限界を迎えていた。

「奇遇だな。俺様もだ」

 隣で深く頷いたのは、イグニスだ。

 かつては竜人の里の神童と呼ばれた男。しかし現在は、ハローワークの不採用通知を握りしめた無職。

 彼の視線は、地面を歩く鳩に釘付けになっていた。

「……おい、リーザ。あそこに『ネギを背負った焼き鳥』が歩いてるぞ」

「奇遇ね、イグニスさん。私には『羽の生えた唐揚げ』に見えるわ」

 二人の思考回路は、飢餓により危険な領域に達していた。

 今にも鳩に向かってダイブしようとした、その時。

「お前ら、美味そうなもん見てるな」

 茂みからガサッと現れたのは、ダダだった。

 手には学校のプリント、口には道端で摘んだタンポポ(食用)を咥えている。

 その背後には、呆れ顔のリアンが続いていた。

「ダダ、やめとけ。ここの鳩は『太郎国保護鳥獣』だ。食ったら鮫島さんに怒られるぞ」

「ちぇっ。……で、そこの二人は何してんだ? 死にそうなのか?」

 ダダが純粋な疑問をぶつける。

 イグニスはふらりと立ち上がり、虚勢を張った。

「ふ、ふん! 俺様は瞑想中だ。……次の大きな仕事(世界を救う等)に向けて、精神を統一して……グゥゥゥ~(腹の音)」

「嘘おっしゃい! 私たち、ただの金欠よ! 月末の家賃が払えなくて、ここ(公園)が新居になりそうなのよ!」

 リーザが泣き叫んだ。プライドも何もない。あるのは生存本能だけだ。

「……はぁ。仕方ねぇな」

 その惨状を見て、リアンが深く溜息をついた。

 (このままだと、ダダの保護者(仮)の二人が野垂れ死ぬ。そうなるとダダが暴走して、僕の平穏な学園生活も脅かされる……)

 リアンは前世の記憶(組織運営ノウハウ)をフル回転させ、指をパチンと鳴らした。

「いいかい、お二人さん。そしてダダ。……『金』が欲しいなら、稼ぐしかない」

「稼ぐって、職がないのよ!?」

「職がないなら、作ればいい。……僕らにしかできない仕事でね」

 リアンの目が、商売人のそれに変わった。

「結成しよう。『ルナミスお助け探偵団』を」

 ◇

 数分後。

 公園のベンチ前には、ルナミス学園特進クラスの面々が集結していた。

 リアンの招集(という名の甘い物による買収)に応じたメンバーたちだ。

「ふむ。困っている市民を助ける、か。悪くない」

 腕を組み、堂々と頷いたのはクラウスだ。

 白銀の制服を着こなし、正義感に燃えている。

「『ノブリス・オブリージュ(高貴なる者の義務)』だ。力なき民を救うのは、次期侯爵である僕の責務! 報酬など不要だが、活動資金というなら協力しよう!」

(……チョロいな、委員長)とリアンは心の中でガッツポーズ。

「私もやるわ! 絶対やる!」

 鼻息荒くスマホを構えているのは、リリスだ。

「『人助け』は善行ポイントが高いのよ! 迷子の猫探しで100pt、お年寄りの荷物持ちで50pt! これでガチャを回しまくって、今度こそSSRスシ・ステーキ・ラーメンを出すのよ!」

(……欲望に忠実すぎる)とリアンは苦笑い。

「面白そ~☆ 『小学生が探偵やってみた』! これ絶対バズるやつじゃん!」

 上空から撮影しているのは、当然キュララだ。

「サムネは『衝撃の結末!』で決まりだね。再生数稼げれば、広告収入で焼肉おごってあげるよ~!」

(……現代っ子め)

 そして、最後にダダが石斧を構えた。

「で、誰を狩ればいいんだ? 報酬は肉か?」

「違うよダダ。……まあ、当たらずとも遠からずだけど」

 リアンは全員を見渡し、ニヤリと笑った。

「メンバーは揃った。

 戦闘担当のダダとクラウス。

 運と物資担当のリリス。

 情報拡散と記録担当のキュララ。

 そして、指揮と裏工作担当の僕。

 ……さらに、人生の崖っぷちにいるハングリーな大人二人リーザ・イグニスがいれば、どんな依頼も解決できるはずだ」

「お、おい待て少年。俺様たちは『手下』扱いか?」

「嫌ならいいですけど? 今夜の夕飯代、稼ぎたくないんですか?」

 イグニスとリーザは顔を見合わせ、即座に土下座の姿勢をとった。

「「一生ついて行きます、リーダー!!」」

 こうして、太郎国の平和(と晩飯代)を守るため、最強にして最年少の組織『ルナミスお助け探偵団』が爆誕した。

 だが、彼らはまだ知らない。

 最初の依頼が、迷子の猫探しなどという生温いものではなく、凶悪な『賞金首』との抗争になることを。

「まずは資金源の確保だ。……リーザさん、心当たりはあるね?」

「ええ……! 『カツ丼』が食べられる場所を知ってるわ!」

 リーザの目が、獲物を狙う猛獣のように怪しく光った。

 目指すは警察署。ターゲットは、あの強面の特殊部隊隊長だ。

 次回、カツ丼を賭けたリーザの不審な動きが、鮫島を襲う!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ