第43話 夏の海へ
今、俺達の眼前には、白い砂浜と宝石のように鮮やかに輝くコバルトブルーの凪いだ海が広がっている。
今日は朝から電車に乗って皆が待望していた海にやってきていた。
澄み渡る空の下、ビーチは多くの観光客で賑わい、色とりどりのパラソルが点々と情景に色彩を加えていて、まさに夏の海と言った感じだ。
「来た〜! 海だ〜!」
砂浜に立った麻衣が、両手を広げながら迎え入れるように歓声を上げた。
「おいおい、まずは水着に着替えてからだろ」
今にも来たままの格好で海に飛び込みそうな勢いの麻衣を俺が言葉で留める。
「麻衣さん、行きましょう」
「海の家はあそこね」
「うわ〜、海の家も賑わってるみたいだね〜」
「水着に着替えた後は、またここに集合な」
俺達は、白い外壁のオシャレな造りをした海の家にいき、海で遊ぶための準備をする事にした。
ここの海の家では、食事を摂ったりできる他、更衣室やシャワールームに、鍵付きのロッカーまで完備していて、浮き輪やビーチパラソル等のアイテムのレンタルも行っている。
俺はサーフパンツに履き替えて伊達眼鏡を外すだけなので皆より早く準備を終え、ビニールシートとパラソルを借りて集合場所でしばらく待っていると、水着に着替え終えた女性陣がやって来た。
「どう、お兄ぃ。超可愛いでしょ」
言いながら麻衣が感想を求めてくる。
麻衣の水着は、水色のチェック柄フリルビキニだ。
色んなポーズを取って見せる麻衣の動きに合わせて揺れるフリルが可愛らしい。
「ああ。よく似合ってるな」
「へへ、ありがと。じゃあ次は紗耶ちゃんね」
麻衣は嬉しそうにはにかむと、隣に立つ紗耶を手の平を上に向けて指し示した。
「怜人先輩、どうですか? 悩殺されたって言ってくれてもいいんですよ?」
紗耶が自信ありげに、その薄い胸を張りながら言う。
花柄の白いワンピースタイプの水着を身に着けた紗耶は、胸元はボリュームがやや不足しているものの、そのくびれたウエストと長く綺麗な美脚は、いっそ芸術的とすら思える程だ。
「紗耶は彫刻にして飾りたいくらいだな」
「むぅ。思っていた反応とは何か違いますけど、まぁ褒められたのは事実ですし、ここは素直に喜んでおきます」
紗耶は少々不満そうにしながらも、その頬はうっすら赤く染まっていた。
「私も感想をいただけるかしら? これでも頑張って似合うのを選んだつもりよ?」
続けて、葵が前に出た。
彼女はレースのついた黒いビキニで、腰にはパレオを巻いている。
ファッション雑誌で専属モデルを務めているだけあって、メリハリの利いたスレンダーな体型が描く曲線美が艶めかしい。
「さすが葵だな。セクシーさが際立つナイスなチョイスだ」
「ありがと」
返した言葉はそれだけだったけど、足をもじもじとさせているのを見ると、どうやら照れているらしい。
モデルとして褒められ慣れているだろう葵だけど、こういうところは普通の女の子っぽいよな。
「それじゃあ最後に陽菜ね。ほら陽菜。こそこそと隠れてないでちゃんと怜人に水着姿を見せないと。似合ってるって褒めてもらいたいんでしょう?」
葵はそう言うと、彼女の背後に回ってその身を縮こまらせていた陽菜の背中を手で押して前に出させた。
「ひゃっ! は、恥ずかしいよ〜⋯⋯」
言いながら胸の前で手を組んで隠す仕草を取る陽菜は、ピンク色をしたフリルビキニを着ている。
豊満に揺れる胸が、大きな谷間を作っていて、どうしてもそこの部分に視線が誘導されてしまう。
まさに目の毒である。
何て罪深い身体だ。
今日のMVPは彼女に決めた。
異論は認めない。
「最高だ。もう思い残す事はないよ」
俺はビシッとサムズアップしながら、感慨深げに言った。
「ちょっとお兄ぃ、何か陽菜さんだけ特別扱いしてない? 陽菜さんずる〜い」
「やはり胸か⋯⋯戦闘力が高すぎる⋯⋯」
後輩組が不満や嘆きを口にする。
「えっ、何か私悪者扱いされてない?」
陽菜が目を丸くしてきょとんとする。
「くだらない事言ってないで、早く海に入って遊びましょうよ」
葵が待ちきれないというように急かす。
普段は落ち着いた皆の纏め役だけど、そんな彼女も夏の海を前にしてテンションが上がっているらしい。
「そうだな。それじゃあ俺は陽菜の浮き輪を膨らませてやるよ」
「ごめんね〜。私泳ぐの苦手だから〜」
「じゃあお先に」
「紗耶ちゃん、行こっ!」
「はい!」
三人が海へと砂浜を駆けて行き、俺は陽菜のためにパラソルの下でビニールシートに腰を据えて浮き輪を膨らませながら、これから始まる海でのイベントに、胸を高鳴らせていた。




