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第40話 海への誘い

 

 昼休みになり、いつものように俺と葵と陽菜の三人で昼食を一緒に摂った後、三人で会話しているところに、紗耶がやってきた。


「お三方、お疲れ様です」

「紗耶じゃないか。わざわざ二年生の教室を訪ねてくるなんて、どうしたんだ?」

「紗耶、昨日言っていた話を怜人に持ちかけにきたのね」

「そうそう〜。そうだったそうだったー」


 葵と陽菜は既に知っている事らしい。


「はい。怜人先輩、いきなりですけど、今度の夏休み中に、私達三人と一緒に海にいきませんか? レインを使ってもよかったんですけど、一度怜人先輩達のクラスに来てみたかったんで、直接聞きにきました」

「俺と海に?」


 『オモクロ』でも天城が三人のヒロイン達と海に行くイベントがあったけれど、同行するのが俺に代わったという事だろうか。


「まさか断るなんて無粋な真似はしないですよね? 私達のグラマラスな水着姿を拝める絶好のチャンスですよ?」


 その言葉を聞いて、思わず紗耶の控え目に膨らみを主張している胸に視線を向けた。


「む⋯⋯怜人先輩、何か言いたげですね。文句があるって言うんなら、その勝負受けて立ちますよ」


 紗耶が不服そうに目を細めながら、不敵に言う。


「い、いや、別に思うところは何もないぞ、うん!」

 

 俺はどうやら紗耶の地雷を踏みかけたようで、慌てて弁解した。


「⋯⋯まぁ、それならいいです。それで、返答は?」

「俺も夏休みは三人と一緒に過ごす時間が欲しいと思っていたところだったし、喜んでオッケーさせてもらうよ」


 夏は勝負の季節だからな。一気にヒロイン達との関係を進めるチャンスだ。


「ですよね。それが普通の高校生男子の反応です。先輩の下半身がちゃんと機能していて幸いです」

「ちょっと紗耶! こんなところで下ネタは止めなさい!」


 葵が顔を赤らめながら、声を大きくして窘めた。

 えっちな事にはあまり耐性がないんだろう。

 傍らに立つ陽菜も似たような反応を示している。


「いいじゃないですか。減るものでもないですし」


 何食わぬ様子で、紗耶が平然として返す。


「俺を発情期のきた獣みたいに言うのは止めて欲しいんだけど⋯⋯」


 俺は嘆くしかなかった。


「そうだよ〜。怜人君は誠実な人なんだから〜」


 陽菜の聖女のようなフォローだけが救いだ。


 そんな冗談混じりの会話を交していると、朝に続いて、再び転校生の藍原が俺達の傍に近寄ってきた。


「何だか楽しそうな話をしているね」

「⋯⋯誰ですか、あなた」


 芸能人には興味がないのか、彼がアイドルのリョウだとは知らない様子の紗耶が、訝しげな視線を向ける。


「驚いた。僕の事を知らない女子高生がいるなんてね。それじゃあ改めて自己紹介させてもらう事にするよ。僕は若手の俳優の中でも──」

「あ、いいです。全く興味ないんで」


 気障ったらしくミディアムショートの前髪をかき上げながら告げようとした藍原の言葉を遮り、紗耶が素気なくあしらう。


「僕は君みたいな美少女とは仲よくしたいんだけどな。綺麗な銀髪と碧眼だね。ハーフとかだったりするのかな?」

「⋯⋯怜人先輩、何なんですかこの人⋯⋯話が通じないんですけど⋯⋯性欲のままに行動するチンパンジーか何かですか」

「僕は君の身体を求めているわけじゃない。ただその美しさに惹かれているだけさ」

「うっ⋯⋯気持ち悪っ⋯⋯」


 紗耶が珍しく顔を歪めて嫌悪感を示す。


「いいさ。その内君も僕の魅力に気づくはずだから」

「私、これ以上この人の近くにいるのは生理的に無理です。それじゃあ怜人先輩。詳細については、また連絡しますね」


 そう最後に言うと、紗耶は逃げるようにして教室を出ていった。


「ところで海にいくって話だったみたいだけど、どうだろう。僕も一緒にいっちゃダメかな?」


 不躾に藍原が図々しく頼んできた。


「悪いけどお断りよ。これは私達仲良しグループだけのイベントだからね」


 葵がビシッとした態度で突っぱねる。


「そういう事だから、諦めてくれ」

「そういう事なら、しかたないね。それじゃあ皆で海を楽しんできてくれ」


 そう言うと、藍原は朝仲良くなっていた女子グループに加わりに行った。


「あいつ、図々しいにも程があるわね」

「断ってくれてよかった〜。あの人が一緒だったら、せっかくの海が楽しめなくなるところだったよ〜」

「あいつ人気アイドルだからって、何でも思い通りになると考えてる節があるからな。二人とも、大丈夫だとは思うけど、あいつの誘いに乗ったりなんかするなよ」

「当然よ。断固として拒否するわ」

「私も頑張って断るよ〜」

「ああ、そうしてくれ」




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