第34話 バズリ
六月も半ばに差し掛かり、梅雨入りしてジメジメした日が続く中、以前葵と一緒に撮影を行った時のスナップが掲載されたファッション雑誌『エクラ』が発売日を迎えた。
その『エクラ』が自宅に郵送されて来て、気恥ずかしさら今まで内緒にしてきたのに、それが麻衣に見つかってしまい、「お兄ぃ、すごーい!」と根掘り葉掘り話を聞かれることになった。
そしてその翌日。
俺が学校に登校すると、先に来ていた葵がクラスメイトの女子達に取り囲まれていた。
彼女達の前にある机には、昨日発売された『エクラ』が、俺と葵を撮ったスナップの掲載されている頁を開いて置かれている。
「葵ちゃん専属モデルになったんだね、凄いじゃん!」
「あ、吾妻君だ!」
「ねぇねぇ、なんで吾妻君も一緒に映ってるの?」
「こうして見ると、ふたともイケメンと美少女でお似合いだよね〜」
「吾妻君もモデルになったの?」
等と一斉に話しかけられ、俺は葵と一緒に必死になって経緯を説明するハメになった。
「そう言えばSNSでも話題になってるみたいだよ。このイケメンは誰だ!? って感じでね」
騒ぎはクラスメイト達の間だけでは収まらなかった。
『エクラ』を買った読者達が、俺のことをSNS上で拡散させ、バズってトレンド入りまで果たしていたのだ。
俺はその日、噂の渦中にいる俺に会おうと、クラス外からもやって来た女子達の対応に苦労させられることになった。
そうして放課後になり、逃げるようにして帰宅した俺が、リビングで珈琲を飲みながら、ホッと一息ついていると、スマホが着信音を鳴らした。
電話をかけてきたのは、諸悪の根源である、
『エクラ』の撮影でカメラマンを務めたオネエの風見さんだった。
「はい、吾妻です」
『あ、吾妻君? 久しぶり〜。送った雑誌はもう見てくれた?』
「まあ、一応」
『それでその吾妻君が掲載されてる今月号の『エクラ』なんだけど、反響が凄くってね。昨日発売したばかりだって言うのに、売り切れ店続出で急遽緊急増刷がかかっちゃったみたいなのよ』
「え!? そこまでなんですか?」
『ええ。出版社には、あのイケメンが誰なのか教えて欲しいって電話が殺到して、対応に苦労してるって話よ。まあ嬉しい悲鳴ってやつね』
「は、はぁ⋯⋯」
『そこで吾妻君に一つ持ちかけたい話があるんだけど──』
「嫌です」
『ってまだ何も言ってないわよ?』
「どうせ、本格的にモデル業をやってみないか、とか言うんですよね」
『あら良く分かったわね。そうよ。SNSでのバズリなんかを見ても分かるように、あなたにはスター性があるわ。絶対に成功するって保証するから、ねぇ、やってみない?』
「だから嫌ですって。今日も学校で騒がれて辟易とさせられたんです。俺は普通の高校生活を送りたいんですよ」
『そう、残念ね⋯⋯あなたなら、この業界でもトップをとれると思ったんだけど⋯⋯』
「俺のことなんかよりも、葵のことを見てやってくださいよ。モデルとしての才能なら彼女の方が上でしょうに」
『分かったわ。葵ちゃんもダイヤの原石であることは確かだからね。彼女のことは私に任せておきなさい』




