第32話 蛮行に走る一樹
Side:一樹
俺は薄暗い自室で、ベッドに横になりながら、ボーッと天井を見つめていた。
二週間の停学を食らってからというもの、何もやる気が起きず、あれだけ熱中していたオンラインゲームにも、全くインしていない。
ゲーム仲間である友達からも、レインでメッセージが送られてきているけど、全部未読スルーしている。
俺はこうしてどん底にいるっていうのに、憎い吾妻のやつは、葵を救ったヒーローだもんな⋯⋯
どうしてこうなっちまったんだろう⋯⋯何もやる気が起きない⋯⋯もうなにもかもどうでもよくなってきた⋯⋯。
そうは思っていても、腹は減る。
今日俺の親達は、結婚記念日だからって、二人で外食に出かけるから夕食は適当に食べていて、と言っていた。
息子がこんな状態だってのに、呑気なもんだ。
俺はとりあえず何か腹に入れておくかと、二階の自室を出て階下のリビングに下りた。
リビングに入ると、そこには紗耶がいた。
ソファに座り、紅茶を飲んでゆっくりしていたようだ。
「兄さん、起きてたんですか。髪くらい整えたらどうです? ボサボサですよ」
俺の身なりを見て、沙耶が苦言を呈する。
「うるせえな。俺の気持ちも知らないで⋯⋯」
「全部兄さんの自業自得じゃないですか。怜人先輩に醜い嫉妬をしていつまでも不貞腐れているから、半グレグループなんかに目をつけられるんですよ」
「黙れ⋯⋯」
「あの優しかった頃の兄さんは、どこに行ってしまったんですか。そんなんじゃあお先真っ暗です
よ。少しは怜人先輩を見習ったらどうですか?」
「黙れって言ってるだろ!」
俺はそう声を荒らげると、紗耶に近づき、その白く細い手首を掴んだ。
「何するんですか! 離してください!」
紗耶がいつになく声を大きくして抗う。
俺はそれにはかまわずに、紗耶をソファの上に押し倒して上から覆い被さった。
「きゃあっ!」
「どいつもこいつも、吾妻のことばかり良く言いやがって! 俺の方が何倍も良いってことを、身体に覚え込ませてやるよ!」
俺はそう凄むと、組み敷いた紗耶の、そのまだ膨らみかけの胸を片手で鷲掴みにして揉みしだいた。
「いやあっ!」
必死に身を捩って抵抗する紗耶が、横のテーブルに置かれていた紅茶の入っていたマグカップを手に取り、それを勢い良く俺の側頭部に打ちつけた。
「うぐっ⋯⋯」
鈍い痛みを感じ、俺が呻いて体勢を崩すと、その隙を突かれて拘束を解かれ、紗耶は走ってリビングを出て行った。




